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健保ニュース 2024年7月中旬号

医療保険部会が適用拡大を議論
懇談会まとめに保険者が意見

社会保障審議会医療保険部会(田辺国昭会長)は3日、「働き方の多様化を踏まえた被用者保険の適用の在り方に関する懇談会」の「取りまとめ」について議論した。

本懇談会は、①短時間労働者に対する被用者保険の適用範囲②個人事業所に係る被用者保険の適用範囲③複数の事業所で勤務する者、フリーランス、ギグワーカーなど、多様な働き方を踏まえた被用者保険─の在り方を主な議題として、被用者にふさわしい保障の実現、働き方や雇用の選択を歪めない制度の構築等の観点から検討を行い、3日に議論を取りまとめた。

このなかで、①は企業規模要件(従業員100人超。令和6年10月から従業員50人超)について、「他の要件に優先して撤廃の方向で検討を進めるべき」と明記。合わせて、「保険者の財政や運営への影響等に留意し、必要な配慮措置や支援策の在り方について検討を行うことが必要」との考えを盛り込んだ。

また、②は常時5人以上を使用する個人事業所における非適用業種については、5人未満の個人事業所への適用の是非の検討に優先して、解消の方向で検討を進めるべきと提言。合わせて、保険者の財政や運営への影響等に留意し、必要な配慮措置や支援策の在り方について検討を行うことが必要とした。

懇談会の「議論の取りまとめ」について、健保連の佐野雅宏会長代理は、「今後、本格的な人口減少に伴い就業者の減少が懸念されるなか、社会保障制度を維持する観点から担い手を増やしていくこと、働き方に中立的な制度の構築に向けた対応を図っていくことは重要」との認識を示し、「今回の取りまとめは、その方向性に沿った見直し内容となっている」と言及した。

そのうえで、企業規模要件の撤廃や常時5人以上を使用する個人事業所の非適用業種の解消にあたり、短時間労働者の割合が高い卸売業、小売業、宿泊業、飲食業、サービス業等の従業員が加入する医療保険者は、健保組合も含め大きな影響を受けることが想定されると指摘。保険者の財政や運営への影響等に留意し、必要な配慮措置や支援策を講じるよう求めた。

北川博康委員(全国健康保険協会理事長)は、「議論の取りまとめが示した適用拡大の方向性は、社会環境の変化に対応した持続可能な社会保障制度を維持する観点から必要なもの」と理解を示す一方、「加入者の健康づくりの推進や医療費の適正化に向けた保険者機能が引き続き確保されるためには対象者が被用者としての実態を備えていることが重要な要素だ」と強調し、実態面への配慮を要請。

具体的な制度の見直しにあたっては、適用、徴収、給付などの事務処理負担、大規模な人数での制度間での移行実務について実現可能な手段、期間等に配慮するほか、各保険者への財政影響の試算をできる限り早く示すよう強く求めた。

原勝則委員(国民健康保険中央会理事長)は、「被用者保険の適用拡大をこのまま進める場合、人口減で国保の被保険者が減少していくなか、さらに被用者が抜けていくことになる」と問題提起。地域の連帯感を基礎とした国保の保険者機能を発揮することが困難となり、「国保制度の存立に大きな影響を与えることになる」と懸念を示した。

このため、「医療保険制度は、年金制度とは別に一定の歯止めを設けることも将来的には考えないといけない」と主張するとともに、今後の医療保険部会の議論にあたっては、国保関係者の理解と納得を得ながら対応を進めていくよう要望した。

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