健保ニュース
健保ニュース 2024年7月中旬号
健保連・第530回理事会
宮永会長 全世代納得の制度へ改革訴求
組合の安定運営確保が不可欠
健保連は5日、第530回理事会を開いた。冒頭あいさつした宮永俊一会長は、団塊の世代がすべて後期高齢者となる2025年を来年に控え、医療費が増加する一方、社会保障制度の支え手である現役世代は減少傾向にあると指摘。そのうえで、「給付は高齢者中心、負担は現役世代中心」というこれまでの仕組みを改め、全世代が納得して負担し合える制度となるよう、改革を訴えていく決意を表明した。国民皆保険を守るためには、医療保険制度の中核を担う健保組合の安定した運営の確保が不可欠であり、「現役世代の負担軽減」や「世代間の給付と負担のアンバランス解消」など1つひとつの課題に道筋をつけていくことが全世代型社会保障の構築につながるとの考えを示した。他方、12月2日のマイナ保険証の一体化に向けた取り組みのなかで、「健保組合の皆さんに多大なる負担をかけている」と謝意を示し、われわれの意見・要望が実効あるものとなるよう活動を展開していくとした。(宮永会長の発言要旨は次のとおり。)
本日の理事会は4月の役員改選後、初めての理事会となる。
改めて、これからの2年間、よろしくお願い申し上げる。
さて、今年の春闘では、実に33年ぶりに賃上げ率が5%を超える非常に高い水準となった。
物価高や人手不足、円安など、経済環境には厳しい面もかなり見られるが、人への投資という意味では大変良い方向に向かいつつあると思う。
われわれ健保組合の保険料収入増の相乗効果も出ており、この流れが中小企業等も含め、広く波及し、さらに来年、再来年へとつながることを期待している。
政治においては、東京都知事選挙が明後日の7日に投開票される。
日本の首都である東京のリーダーを選ぶ大切な選挙であり、世間の注目度が高いことは、言わずもがなだが、東京都の昨年の出生率が全国最少の0・99と1を下回るなかで、深刻化する少子化問題や子育て支援のあり方、また災害対策や物価高騰対策などについても論戦が繰り広げられている。
今後の国政に影響を与える可能性もあり、注目されるところだ。
特に、今後の日本を支える子どもたちを国全体、国民全員で育んでいくことは、国としても喫緊の重要課題だ。
先月、厚生労働省は、2023年の「人口動態統計」の概数を公表した。
2023年の出生数は72・7万人と過去最少を更新し、改めて、急速に進行する少子化に、強い危機感を覚える内容だった。
こうしたなか、6月5日に「子ども・子育て支援法等改正案」が成立した。
このなかで、子ども・子育て支援金は、令和8年度から公的医療保険を通じて拠出が始まり、初年度の8年度は、概ね6000億円、10年度以降は毎年約1兆円を負担する予定となっている。
この仕組みは、被用者保険においては労使の負担となるため、被保険者とともに、事業主負担も増えることとなる。
われわれ保険者としては、支援金の金額とともに、こういった徴収方法の詳細についても国に丁寧な説明を求めていかなければならない。
成立した法案に対する附帯決議において、「子ども・子育て支援金は、医療保険料等とは異なるものであること」、「子ども・子育て支援金率の基礎として国が実務上一律の支援金率を示すこと」という、われわれがかねてより主張していた内容が盛り込まれた。
われわれの活動の一定の成果ではあるが、引き続き、この附帯決議が実施されるよう注視し、しっかりと働きかけを行っていく。
また、政府は6月に、今年の「骨太の方針」を決定した。
デフレからの完全脱却に向けて賃上げを定着させるため、労働市場改革などを推進する一方、財政面では、来年度に基礎的財政収支を黒字化する目標を維持するとしている。
人口減少が進むなか、持続可能な社会保障システムの確立が不可欠として、医療のデジタル化に取り組み、能力に応じて全世代が支え合う「全世代型社会保障」の構築をめざすことも明記された。
閣議決定に向けては、5月に自民党の「国民皆保険を守る国会議員連盟」の総会が開かれ、「骨太方針2024および令和7年度予算概算要求に対する要望」がとりまとめられ、われわれの求める「後期高齢者・現役並み所得者の給付費への公費投入」、「高額薬剤など医療費の高額化に伴う健保組合の財政悪化への支援」や「出産・子育て対策・DX推進など国策に貢献する健保組合の取り組みへの財政支援」などが、取り入れられている。
こうした活動を続けていくことが、非常に大切だと実感している。
国民皆保険を守るためには、医療保険制度の中核を担う健保組合の安定した運営の確保が不可欠であり、「現役世代の負担軽減」や「世代間の給付と負担のアンバランス解消」など、1つひとつの課題に道筋をつけていくことが、ひいては全世代型社会保障の構築につながることになると思っている。
団塊の世代がすべて後期高齢者となる2025年を来年に控え、医療費が増加する一方で、社会保障制度の支え手である現役世代は減少傾向にある。
「給付は高齢者中心、負担は現役世代中心」というこれまでの仕組みを改め、全世代が納得して負担し合える制度となるよう引き続き、改革を訴えていく。
さて、本年12月2日の保険証の廃止まで5か月を切っている。マイナ保険証の一体化の準備も佳境を迎えることになるが、4月に開催された日本健康会議主催の「医療DX推進フォーラム ─使ってイイナ!マイナ保険証─」には私も出席した。
このフォーラムでは、医療機関、薬局、保険者、事業主、行政などが一丸となって取り組む「マイナ保険証利用促進宣言」を採択し、また、医療DXの基盤となるマイナ保険証の利用促進に向けて、医療機関や保険者等の積極的な取り組み事例についての講演もあった。
マイナ保険証のメリットを実感し、円滑に利用が進むよう、関係者が協力して取り組みを進めているところだ。
昨年来、健保組合の皆さんには、マイナンバーの登録データの確認など、多大なる負担をかけているところだが、加えて、保険証廃止に伴う「資格確認書」や「資格情報のお知らせ」の交付など、実務的な課題が、まだまだたくさん残されている。
その課題を着実に乗り越えていくことで、国民・患者がいつでも自らの健康状況を確認することができ、災害時や初めての受診でも個々人の情報が共有され、適切な医療を受けられる体制が整うことになる。
医療の質の向上と医療DXの進展に向けて、国に対してわれわれの意見・要望を伝え、実効あるものになるよう、行政・国会に対して活動していくが、引き続き、健保組合の皆さんにも協力を心からお願い申し上げる。
最後となるが、本日は、令和5年度の事業報告、決算関係が審議の中心となる。
健保連の執行機関として、活発な意見を頂戴し、そういう色々な議論のなかで交流が進むことをお祈りして、簡単ではあるが、開会のあいさつとする。