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健保ニュース 2024年7月上旬号

新地域医療構想検討会が論点案了承
方向性や取り組みを整理
河本専務理事 保険財政の制約を念頭に

「新たな地域医療構想等に関する検討会」(座長・遠藤久夫学習院大学長)は6月21日、新たな地域医療構想の方向性や達成に向けた取り組みを盛り込んだ論点案を概ね了承した。

この日の会合で厚生労働省は、これまでの議論や関係団体、有識者などのヒアリングを踏まえ、論点を「総論」「各論」として整理し、提示した。

「総論」では、2040年頃を見据えた新たな地域医療構想のめざす方向性のイメージ案を提示。85歳以上人口の増加と生産年齢人口の減少により、医療従事者の確保が困難となるなか、地域ごとの在宅医療や医療・介護複合ニーズの増加、医療需要の減少に対して、医療機関等が機能に応じて連携し、介護施設などとも連携しながら、持続可能な質の高い効率的な医療提供体制を確保する。

合わせて、大都市、地方都市、過疎地域の地域差を踏まえ、身近な地域でのかかりつけ医機能と支えとなる入院機能、より広い区域で二次救急を受け入れる機能、さらに広い区域での三次救急など、階層的に地域で必要な医療提供体制の確保をめざすとした。

そのうえで、構想を推進する視点・手法のイメージ案を提示した。2040年頃を見据えた病床・外来・在宅等の医療需要の推計や医療従事者の確保見込みを踏まえ、外来、在宅、介護などの連携を「身近な地域」、入院機能を「より広い地域」で協議。全体を都道府県単位で統合・調整し、地域の医療提供体制全体の将来ビジョンを示す。

医療機関による現在の機能と方向性の報告を踏まえて地域で協議するほか、必要な施策を講じ、医療機関の役割分担・連携、病床機能の分化・連携を推進。国は、地域類型ごとの医療需要の変化と区域のあり方、医療提供体制モデルなどを示すとした。

また、中長期的な医療提供体制全体の将来ビジョンを示し、医療計画では直近6年間(一部3年間)の5疾病6事業に関する取り組みを定めるなど、医療計画と地域医療構想の関係を明確化する方針を示した。

合わせて厚労省は、「各論」として、▽入院(病床の機能分化・連携等)▽外来、在宅▽医療・介護連携▽人材確保▽医療機関機能、構想区域、医療提供体制のモデル▽地域医療調整会議、地域医療介護総合確保基金、都道府県知事の権限、市町村の役割等─を挙げ、今夏から秋頃の中間まとめに向け、次回以降、具体的な内容や達成に向けた取り組みについて検討する方針を示した。

健保連の河本滋史専務理事は、「事務局案に沿って進めることに概ね異論はない」と述べ、入院だけでなく、外来や在宅についても地域ごとに将来需要を推計し、あるべき姿を議論することや改革シナリオを織り込んだ推計を行うことに賛同した。

他方、保険者として、「保険財政の支え手となる現役世代の減少が加速する現状のなか、医療保険制度の持続可能性に対する懸念が強まっている」と危機感を示し、「保険診療でほとんどの医療をカバーしていることを踏まえれば、保険財政に制約があることも念頭に置く必要がある」と指摘した。

このため、人材確保を検討する際は、「医療資源の配分を見直し、機能分化や集約化・重点化を進め、過不足のない最適な医療を実現する視点が非常に重要」と言及。医療DXやオンライン診療の定着も必要との考えを示した。

構想を推進する視点・手法のイメージ案に対しては、「外来医療の場合でも身近な地域で完結するものもあれば、がんや難病など広域で考えるべき疾患もある」などと指摘し、どのような地域的な範囲で必要な医療を完結させるのかを柔軟に考える必要があるとした。

山口育子構成員(認定NPO 法人ささえあい医療人権センターCOML理事長)は、構想策定段階からの地域の住民・患者の参画を本格的に進めていくべきと主張。江澤和彦構成員(日本医師会常任理事)は、病床機能の分化・連携の主体となる医療機関の健全経営の担保が前提となるとの考えを示した。このほか、都道府県の調整会議におけるリーダシップや知事権限のあり方など多岐にわたる意見が挙げられた。

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