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健保ニュース 2024年7月上旬号

出産費用・保険適用の議論に着手
新検討会が来春にとりまとめ
佐野会長代理 目的明確化など4点要望

厚生労働省の「妊娠・出産・産後における妊産婦等の支援策等に関する検討会」(田辺国昭座長)は6月26日、初会合を開催し、出産費用(正常分娩)の保険適用を含む出産に関する支援等のさらなる強化の議論に着手した。

妊産婦や医療従事者など関係者を対象として今夏にヒアリングを3回程度実施。今秋以降、出産費用を把握するための実態調査の結果を順次報告しつつ、▽出産に関する支援策▽妊娠期・産前産後に関する支援策─などについて検討し、令和7年の春頃にとりまとめを行う。

政府が昨年12月22日に閣議決定した「こども未来戦略」は、出産等の経済的負担の軽減として、「2026年度を目途に、出産費用(正常分娩)の保険適用の導入を含め、出産に関する支援等のさらなる強化について検討を進める」と明記した。

この方針を踏まえ、本検討会は妊娠・出産・産後に関する様々な支援等のさらなる強化の方向性について具体的に議論するために設置し、①出産に関する支援等のさらなる強化策②妊娠期・産前産後に関する支援等のさらなる強化策─を検討事項とした。このうち、①は医療保険制度における支援、周産期医療提供体制の在り方を検討する。

厚労省の保険局長と医政局長、こども家庭庁の成育局長が、医療保険者や医療関係者、妊産婦の声を伝える者等の構成員の参集を求めて開催。

会合の冒頭あいさつした厚労省の伊原和人保険局長は、「検討のスコープとしては、出産だけではなく、妊娠期から産後まで全体を見渡して、妊産婦への支援をどのように進めていくかを議論する必要がある」との考えを示したうえで、「子育て世代の当事者の声を聴くことが何より重要だ」と言及した。

この日の会合では、厚労省が妊産婦等の支援策をめぐる現状について説明した。
 医療保険制度における出産育児一時金の令和3年度(原則42万円)における支給件数・支給額は、85万件・3574億円で、内訳は、▽健保組合(28万件、1160億円)▽協会けんぽ(36万件、1529億円)▽共済組合(12万件、496億円)▽市町村国保(7万件、301億円)▽国保組合(2万件、88億円)─。被用者保険は支給額の全額について、保険料を財源としている現状を示した。

た、出産育児一時金の支給額について、5年4月から全国一律で原則50万円に引き上げるとともに、妊婦が費用やサービスを踏まえて適切に出産施設を選択できる環境を整備するため、全国の出産施設に関する情報の提供を行うWebサイトを6年5月30日に開設・運営したことなどを報告。

このほか、6年度に実施する「分娩取扱施設における出産にかかる費用構造の把握のための調査研究」について、研究代表者から説明が行われた。

健保連の佐野雅宏会長代理は、「医療保険者としての最大の関心は出産費用の保険適用であり、現時点では賛成とも反対とも言えない立場」と発言。

そのうえで、(1)目的の明確化(2)データのさらなる見える化(3)給付と負担のバランスの整理(4)産科医、分娩機関の維持との関係─の4点を今後の検討にあたっての論点として議論を進めるよう提言した。

(1)は、「出産等の経済的負担の軽減と出産費用の保険適用がどうつながるのかよくわからない」と指摘し、出産費用の保険適用を検討する前提としてその目的を明確にするよう要望。

(2)は、「出産費用は従来から大きな地域差が存在し、分娩機関ごとの費用の内訳がよくわからない」と述べたうえで、より詳細なデータにもとづき地域差の要因を明らかにすることを検討のスタートラインとすべきとの見解を示した。

(3)は、現役世代の加入者が支払っている保険料の半分は高齢者医療費に対する支援に充てられ、現役世代は過重な負担を強いられていると問題提起。仮に、出産費用の保険適用を導入する場合、負担のバランスをどう考えるかが極めて重要と強調し、その際は既存の医療保険との関係を整理する必要があるとした。

(4)は、産科の医師、分娩機関をどう維持していくかは国としての医療提供体制の問題として捉えるべきとの認識を示し、出産費用の保険適用と切り離した解決策を別途、検討するべきとした。

濵口欣也構成員(日本医師会常任理事)は、産科医療機関における体制の維持・向上と妊産婦の費用負担をバランスよく実現するため、本検討会で、妊産婦、医療従事者、保険者の声を聴取しつつ、望ましい出産の在り方についてしっかり議論していく意向を示した。

次回会合では、妊産婦や医療従事者など関係者を対象にヒアリングを実施する。

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