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健保ニュース 2024年7月上旬号

「骨太方針2024」を閣議決定
物価動向配慮も 歳出改革努力を継続
現役世代の負担上昇を抑制へ

政府は6月21日の持ち回り閣議で、「経済財政運営と改革の基本方針2024(骨太方針2024)」と「新しい資本主義のグランドデザインおよび実行計画2024年改訂版」を決定した。「骨太方針2024」は、予算編成について、「2025年度から2027年度までの3年間、これまでの歳出改革努力を継続する」と明記し、具体的な内容は経済・物価動向等に配慮しながら、各年度の予算編成過程で検討する方針を盛り込んだ。全世代型社会保障の構築に向けては、「医療・介護等の不断の改革により保険料負担の上昇を抑制することが極めて重要」と強調。医療保険制度改革は、給付と負担のバランスや現役世代の負担上昇の抑制を図りつつ、関連法案の提出も含め、各種制度における総合的な検討を進める方向性を示した。岸田文雄首相は、「本日取りまとめた方針は、今後、予算編成や制度改正で具体化し、速やかに実行していく」と言及。今後、年末の令和7年度予算編成過程や関係審議会等で社会保障改革に向けた検討が進められる。

「骨太方針2024」は、6月11日に公表した「原案」から、与党との調整を経て、一部修正・加筆を行った。

人口減少が深刻化する2030年代以降も、実質1%を上回る経済成長を実現するとともに、医療・介護給付費対GDP比の上昇基調に対する改革に取り組むことで、一定幅でのPBの黒字基調を維持していくことができれば、長期的な経済・財政・社会保障の持続可能性が確保されると見通した。

中期的に持続可能な経済社会の実現に向けて、成長型の新たなステージに移行するための経済財政政策や中期的な経済財政の枠組み、主要分野ごとの基本方針と重要課題を明記し、当面の経済財政運営と令和7年度予算編成の考え方を示した。

人口減少が本格化する2030年度までの6年間を対象期間とする「経済・財政新生計画」の下、経済・財政・社会保障を一体として相互に連携させながら改革を推進し、経済社会の持続可能性を確保していくとした。

予算編成においては、「2025年度から2027年度までの3年間について、これまでの歳出改革努力を継続する」と記載した。

政府は、「骨太方針2021」を踏まえ、2022年度から2024年度までの3年間、社会保障関係費の実質的な伸びを高齢化による増加相当分におさめる目安に沿った予算編成を行ってきたが、2025年度以降も「歳出の目安」に沿った歳出効率化に取り組む方向性を示した。

一方、具体的な内容は、「日本経済が新たなステージに入りつつあるなかで、経済・物価動向等に配慮しながら、各年度の予算編成過程で検討する」と本文に追記した。

令和7年度の薬価改定
環境変化踏まえあり方検討

改革の着実な推進に向け、「骨太方針」、「全世代型社会保障構築をめざす改革の道筋(改革工程)」等を踏まえ、本年末までにEBPMの強化策および経済・財政一体改革の工程を具体化するとともに、毎年改革の進捗管理・点検・評価を行うとした。

主要分野に位置づけた「全世代型社会保障の構築」に向けては、現役世代の消費活性化による成長と分配の好循環を実現していくため、「医療・介護等の不断の改革により、保険料負担の上昇を抑制することが極めて重要」と強調。

経済・財政一体改革におけるこれまでの議論も踏まえて策定された「改革工程」にもとづき、「時間軸」に沿った改革を着実に推進する方針を示した。

医療・介護保険等の改革は、給付と負担のバランスや現役世代の負担上昇の抑制を図りつつ、関連法案の提出も含め、各種医療保険制度における総合的な検討を進めると明記。

改革を進めるに当たり、審査支払機関による医療費適正化の取り組み強化、多剤重複投薬や重複検査等の適正化に向けた実効性ある仕組みの整備を図る。

第3期データヘルス計画にもとづき保険者と事業主の連携(コラボヘルス)の深化を図る対応も盛り込んだ。

イノベーションの推進や現役世代等の保険料負担に配慮する観点から、「費用対効果評価のさらなる活用の在り方について、医薬品の革新性の適切な評価も含め、検討する」と記載。

さらなるスイッチOTC化の推進等によりセルフケア・セルフメディケーションを推進しつつ、「改革工程」に記載された「市販品類似の医薬品の保険給付の在り方の見直し」などの薬剤自己負担の見直しについて検討を進める方針を示した。

令和7年度薬価改定は、「イノベーションの推進、安定供給確保の必要性、物価上昇など取り巻く環境の変化を踏まえ、国民皆保険の持続可能性を考慮しながら、あり方について検討する」と明記。

リフィル処方の活用推進に向けて、阻害要因を精査し、保険者からの個別周知等による認知度向上をはじめとする機運醸成に取り組む。

全世代型健康診断によるプロアクティブケアの推進など、分野横断的かつ包括的で地域の実情に応じた効果ある支援を行うとした。

医療の効率的な提供へ
支払基金を抜本的改組

令和7年度予算編成に向けては、持続的・構造的賃上げの実現、官民連携による投資の拡大、少子化対策・こども政策の抜本的強化を含めた新たなステージへの移行に向けた取り組みの加速、防衛力の抜本的強化をはじめとした日本を取り巻く環境変化への対応など、重要政策課題に必要な予算措置を講ずること等により、メリハリの効いた予算編成とする方針を示した。

EBPMやPDCAの取り組みを推進し、ワイズスペンディングを徹底。単年度主義の弊害是正、骨太方針における重点課題への対応など、中長期の視点に立った経済・財政・社会保障の持続可能性の確保に向けた取り組みを進めるとした。

このほか、「骨太方針2024」は、医療データを活用し医療のイノベーションを促進するため、必要な支援を行いつつ、政府を挙げて医療・介護DXを確実かつ着実に推進すると明記。

医療DXに関連するシステム開発、運用主体として、社会保険診療報酬支払基金について、国が責任を持ってガバナンスを発揮できる仕組みを確保するとともに、情報通信技術の進歩に応じて、迅速かつ柔軟な意思決定が可能となる組織へと抜本的に改組する。

必要な体制整備や医療費適正化の取り組み強化を図るほか、医療・介護DXを推進し、医療の効果的・効率的な提供を進めるための必要な法整備を行うとした。

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