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健保ニュース 2024年6月下旬号

被用者保険の適用在り方懇談会
厚労省 意見交換踏まえ論点整理
次回会合で議論取りまとめ

「働き方の多様化を踏まえた被用者保険の適用の在り方に関する懇談会」(座長・菊池馨実早稲田大学理事・法学学術院教授)は11日、これまでの意見交換を踏まえた論点整理をテーマに議論した。

次回会合で議論の取りまとめを行った後、社会保障審議会医療保険部会・年金部会等の関係審議会で検討を進め、年末までに被用者保険の適用の在り方に関する方向性を固める方針だ。

この日の会合では、厚生労働省が2月13日から6回にわたり実施してきた意見交換を踏まえた論点を提示した。

被用者保険の適用に関し、▽被用者にふさわしい保障の実現▽働き方に中立的な制度の構築▽事業所への配慮等─を基本的な視点として整理。

このうち、「事業所への配慮等」では、保険者の事務負担や保険者が分立する医療保険制度の在り方に与える影響も踏まえながら、検討を進める必要があるとした。

そのうえで、具体的な論点として、①短時間労働者に対する被用者保険の適用の在り方②個人事業所に係る被用者保険の適用範囲の在り方③多様な働き方を踏まえた被用者保険の在り方─を示した。

①では、短時間労働者の適用要件となる▽週の所定労働時間が20時間以上▽賃金が月額8万8000円(年収換算で約106万円相当)以上▽学生を適用対象外▽一定規模以上の企業を強制適用対象(従業員100人超。令和6年10月から従業員50人超)─の撤廃または引き下げを争点とした。

構成員からは、「社会保険制度は働き方に中立的な制度であるため、企業規模要件は撤廃、賃金要件と労働時間要件も将来的に撤廃すべき」との意見が多い一方、「50人以下の規模が小さい事業所は、適用拡大による経営および事務の負担が大きいことから、財政的な支援および相談できる体制構築などの支援や段階的な拡大を視野に入れて検討すべき」などの指摘があった。

②では、非適用業種を解消する方向で検討を進める必要性が多く指摘される一方、新たに適用となる事業所の事務負担・保険料負担が懸念されるため、仮に見直しを行う場合には十分に配慮しつつ進めることが肝要であり、慎重な検討が必要との意見もあることを踏まえた見直しの必要性を論点とした。

構成員からは、「社会保険制度を働き方に中立的な制度とするために業種で適用が異なるべきではなく、常時雇用5人以上の非適用業種事業所は原則加入とするべき」との考えを示す一方、「非適用業種事業所で非適用となった経緯の把握や原因が解消されているか検討が必要」などの指摘があった。

③では、複数の事業所で勤務する者は▽医療保険者の事務負担が大きい▽被用者としての実態を備えているか─など、フリーランス等は▽労働者性が認められる場合でも医療保険では保険者の確定が難しくなる▽制度間を有利に移動することのない仕組みを構築する必要がある─などを論点として提示。

構成員からは、「被用者性の高いフリーランスと事業主性の高いフリーランスの2種類を分けて議論する必要がある」、「複数の事業所で勤務する者は、被用者の実態把握について課題が多く、別途検討すべき」などの発言があった。

健保連の秋山実理事は、論点①と②について、「社会保障制度を維持する観点から、担い手を増やすことは必要であり、働き方の多様化の進行を踏まえると、働き先の規模や業種に関わらず、社会保障を享受できる制度の構築は、社会保障制度の充実に関わると考える」と言及。企業規模要件を撤廃すること、常時5人以上を雇用する個人事業所の非適用事業所を解消する方向性に理解を示した。

一方で、さらなる適用拡大に伴う、全事業所における短時間労働者の適用や非適用事業所の解消により、健保組合の財政的な負担が増加することを危惧。適用拡大を進めるに当たっては、詳細な財政影響を試算するなど、健保組合の財政影響に十分留意し、必要な財政支援を行う対応が不可欠と強調した。

また、論点③については、「複数事業所で勤務する者は、事業所単位で被用者としての実態を備えているといえるのか」と問題提起。保険者が労働時間を合算するなどの事務的な課題も多いと指摘し、慎重な検討を求めた。

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