健保ニュース
健保ニュース 2024年6月下旬号
デジタル行財政会議・取りまとめ
医療分野など利用者起点で改革
リフィル処方活用推進へ 保険者が個別周知
政府のデジタル行財政改革会議(議長・岸田文雄首相)は18日、「デジタル行財政改革 取りまとめ2024」を決定した。
「デジタル行財政改革 取りまとめ2024」は、急激な人口減少社会に対応するため、利用者起点で行財政のあり方を見直し、デジタルを最大限に活用して公共サービス等の維持・強化と地域経済活性化を図ることで、社会変革を実現することが必要と指摘。
これにより、1人ひとりの可能性を引き出し、新たな価値と多様な選択肢が生まれる豊かな社会をめざすことが、デジタル行財政改革の目的との考えを示した。
医療や介護などの各分野について、予算事業と規制・制度の見直しを一体的に進める。その際は、デジタル完結の原則に則り、業務やネットワーク、システムを改善し、業務の効率化と質の向上につなげるとした。
医療分野では、高齢化の進展に伴い、患者数が増えていく一方で、それを支える医療従事者の確保も課題となってくるなか、デジタルの力も積極的に活用し、患者1人ひとりにより質が高く、効率的な医療を提供できるようにしていくことが重要と強調。
実現に向けて必要となる取り組みとして、①医療DXの推進②電子処方箋の導入促進③リフィル処方・長期処方の活用の推進④オンライン診療・遠隔医療の拡充─を掲げた。
このうち、②は、電子処方箋の面的な普及を促進するため、都道府県に対して関連の上乗せ補助金(令和5年度補正予算)の積極的な活用を働きかけるほか、都道府県別・病院、診療所、薬局別の導入状況を速やかに公表。導入が低調にとどまる都道府県については、関係団体や中核的な医療機関等に積極的な働きかけを行うなど、さらなる取り組みを推進するとした。
③は、医療保険者による加入者に対する個別の周知など、医療保険者や医療現場と連携し、あらゆる機会を捉えリフィル処方について国民に分かりやすい形での周知・広報を行うことで、リフィル処方の認知度を向上させるとともに、長期処方と合わせて、その活用を推進する。
また、リフィル処方・長期処方にかかる取り組みについて、令和6年度診療報酬改定による影響の調査・検証を行うとともに、8年度の次回改定で適切な運用や活用策について検討する方針を示した。
④は、オンライン診療を活用して医師が他の医師を支援する体制や、医療資源が乏しい地域でのオンライン診療を含む遠隔医療の実態把握や課題の整理を引き続き行い、必要に応じて、さらなる推進策を検討するとした。
介護分野では、高齢化の進展に伴い、介護サービスに対するニーズも増加していくなか、一部では費用面や人材面等の課題によりデジタル技術の活用に遅れがあり、制度全体の持続可能性にも懸念の声があると指摘。
デジタルの力も積極的に活用して、介護を必要とする者に、質の高い介護サービスを効率的に提供できるようにしていくことが重要との考えを示した。
「経営の協働化・大規模化等による介護経営の改善」などを実現に向けて必要となる取り組みとして盛り込んだ。
介護サービス市場で人材確保が困難となるなか、地域におけるサービスを確保して、複雑化したニーズに対応するためには、1法人1拠点といった小規模経営について、協働化・大規模化等による経営改善の取り組みが必要と指摘。
こうした経営改善の取り組みを推進するため、▽経営課題への気づき▽協働化・大規模化等に向けた検討▽協働化・大規模化等の実施─の各段階に則した対策を講じる方針を示した。
今後は、デジタル行財政改革の実現に向け、医療、介護、子育てなど、各分野における改革を「政策改善対話」等の場を活用して継続的にフォローアップする。
さらに、利用者起点でのデジタル行財政改革をさらに進化させるため、新たな分野の改革について検討するとともに、公共サービスにおけるAIの活用、行政分野のデータ連携基盤の構築、行政保有データのオープン化等の横断的な課題に取り組むことが重要との考えを示した。
岸田首相は、デジタルを活用しつつEBPMを強力に推進すると言及。リフィル処方、電子処方箋を含め重点DXプロジェクトのKPIの設定と進捗モニタリング・改善に取り組むよう指示した。