健保ニュース
健保ニュース 2024年6月中旬号
関係2大臣に「要望書」を手交
自民党皆保険議連 骨太、7年度予算に反映求む
健保組合への支援など4項目
中央社会保険医療協議会の支払側委員を務める健保連の松本真人理事は、本誌のインタビューに応じ、令和6年6月1日に施行された6年度診療報酬改定について、「診療報酬は診療行為への対価だと主張し続け、データやエビデンスにもとづく議論を求めてきた」と2回目となる改定論議を振り返った。外来医療は、支払側が提案した「生活習慣病に対応する医学管理料の再編」による医療の質向上と患者負担の低減を期待するとともに、リフィル処方の活用を推進するアプローチが盛り込まれた対応を評価した。また、健保組合に向けたメッセージとして、自身の受ける医療に興味を持ってもらえるよう、理解しやすく伝える努力をし続けていくと語った。
骨太方針2024および令和7年度予算概算要求に対する要望
令和6年6月4日 国民皆保険を守る国会議員連盟
急速な少子高齢化に伴う現役世代の減少が、我が国の経済・社会システムにとって最大の危機となっている。少子化対策に取り組み、若者や子育て世代に対する支援の充実・強化を図るとともに、全世代型社会保障の構築に向け、改革工程で掲げられた取り組みや徹底した歳出改革の確実な実施が求められる。
これらの実現には、既に限界に達している「現役世代の負担軽減」に加え、「世代間の給付と負担のアンバランス解消」に向けた改革を進めるとともに、医療保険制度の中核を担う健康保険組合の安定した運営の確保が不可欠である。健康保険組合に対する支援は現役世代の支援につながり、ひいては全世代型社会保障構築につながることも踏まえ、政府に対して以下の4点を要望する。
1.後期高齢者・現役並み所得者の給付費への公費投入
後期高齢者医療制度の給付費のうち、現役並み所得者の給付費にのみ公費が投入されておらず、現役世代がその全額を肩代わりしている。現役並み所得者の範囲が拡大すると、現役世代の負担が増える構造となっている。過重な現役世代の負担を軽減するため、公費を投入すること。
2.高額薬剤など医療費の高額化に伴う健保組合の財政悪化への支援
画期的な新薬の保険収載が相次ぎ、医療費の高額化が一段と進展し、健保組合の財政を圧迫している。令和6年度に、健保連が実施する『高額医療交付金交付事業』に対する財政支援(100億円)が措置されたが、今後も高額医療費の増加が懸念されるため、健康保険組合間の共助の仕組みを支援するため、さらなる拡充を図ること。
3.出産・子育て対策・DX推進など国策に貢献する健保組合の取組への財政支援
今後の少子化対策にあたっては、職域を通じた対策の推進が重要となる。これまで、健康保険組合は「加入者に近い保険者」として、事業主(企業)と連携して、少子化・子育て、女性の健康などに対する保健事業に取り組んできた。また、マイナ保険証の普及促進、医療、健診データの活用など、DXの推進にも取り組んでいかなければならない。これら国策の推進にもつながる健康保険組合の取組に対し、必要な財政支援を継続・拡充すること。
4.出産費用の保険適用の早期検討
令和8年度を目途とする出産費用の保険適用の検討にあたっては、妊婦の方々の自己負担の問題や保険適用範囲の設定などに慎重な検討を要するため、出産費用の見える化を含め、今後の検討工程を明確化し、早期に検討を開始すること。
鈴木財務相
要望事項に理解表明
自民党・国民皆保険を守る国会議員連盟の「骨太方針2024および令和7年度予算概算要求に対する要望」は、5月13日の同議連第8回総会で取りまとめた。
5月29日の鈴木俊一財務相への「要望書」の提出は、丸川珠代参議院議員(議連幹事長・会長代行)、田畑裕明衆議院議員(議連事務局長代行)が参加し、佐野雅宏会長代理、河本滋史専務理事も同席した。
鈴木財務相に要望書を手交した後、丸川議員が、4点を柱とする要望書の概要を説明。合わせて、健保組合が加入者に対し、国が推進しているマイナ保険証の普及に取り組んでいることを紹介した。
意見交換では、鈴木財務相が、出産費用に対する保険適用の検討状況や健保組合の厳しい財政状況に関心を寄せた。
佐野会長代理は、出産費用の保険適用について、厚生労働省が準備を進めており、来月から具体的方策の議論が開始されると見通したうえで、「健保組合は出産育児一時金を負担しているが、これ以上に負担が大きくならないよう要望していく」と応じた。田畑議員は、「令和8年度の診療報酬改定に組み込まれる予定であり、自民党の厚生労働部会の中にもプロジェクトチームが設定されている」と党内の検討状況を説明した。
健保組合の財政状況について、佐野会長代理は、「社会保険の適用拡大により、相対的に標準報酬が低い流通、アパレル業界の健保組合の運営が厳しくなっている」と指摘し、「特に、総合組合は平均年齢も高いために、依然として厳しい状況が続いている」と応答。さらに、健保組合が抱える諸課題に対応し、持続可能性を高めるため、今秋を目途に、新たな政策提言をまとめ、制度改革への反映をめざしていく考えを表明した。
鈴木財務相は、医療保険制度について、「抜本的な改革が実現するまでの間、当面は対症療法(財政支援)をするしかない」との認識を示したうえで、「これからも健保組合にかかる情報に注視していく」と言及し、要望事項に理解を示した。
武見厚生労働相
要望踏まえ制度設計
武見敬三厚生労働相への「要望書」の提出は、丸川氏、後藤茂之衆議院議員(議連副会長)、橋本岳衆議院議員(議連副幹事長)、田畑氏、三ツ林裕巳衆議院議員(議連幹事)、馬場成志参議院議員(議連幹事)が参加し、佐野会長代理、河本専務理事も同席した。
武見厚労相に要望書を手交した後、丸川議員が要望書の概要を説明。田畑議員は、「健保組合に寄り添った支援をお願いしたい」と求めたほか、出産費用の保険適用について適切に対応するよう要望した。
武見厚労相は、「健保組合の財政状況はマスコミでも盛んに報道されており、日本の医療保険制度をどのようにして持続可能なものにするかが重要だ」と強調する一方、「医学・医療の進歩、イノベーションには大きなコストがかかる」と指摘し、「この2つのバランスを取るのが難しく、いつもせめぎ合っている」との認識を示した。
医療保険財源をどう保つかが課題であり、幅広く考えなければならないと言及したうえで、「要望の趣旨を重く受け止める」と応答し、理解を示した。
要望項目①の「後期高齢者・現役並み所得者の給付費への公費投入」について武見厚労相は、しっかりと要望を踏まえながら制度を設計したいとの考えを示した。
要望項目②の「高額薬剤など医療費の高額化に伴う健保組合の財政悪化への支援」について武見厚労相は、「頭の痛い問題だ」との認識を示したうえで、「健保連が実施する高額医療交付金交付事業に対し、令和6年度に100億円の財政支援が措置されたが、今後どうするかが課題だ」と発言。
後藤議員が「高額薬剤や選定療養にかかる個人負担の問題についても考えていかなければならない」と指摘し、武見厚労相は「この問題について党も議論してほしい」と応じた。
要望項目④の「出産費用の保険適用の早期検討」について武見厚労相は、「先生方には各ステークホルダーの良き仲介者になってほしい」と述べ、保険適用の実現に向けた協力を求めた。
このほか、馬場議員は総務省、デジタル庁がマイナ保険証の普及促進に取り組んでいる現状を説明し、武見厚労相は今年の12月2日に健康保険証の新規発行が廃止されるとして、普及促進策のスムーズな実行を依頼した。