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健保ニュース 2024年5月下旬号

骨太方針や予算概算要求に反映
健保組合への支援を拡充・強化
自民党皆保険議連 「要望書」近く政府に申し入れ

自民党の「国民皆保険を守る国会議員連盟」(鈴木俊一会長)は13日、参議院議員会館で第8回総会を開き、今夏の「骨太の方針2024」と「令和7年度政府予算概算要求」に向けた健保組合・健保連の重点要望を聴取。これを踏まえた「要望」をとりまとめた。近く政府に申し入れる方針だ。総会に出席した佐野雅宏会長代理は、全世代型社会保障をさらに進めるため、「現役世代の負担軽減」、「世代間の給付と負担のアンバランス解消」に向けた改革を実現すべきと訴えた。そのうえで、▽後期高齢者・現役並み所得者の給付費への公費投入─を筆頭に、▽高額薬剤など医療費の高額化に伴う健保組合の財政悪化▽出産・子育て政策・DX推進など国の施策に貢献する健保組合の取組─に対応する財政支援の充実・強化を重点事項として要望。合わせて、出産費用の保険適用について、早期に検討を開始するよう求めた。会合に出席した48名の議員からは理解や支持する意見が多数示され、これを踏まえた議連としての「要望書」を了承した。

「国民皆保険を守る国会議員連盟」は、この日の会合で、当面の政策課題について健保連からヒアリングを実施し、質疑応答・意見交換を行った。

会合には議員48名、代理を含めて134名が出席した。
 開会のあいさつで鈴木俊一会長は、世界に冠たる国民皆保険を守っていくなかで、「健保組合の果たすべき役割は大変に大きなものがある」と強調する一方、その担うべき役割に対しての課題、問題点も多いとの認識を示した。

医療DXの一環であるマイナンバーカードの使用促進、電子カルテの標準化対応、子ども・子育て支援金制度の創設、出産費用の保険適用などの課題について、「今後どう対応していくのか、心配なのは健保組合の財政事情だ」と指摘。

健保組合は令和6年度予算早期集計で6500億円強の赤字になる見込みであり、高齢者などの医療費が増えていく傾向が続くなか、当面の政策課題等について、厳しい財政事情、今後の課題を合わせて考えていく必要があると言及し、出席議員や健保組合・健保連、厚生労働省に活発な議論を求めた。

続いて健保連の佐野雅宏会長代理が、6年度の健保組合財政について、団塊の世代が75歳に到達する影響により高齢者拠出金が前年度比4.6%(1701億円)に増加し、経常収支差引額は▲6578億円の赤字が見込まれると説明。賃上げによる収入増を期待しつつも、引き続き厳しい財政状況を見通した。

そのうえで、「骨太方針2024・予算(令和7年度概算要求)」に向けた健保組合・健保連の重点要望等として、(1)後期高齢者・現役並み所得者の給付費への公費投入(2)高額薬剤など医療費の高額化に伴う健保組合の財政悪化への支援(3)出産・子育て対策・DX推進など国の施策推進に貢献する健保組合の取組への財政支援─を説明した。

全世代型社会保障をさらに進めるためにも、「現役世代の負担軽減」、「世代間の給付と負担のアンバランス解消」に向けた改革を実施するとともに、財政支援の拡充を強く要望。

合わせて、少子化対策関係として、「子ども・子育て法案関係」と「出産費用の保険適用の検討」─の2点を要望した。

1点目は、▽支援金は医療保険料と異なるものであることの明確化▽歳出改革を徹底するとともに、将来を見据え税を含めた財源のあり方を検討▽支援金と同様に、代行徴収の意味合いが強い介護保険料の設定方法の見直し─。

2点目は、令和8年度を目途とする出産費用の保険適用は、クリアすべき課題が多く、慎重な検討が必要であるとして、早期に検討を開始するよう訴えた。

これに対し、出席議員からは健保組合・健保連の考え方に全面的に賛成する意見があったほか、出産費用の保険適用に関しては、健保組合の負担が現状より増えることがないよう対応すべきだといった提案があった。

質疑応答の後、議連としての要望書のとりまとめが提案された。
 要望書は、「骨太方針2024および令和7年度予算概算要求に対する要望」と題し、①後期高齢者・現役並み所得者の給付費への公費投入②高額薬剤など医療費の高額化に伴う健保組合の財政悪化への支援③出産・子育て対策・DX推進など国策に貢献する健保組合の取組への財政支援④出産費用の保険適用の早期検討──を柱とする。

①は、後期高齢者医療制度の給付費のうち、現役並み所得者の給付費にのみ公費が投入されておらず、現役世代がその全額を肩代わりしていると問題提起。現役並み所得者の範囲が拡大すると、現役世代の負担が増える構造となっているとし、過重な現役世代の負担を軽減するため、公費を投入することを強く訴えた。

②は、画期的な新薬の保険収載が相次ぎ、医療費の高額化が一段と進展し、健保組合の財政を圧迫していると指摘。6年度に措置された健保連が実施する「高額医療交付金交付事業」に対する財政支援(100億円)の拡充を図る対応を求めた。

③は、これまで健保組合は「加入者に近い保険者」として、事業主(企業)と連携して、少子化・子育て、女性の健康などに対する保健事業に取り組んできたほか、マイナ保険証の普及促進、医療、健診データの活用など、DXの推進に取り組む必要があると強調。国策の推進にもつながる健保組合の取組に対し、必要な財政支援を継続・拡充する対応を要望。

④は、8年度を目途とする出産費用の保険適用の検討にあたっては、妊婦の自己負担や保険適用範囲の設定などに慎重な検討を要するため、出産費用の見える化を含め、今後の検討工程を明確化し、早期に検討を開始すべきとした。

健保組合・健保連の意見をほぼ網羅した要望書に対して、出席議員から異論はなく了承され、取り扱いを丸川珠代幹事長に一任。骨太方針や予算概算要求への反映を求め、近く財務、厚生労働両大臣などに提出し、実現を求めていく方針とした。

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