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健保ニュース 2024年5月合併号

令和6年度健保組合予算早期集計
経常収支6578億円の赤字
平均保険料率 過去最高の9.32%に

健保連は4月23日、厚生労働省内で記者会見を開き、令和6年度健保組合予算早期集計の結果を発表した。6年度の健保組合全体の経常収支差引額は、保険給付費や高齢者拠出金の増大に伴い、6578億円の赤字となる見込み。赤字額は前年度予算の5621億円から956億円増え、赤字組合は全組合の約9割に達する。平均保険料率は前年度予算比0.05ポイント増の9.32%と過去最高を更新し、協会けんぽの平均保険料率(10%)以上の組合は全組合の4分の1を占める。実質保険料率は同0.17ポイント増の10.27%に上昇した。佐野雅宏会長代理は、6年春闘を反映した大幅な賃上げに期待する一方、高齢者等拠出金の増加は続いているとして、厳しい収支状況を見通した。そのうえで、「給付は高齢者、負担は現役世代という構図は限界に近づいている」と発言し、現役世代の負担軽減と世代間の格差解消を政府に要望。高齢者についても負担能力に応じた負担を求めるとともに、後期高齢者現役並み所得者に対する公費投入を強く訴えた。

拠出金は4.6%増
9割近くの組合が赤字

令和6年4月1日現在の健保組合数は、前年比1組合減の1379組合で、6年度予算早期集計は、報告のあった1353組合の財政状況を推計したもの。

被保険者数は前年度に比べ18万2466人(1.1%)増の1686万6761人で、過去最高を更新。特に女性が著しく増加した。一方、被扶養者数は1139万3147人で同26万8397人(2.3%)減少。扶養率は前年度に比べ0.02ポイント減の0.68人となり、初めて0.70人を下回った。

保険料の基礎となる被保険者1人当たり平均標準報酬月額は39万1372円で、同7246円(1.9%)増加。平均標準賞与額は同3万4351円(3.0%)増の119万7287円だった。

平均標準報酬月額と平均標準賞与額は前年度から回復基調にあり、新型コロナ感染拡大前の元年度と比べても、月額は3.5%、賞与額は1.5%と改善している。

経常収入の99%を占める保険料収入が8兆8851億円と、同3811億円、4.5%増加した。被保険者数の堅調な伸びとともに、賃金引き上げの追い風・効果を漸次的に反映。経常収入は9兆53億円で、同3891億円、4.5%の増加となった。

なお、6年度新設の出産育児交付金は41億円を計上した。
 支出面をみると、保険給付費は同2945億円、6.2%増の5兆756億円で、新型コロナ感染拡大下での医療費の高い伸びや著しい変動を要因に、例年に比べ高めの見込みとなっている。

他方、高齢者等拠出金は3兆8774億円で、団塊の世代が75歳に到達する影響により、前年度に比べ1701億円、4.6%増加。前期高齢者納付金は同866億円、5.7%増の1兆6003億円、後期高齢者支援金は同835億円、3.8%増の2兆2769億円だった。

このほかの支出では、データヘルス計画等、加入者の健康維持・増進のための保健事業費に4664億円(同81億円、1.8%増)を計上し、経常支出全体では同4848億円、5.3%増の9兆6631億円。この結果、6年度予算の経常収支差引額は6578億円の赤字となった。

赤字組合は同103組合増の1194組合(全組合の86.6%)の一方、黒字組合は同104組合減の185組合(同13.4%)で、組合全体の9割近くが赤字となった。

150組合が料率引き上げ
協会けんぽ以上は4分の1

令和6年度予算における平均保険料率(調整保険料率を含む)は9.32%で、前年度に比べ0.05ポイント上昇し、過去最高を更新。単一組合(1099組合)は9.20%、総合組合(254組合)は9.87%となる。

被保険者1人当たり保険料負担額は同1万7073円増の52万6769円だった。
 保険料率を引き上げた組合は150組合、引き下げた組合は75組合、据え置いた組合は1127組合。協会けんぽの平均保険料率(10%)以上の組合は333組合で、全組合の24.6%を占める。

また、収支均衡に必要な財源を賄うための実質保険料率は、平均保険料率を0.95ポイント上回る10.27%(前年度比0.17ポイント増)となる見通しとなった。

義務的経費に占める拠出金
負担割合50%以上が2割

法定給付費と高齢者等拠出金を合わせた義務的経費に占める拠出金の負担割合は43.8%(後期高齢者支援金25.7%、前期高齢者納付金等18.1%)で、負担割合が50%以上の組合は239組合と全体の17.7%を占める。

世代間の格差解消など
佐野会長代理が強く要望

健保連の佐野雅宏会長代理は、令和6年度健保組合予算編成について、①保険料収入は33年ぶりと言われる6年春闘の高い回答結果が反映されておらず、大幅な賃上げに期待(賃上げ1%は保険料収入800億円程度相当)②保険給付費は5年度上期以降、伸び率が鈍化し、6年度もその傾向が続く見込み─から、全体としてかなり厳しめの結果となっているとの考えを示した。

一方、①、②のようなプラス要因は見込めるものの、高齢者拠出金の増加は続き、全体として厳しい収支状況を見通した。

佐野会長代理は、「これまでの給付は高齢者、負担は現役世代という構図がもはや限界に近づいている」と発言し、現役世代の負担軽減と世代間における給付と負担のアンバランス解消を政府に強く訴えた。

特に、現役並み所得の後期高齢者には公費が投入されていないため、約5000億円という過重な負担を現役世代が肩代わりしていると指摘し、後期高齢者現役並み所得者に対する公費投入を要望。高齢者についても、負担能力に応じた負担を求めた。

介護保険料率1.78%
1人当たり年11.8万円

令和6年度予算の平均介護保険料率は、前年度とほぼ同率の1.78%で、1人当たり保険料負担年額は前年度比1842円、1.6%増の11万7949円となった。

介護保険料率を引き上げた組合は116組合(全組合の8.6%)。また、設定保険料率が1.97%以上(告示による概算負担率)の組合は123組合で、全体の9.1%を占めた。

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