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健保ニュース 2024年4月中旬号

2060年度の社会保障の姿
内閣府試算 給付費対GDP比は大幅増
負担構造改革の推進が必要

内閣府は、2034~2060年度の経済・財政・社会保障の姿を試算し、2日に開催された経済財政諮問会議(議長・岸田文雄首相)に提示した。

このうち、社会保障の姿では、「医療・介護費の伸びは、高齢化や医療の高度化等により、自然体では長期的に経済の伸びを上回る見込み」と指摘。

これに対し、実質1%超の成長の下、毎年の医療の高度化等のその他要因による増加を相殺する給付と負担の改革効果を実現できれば、制度の長期的安定性の確保が見通せるとした。

医療・介護の持続可能性の確保には、給付費対GDP比の上昇基調に対する改革に取り組んでいくことが重要として、中長期試算期間中(2033年度まで)も全世代型社会保障の実現など、給付・負担構造の改革を進めていく必要があるとした。

岸田首相は、「少子高齢化・人口減少下でも、中長期的に持続可能な経済・財政・社会保障を構築するため、実質1%を上回る経済成長により力強い経済を実現するとともに、医療・介護給付費対GDP比の上昇基調に対する改革に取り組むことで、財政健全化を着実に進めることが重要」と言及。

人口減少が本格する2030年までに、今後3年程度で必要な制度改革を含め、集中的な取り組みが重要との考えを示し、骨太方針に向け中長期的な経済・財政の枠組みの検討を進めるよう新藤義孝内閣府特命担当大臣に指示した。

この日の経済財政諮問会議は、経済・財政一体改革の点検・検証と中長期政策の方向性をテーマに議論。内閣府は、医療費や介護費への影響が大きい75歳以上や85歳以上の人口は、長期にわたって段階的に増加すると見込んだうえで、経済の姿と一体的に2060年度までの財政、社会保障(医療・介護)の姿を試算し、提示した。

経済の前提は、生産性の向上、労働参加の拡大、出生率の上昇の発現の程度の違いにより、①現状投影②長期安定③成長実現─の3つのシナリオを想定。現状のままでは長期的に0%程度と見込まれる実質成長率を1%以上に引き上げるべきとしたほか、今後3年程度に集中的な取り組みを講じる必要があるとした。

医療・介護の給付と負担(対GDP比)は、人口減少下で現状の経済が続く①で、2019年度の8.2%(保険料負担4.8%、公費負担3.5%)から2060年度に13.3%(同7.2%、同6.1%)に上昇する見通しと試算。さらに、医療の高度化が加速した場合は、2060年度に16.1%へ給付と負担が倍増する見通しを示した。

同様に、生産性向上、労働参加拡大、出生率上昇が実現する②は2060年度に10.5%(同5.7%、同4.8%)、成長率が持続的にプラスとなる③は2060年度に9.7%(同5.3%、同4.4%)となり、医療・介護費の伸びは経済の伸びを上回ると見込んだ。

内閣府は、経済の伸びを上回って給付が増加する医療・介護は、毎年の医療の高度化等のその他要因による増加を相殺する改革効果を実現できれば、長期安定シナリオの下で、制度の長期的安定性の確保を見通せる結果と評価。そのためにはDX活用等による給付の適正化・効率化、地域の実情に応じた医療・介護提供体制の構築、応能負担の徹底を通じた現役・高齢世代にわたる給付・負担構造の見直し等、様々な努力の積み重ねが必要とした。

改革を給付抑制で対応すると仮定した試算では、2060年度の負担は、①11.1%②8.8%③8.2%─に適正化される見込みを示し、長期安定シナリオの下でもPBの黒字が維持され、公債等残高対GDP比の安定的な低下につながると見通した。

武見敬三厚生労働相は、「最大の課題は、少子高齢化・人口減少であり、その中でも必要な社会保障を確保しながら、社会のダイナミズムを維持・向上させていくことが重要」と指摘。

また、昨年末の「改革工程」に盛り込まれた提供体制の効率化、健康寿命の延伸、能力に応じた全世代の支え合いなど、全世代型社会保障の構築に向けた様々な取り組みを国民の理解を得ながらしっかり進めていく意向を示した。

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