健保ニュース 2024年4月上旬号

かかりつけ医機能含む提供体制
2040年見据えた新たな地域医療構想を検討
新検討会で年内に取りまとめ

社会保障審議会医療部会（遠藤久夫部会長）は3月21日、地域医療構想のさらなる推進をテーマに議論した。

この日の会合では、厚生労働省が、①2025年に向けた地域医療構想の進め方②新たな地域医療構想の検討─を提案。

①は、地域医療構想のPDCAサイクルを通じた取り組みをさらに推進するため、3月中を目途に通知を発出。2025年に向けて各年度に国・都道府県・医療機関が取り組む事項を明確化するとともに、国による積極的な支援を実施する方針を改めて示した。

国が推進区域（仮称）・モデル推進区域（仮称）を設定してアウトリーチの伴走支援を実施し、都道府県は推進区域の調整会議で協議。区域対応方針の策定・推進、医療機関で区域対応方針にもとづく医療機関対応方針の検証・見直し等の取り組みを行い、構想区域での課題解決に向けた取り組みを推進する。

合わせて、▽地域別の病床機能等の見える化▽都道府県の取り組みの好事例の周知▽医療機関の機能転換・再編等の好事例の周知▽基金等の支援策の周知▽都道府県等の取り組みのチェックリスト▽モデル推進区域（仮称）におけるアウトリーチの伴走支援─を国が積極的に支援するとした。

②は、厚労省が新たな地域医療構想の主な検討事項と地域医療構想の検討体制を提示。
　2040年頃を見据え、医療・介護の複合ニーズを抱える85歳以上人口の増大等に対応できるよう、病院のみならず、かかりつけ医機能や在宅医療、医療・介護連携等を含め、地域の医療提供体制全体の地域医療構想として検討する。

主な検討事項として、▽2040年頃を見据えた医療提供体制のモデル▽病床の機能分化・連携のさらなる推進▽地域における入院・外来・在宅等を含めた医療提供体制の議論─に整理。

このうち、「2040年頃を見据えた医療提供体制のモデル」は、地域の類型（都市部、過疎地等）ごとの医療需要の変化に対応する医療提供体制のモデル（医療DX、遠隔医療等の取り組みの反映）を検討する。

現行の地域医療構想については、引き続き、既設の「地域医療構想および医師確保計画に関するWG」で進捗状況の評価、さらなる取り組み等を検討。

新たな地域医療構想は、2040年頃を視野に入れつつ、病院のみならず、かかりつけ医機能や在宅医療、医療・介護連携等を含めて検討を行う必要があることから、必要な関係者が参画する「新たな地域医療構想等に関する検討会」を新設して検討を行うこととした。健保連からは、河本滋史専務理事が委員として参画する。

「地域医療構想および医師確保計画に関するWG」は、今夏に設定する推進区域・モデル推進区域（仮称）のアウトリーチの伴走支援の進捗状況を評価。WGの議論の内容を新検討会に報告し、現行の地域医療構想の評価・課題を踏まえ、新たな地域医療構想の検討を進める。

「新たな地域医療構想等に関する検討会」は、3月29日に初会合を開催。月に1～2回程度開催し、関係団体等からヒアリングを実施しつつ、今秋を目途に「中間まとめ」、今年末に「最終まとめ」を策定する。

令和7年度に新たな地域医療構想に関するガイドラインを発出、8年度に新たな地域医療構想の策定、9年度から新たな地域医療構想に取り組むスケジュールを想定している。

健保連の河本専務理事は、地域医療構想について、保険財政の運営で優れた取り組みとの認識を示す一方、「現在の地域医療構想は必要量との大きな乖離が残っている区域も相当数あり、かなりの遅れと受け止めている」と発言。2025年の状況が新たな地域医療構想の発射台となるとして、今後2年間の取り組みが重要と強調し、今回の対応案を着実に進めるよう訴えた。

他方、現在の地域医療構想では解決が難しい課題も多いと指摘。新たな地域医療構想について、「外来や在宅、看取りや看護との連携まで範囲を広げて検討することには賛成」と言及し、「射程時期は高齢化がピークとなる2040年頃を見据えるだけでなく、中間目標を設定して進捗を管理するべき」との考えを示した。

山口育子委員（ささえあい医療人権センターCOML理事長）は、「地域医療構想の進捗状況に対する国民への周知が進んでいない」と指摘し、地域医療構想における都道府県の進捗状況をわかりやすく解説したような形で国民に示すよう要望した。

城守国斗委員（日本医師会常任理事）は、「診療報酬に合わせて医療機能を考えるのでなく、医療機能を診療報酬で評価するのが本来のあり方だ」と主張した。