健保ニュース
健保ニュース 2024年3月中旬号
令和6年度診療報酬改定を告示
厚労省がYouTubeで概要説明
6月施行へ届出期間や経過措置を周知
厚生労働省は5日、令和6年度診療報酬改定について官報告示し、留意事項を地方厚生局と都道府県に通知した。厚労省保険局医療課は同日付で改定内容の概要を説明する動画をYou Tubeで公開し、6月1日施行に向けて周知。このなかで、入院医療の評価は、各入院料で生活の視点を重視した見直しを行うとともに、高齢者の中等症急性疾患のニーズ増大に対応した「地域包括医療病棟」を新設したことを紹介した。6年度診療報酬改定は、医療DX推進の観点から6月を施行時期とし、各種届出は5月2日から6月3日を期間とすることに留意するよう依頼。改定項目によって経過措置を設ける対応も示した。
【賃上げ・基本料等の引き上げ】
看護職員、病院薬剤師その他の医療関係職種(40歳未満の勤務医師・勤務歯科医師・薬局の勤務薬剤師、事務職員、歯科技工所等で従事する者を除く)の賃上げを実施していくための評価として、届出を行った医療機関等に対し、初診時に6点、再診時に2点を初再診料等に上乗せする「外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)」を新設する。
さらに、「同(Ⅰ)」による対象職員の賃上げが一定の水準(給与総額の1.2%増)に達しないと見込まれる無床診療所、訪問看護ステーションは、初診または訪問診療時に「8~64点」、再診時に「1~8点」を上乗せできる「同(Ⅱ)」も設ける。
病院と有床診療所に対しては、入院基本料等に「1日1~165点」を上乗せできる「入院ベースアップ評価料」を創設。
薬剤師や保健師、助産師等の職員を対象とし、いずれの「ベースアップ評価料」とも、対象職員の賃上げの計画と実績を毎年報告する対応を求める。
他方、40歳未満の勤務医師・勤務歯科医師・薬局の勤務薬剤師、事務職員、歯科技工所等で従事する者の賃上げに資する措置として、初再診料、入院基本料等を引き上げる。賃上げの計画と毎年の実績(各年)について、「ベースアップ評価料」の報告や抽出調査等により把握することとした。
賃上げに加え、外来診療における標準的な感染防止対策を日常的に講じる観点から、「初診料」を3点増の「291点」、「再診料」と「外来診療料」は2点増の「75点」と「76点」にそれぞれ引き上げる。
入院基本料等は、▽急性期一般入院料1は33点増の1688点▽回復期リハビリテーション病棟入院料4は18点増の1859点▽特定機能病院入院基本料の7対1入院基本料は104点増の1822点▽地域包括ケア病棟入院料1は29点増の2838点─等に増点。
合わせて、入院料通則を改定し、「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」の内容を踏まえた「意思決定支援にかかる指針の作成」を要件とする入院料の範囲を拡大するほか、「地域包括診療料」や「地域包括診療加算」等の要件に「意思決定支援にかかる指針の作成」を追加する。
【医療DXの推進】
マイナ保険証利用により得られる薬剤情報等を診察室等でも活用できる体制を整備するため、電子処方箋(令和7年3月まで経過措置)と電子カルテ情報サービス(7年9月まで経過措置)の整備、マイナ保険証利用率の一定程度の実績(6年9月まで経過措置)を要件とする「医療DX推進体制整備加算」を新設し、医療DXを推進する体制を評価する。
オンライン資格確認を行う体制を有している等の施設基準を満たす医療機関を受診した患者に初診を行った場合、「月1回に限り8点(歯科6点、調剤4点)」を「初診料」や「調剤基本料」に上乗せする。
6年12月2日から現行の健康保険証の発行が終了することを踏まえ、今後のマイナンバーカードの利用実態とその活用状況を把握し、「医療DX推進体制整備加算」の適切な要件設定に向けた検討を行う。
【外来診療の機能分化・強化等】
生活習慣病の増加等に対応する効果的・効率的な疾病管理および重症化予防の取り組みを推進するため、①検査等を包括しない生活習慣病管理料(Ⅱ)(月1回333点)の新設②生活習慣病管理料の評価・要件の見直し③特定疾患療養管理料の見直し④特定疾患処方管理加算の見直し⑤地域包括診療料等の見直し⑥慢性腎臓病の透析予防指導管理の評価の新設─を行う。
このうち、②は、検査等の費用を包括する現行の「生活習慣病管理料」について、「少なくとも1月に1回以上の総合的な治療管理を行う」要件を廃止するほか、診療ガイドライン等を参考に疾病管理を行うことを要件化。「生活習慣病管理料(Ⅰ)」に改めたうえで、▽脂質異常症を主病610点▽高血圧症を主病660点▽糖尿病を主病760点─に、算定点数をそれぞれ40点引き上げる。
「生活習慣病管理料(Ⅰ)・(Ⅱ)」とも、「当該患者の同意を得て治療計画を策定し、当該治療計画にもとづき、生活習慣に関する総合的な治療計画を行った場合に、月1回に限り算定する」ことを要件とする。
③は、月2回算定できる「特定疾患療養管理料(診療所225点、100床未満の病院147点、100床以上200床未満の病院87点)」の対象疾患から、脂質異常症、高血圧、糖尿病を除外する。
④は、リフィル処方と長期処方を推進する観点から、処方料と処方箋料の「特定疾患処方管理加算」について、28日未満の処方を行った際の「特定疾患処方管理加算1」を廃止し、「特定疾患処方管理加算2」の評価を「56点」へと10点減点。また、「特定疾患処方管理加算」について、リフィル処方箋を発行した場合も算定を可能とする。
⑤は、かかりつけ医機能の評価である「地域包括診療料」、「地域包括診療加算」について、リフィル処方と長期処方の活用を推進する観点から、「患者の状況等に合わせ医師の判断によりリフィル処方や長期処方を活用することが可能であること」の患者への周知を要件に追加。「地域包括診療加算」は現行点数(加算1:25点、加算2:18点)をそれぞれ3点引き上げる。
【機能に応じた入院医療の評価】
高齢者の中等症急性疾患のニーズ増大に対し、地域で救急患者等を受け入れる体制を整え、リハビリテーション、栄養管理、入退院支援、在宅復帰等の機能など、急性期医療と回復期医療の機能を包括的に担う「地域包括医療病棟」の評価として、「地域包括医療病棟入院料(1日につき3050点)」を新設する。
施設基準として、▽看護職員が10対1以上配置▽ADL等の維持、向上および栄養管理等に資する必要な体制が整備(ADLが入院時と比較して低下した患者の割合が5%未満)▽平均在院日数が21日以内▽在宅等に退院する患者の割合が8割以上▽一般病棟から転棟した患者の割合が5%未満▽救急搬送された患者の割合が1割5分以上─などを設ける。
厚労省は、「地域包括医療病棟」に移行するイメージとして、「急性期一般入院料1~6」を算定する急性期病棟や、一定の救急医療の実績のある地域包括ケア病棟等からの転換を想定する。
他方、旧7対1入院基本料相当の「急性期一般入院料1」は、施設基準を見直す。医療機関間の機能分化を推進するとともに、患者の状態に応じた医療の提供に必要な体制を評価する観点から、平均在院日数にかかる要件を現行の「18日以内」から「16日以内」へと短縮する。
合わせて、「重症度、医療・看護必要度」における該当患者割合の要件を①「A3点以上」または「C1点以上」に該当する割合が一定以上②「A2点以上」または「C1点以上」に該当する割合が一定以上─のいずれも満たすことを施設基準とした。
また、「重症度、医療・看護必要度」の評価項目を見直したうえで、「必要度Ⅰ」は割合①21%②28%、「必要度Ⅱ」は割合①20%②27%の基準値を設定。令和6年3月31日時点で施設基準の届出がある場合、6年9月30日まで基準を満たしているものとする経過措置を設ける。
「回復期リハビリテーション病棟入院料」は、40歳未満の勤務医師等の賃上げに資する措置としての入院基本料等の評価の見直しおよび、▽専従の社会福祉士等の配置▽FIMの測定に関する研修会を年1回以上開催─などの施設基準の見直しを行ったうえで評価を引き上げる。
「地域包括ケア病棟入院料」は、適切な在宅復帰支援を推進する観点から、入院期間に応じた評価体系に見直す。
現行の▽地域包括ケア病棟入院料・入院医療管理料1(2809点)▽同2(2620点)▽同3(2285点)▽同4(2076点─について、▽同1(40日以内2838点、41日以降2690点)▽同2(同2649点、同2510点)▽同3(同2312点、同2191点)▽同4(同2102点、同1992点)─と設定し、41日以降の評価を現行点数から引き下げる。
医療区分とADL区分にもとづく9分類から成る現行の「療養病棟入院基本料」は、疾患・状態にかかる3つの医療区分、処置等にかかる3つの医療区分、3つのADL区分にもとづく27分類およびスモンに関する3分類の合計30分類の評価に精緻化し、疾患・状態・処置等に着目した医療区分に見直す。
医療法にもとづく医療療養病床の人員配置標準にかかる経過措置の終了を踏まえ、「療養病棟入院基本料」の注11に規定する経過措置を廃止。入院患者のうち、医療区分2・3の患者が5割以上の要件は、6年9月30日までの経過措置を設ける。
6年度から施行される医師の労働時間上限規制を念頭に、働き方改革を推進するため、「地域医療体制確保加算」の施設基準に、医師の時間外・休日労働時間にかかる基準を追加する。
医師の労働時間について、原則として、タイムカード、ICカード、パソコンの使用時間の記録等の客観的な記録を基礎として確認し、適正に記録。また、特定地域医療提供医師および連携型特定地域医療提供医師の1年間の時間外・休日労働時間が原則として、▽6年度は1785時間▽7年度は1710時間─以下であることを求める。
【重点的分野における対応】
3次救急医療機関等に救急搬送された患者について連携する他の医療機関でも対応が可能と判断する場合に、連携する他の医療機関に看護師等が同乗のうえで転院搬送する場合の評価として、「救急患者連携搬送料」を新設する。
いわゆる「下り搬送」を促進するための評価で、▽入院中の患者以外の患者の場合は1800点▽入院1日目の患者の場合は1200点▽入院2日目の患者の場合は800点▽入院3日目の患者の場合は600点─を算定可能とし、「救急搬送について、相当の実績を有している」、「救急患者の転院体制について連携する他の医療機関等との間であらかじめ協議を行っている」こと等を施設基準とした。
「救急医療管理加算」は、「同加算2(1日につき420点)」を算定するケースで、「その他の重症な状態」の割合が5割を超える医療機関に対する評価を「210点」に半減する。
また、「経過観察が必要であるため入院させる場合」など算定の対象とならないケースを明確化するとともに、患者の状態について詳細を把握する観点から、患者の状態の分類を見直すとともに、診療報酬明細書の摘要欄の記載事項の定義を明確化する。
【個別改定事項】
長期収載品の保険給付のあり方を見直す。選定療養の仕組みを導入し、後発医薬品の上市後5年以上経過した長期収載品または後発品の置換え率が50%以上となった長期収載品を対象として、後発品の最高価格帯との価格差の4分の3までを保険給付の対象とする。
令和6年10月1日から施行・適用。厚労省は、具体的な対象品目や運用等の詳細は3月中に通知する予定とした。
このほか、包括されている医薬品の実勢価格を踏まえ、実施時間と施設基準に応じた人工腎臓にかかる9区分の評価をそれぞれ9点引き下げる。
【歯科診療報酬】
医科と同様に、外来医療または在宅医療を実施している歯科医療機関に勤務する歯科衛生士、歯科技工士等の賃金改善を実施している場合の評価として、▽歯科外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)▽同(Ⅱ)▽入院ベースアップ評価料─を新設する。
標準的な感染防止対策を日常的に講じることの必要性、歯科医療機関の職員や歯科技工所で従事する者の賃上げ等の観点から、初再診料を引き上げる。
「歯科初診料」と「地域歯科診療支援病院歯科初診料」は3点引き上げ、「267点」と「291点」。「再診料」と「地域歯科診療支援病院歯科再診料」は2点引き上げ、「58点」と「75点」にそれぞれ増点する。
また、歯冠修復と欠損補綴物の製作にかかる項目の評価について、それぞれ「2~236点」を引き上げる。
一方、継続的・定期的な口腔管理を推進するため、現行の「かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所」の施設基準の名称を「口腔管理体制強化加算」に変更するとともに、口腔機能管理の算定実績や在宅歯科医療の連携体制確保など要件を厳格化する。
さらに、かかりつけ歯科医による現行の「エナメル質初期う蝕管理加算(260点)」を廃止し、「エナメル質初期う蝕管理料(48点)」と「根面う蝕管理料(48点)」を新設。また、「小児口腔機能管理料(50点)」、「口腔機能管理料(50点)」を算定可能とする。
令和6年3月31日に「かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所」にかかる届出を行っている医療機関は、7年5月31日までの間に限り、口腔機能管理に関する実績があることに該当するものとみなす経過措置を設ける。
【調剤報酬】
地域の医薬品供給拠点としての役割を担い、地域医療に貢献する薬局の整備を進めること、職員の賃上げを実施すること等の観点から、「調剤基本料」を▽調剤基本料1(45点)▽同2(29点)▽同3イ(24点)▽同3ロ(19点)▽同3ハ(35点)─へ、それぞれ3点引き上げる。
「調剤基本料2」の算定対象に、1月における処方箋の受付回数が4000回を超え、かつ処方箋受付回数が多い上位3の医療機関にかかる処方箋による調剤の割合が7割を超える薬局を追加する。
一方、地域におけるかかりつけ機能の役割を果たし、地域医療に貢献する薬局を評価する「地域支援体制加算」は、施設基準や地域医療に貢献する体制を有する実績を厳格化したうえで、▽地域支援体制加算1(32点)▽同2(40点)▽同3(10点)▽同4(32点)─に、それぞれ7点引き下げる。
このほか、現行の「特別調剤基本料(現行7点)」について、いわゆる同一敷地内薬局を対象とする「特別調剤基本料A(5点)」、調剤基本料の届出がない薬局を対象とした「特別調剤基本料B(3点)」の区分を設けたうえで評価を適正化。
「特別調剤基本料A」を算定する薬局は、特別な関係を有する医療機関への情報提供を行った場合、服薬情報等提供料等を算定できないこととした。