健保ニュース
健保ニュース 2024年2月下旬号
中医協が6年度診療報酬改定案を答申
感染対策賃上げへ 6月から初診料を3点増
生活習慣病対策で適正化推進
中央社会保険医療協議会(小塩隆士会長)は14日、令和6年度診療報酬改定案を武見敬三厚生労働相に答申した。外来診療における感染防止対策、40歳未満の勤務医師等の賃上げ実施へ、初診料を3点引き上げる。消費増税対応を除く初診料の引き上げは、病診の初診料を統一した平成18年度以来、18年ぶり。再診料と外来診療料は2点引き上げる。一方、適正化の観点から、生活習慣病にかかる医学管理料の再編やリフィル処方箋の活用を推進。急性期入院の基準厳格化や地域包括医療病棟の新設により、入院医療の機能分化を促す。厚生労働省は3月5日に新点数表を告示し、6月から適用する。
病床機能の分化・強化へ
入院医療の見直しを評価
この日の中医協は、令和6年度診療報酬改定の内容と附帯意見を最終確認し、支払側と診療側の了承を得たうえで、小塩隆士会長から濵地雅一厚生労働副大臣に答申書を手渡した。
支払側は、鳥潟美夏子委員(全国健康保険協会理事)が代表して、今回改定を総括した。
団塊の世代がすべて75歳に到達する節目を1年後に控え、増加する高齢者の医療ニーズへの対応や同時改定、賃金上昇への対応と多岐にわたる視点での議論が求められるなか、「国民、患者にとって安心、安全で効果的、効率的な医療を実現するために、これまで以上にメリハリの効いた配分を強く意識した」と振り返った。
入院医療では、急性期一般入院料1にかかる平均在院日数の短縮や重症度、医療・看護必要度の評価項目と該当患者割合の見直しについて、「2025年に向けた地域医療構想にもとづく病床機能の分化、強化につながるもの」との認識を示した。
また、高齢者の急性期入院医療を想定した地域包括医療病棟の新設は、大きな前進と評価。
外来医療では、「生活習慣病管理料や特定疾患療養管理料等で、質が高く、患者の負担にも配慮した計画的な管理の考え方が整理できたことは、かかりつけ医機能の発揮に資する意義のある見直し」との考えを示した。
一方で、「40歳未満の勤務医師等の賃上げ措置として、入院基本料や初再診料を引き上げることは支払側が求めた方法と異なる形となった」と指摘し、「確実に賃上げが実施されたのか、丁寧に検証する必要がある」と強く訴えた。
医療DXの推進では、医療の質が向上し、患者がメリットを実感できることが大前提と主張した。
令和8年度の次回改定に向けては、高齢化がピークとなる2040年頃に向け、ポスト地域医療構想を見据えた医療機関の機能分化・強化、連携を意識すべきと強調。かかりつけ医機能報告制度の検討状況を注視しつつ、答申書附帯意見を踏まえ、さらなる対応について十分に議論する必要があるとした。
今回の改定が、患者負担等に大きく影響する見直しについては、保険者や医療機関、薬局を通じた情報提供に対する国の支援を要望。
限られた保険財源と医療資源の有効活用や患者中心の医療を実現する観点から、さらなる適正化と重点化に向けて、引き続き議論を尽くしていく考えを示した。
国民の幸福、利益へ
医療の安全性が最優先
診療側は、長島公之委員(日本医師会常任理事)が代表して見解を述べた。
6年度の診療報酬改定は、6年に一度の同時改定、物価高騰や賃金上昇、医療DXなどの大きな課題に直面するという難しい改定のなか、「真摯な議論を積み重ねてきた結果、答申に辿り着くことができた」と振り返った。
そのうえで、「安心、安全で質の高い地域医療が安定的に継続して提供されることが、国民にとって幸福であり、利益だ」と主張。医療では、医学的な有効性、必要性、安全性が最優先されるとの認識を示した。
診療報酬の議論を行ううえで、地域医療の実態など多角的な視点による補完や補正が必要なこと、医療DXを関係者全員で推進していく必要があること、診療報酬改定の結果が地域医療に与える影響は決定者が責任を負うことを重要視した。
6月施行へ通知等を整備
安心な提供体制を構築
濵地厚労副大臣は答申書を受け取った後あいさつし、6年度診療報酬改定に向けた長きにわたる議論に感謝した。
6年度改定は、医療従事者の賃上げ等がテーマとなるなか、「現場に分かりやすい形で示していただいた」と言及し、厚労省としても、答申にもとづいて速やかに告示や通知の整備を行い、6月からの施行に向けて準備を進めていくとした。
また、今回改定による影響の検証や残された課題の検討など、附帯意見に盛り込まれた事項を真摯に受け止め対応していく意向を示した。
国民皆保険制度は世界に誇るものと強調し、国民がわかりやすく、安心できる医療提供体制を構築していくとの決意を表明した。
多くの課題迫られた改定
次回改定へ影響を検証
小塩会長は、すべての審議を終えた後、同時改定に伴う医療と介護の連携推進、医療従事者の働き方改革や賃上げに向けた診療報酬改定との連動、長期収載品の保険給付の見直しなど、「非常に多くの課題を迫られた改定だった」と発言した。
また、新型コロナウイルス感染症の5類への移行、医薬品の供給制約など、医療を取り巻く環境の大きな変化のなかで解決するという非常に困難な取り組みを強いられたほか、病床の機能強化・分化という構造的な課題も大きな論点になったとの認識を示したうえで、「1号側、2号側は立場の違いを乗り越え、こうした問題の解決に取り組み、答申にいたることができた」と感謝した。
他方、「今回の改定作業は、これまでにない取り組みを数多く含んでおり、データ等エビデンスにもとづき影響を丁寧に検証して課題を見出し、次回改定に生かしていく必要がある」と指摘し、「各側委員に対し、これまで以上の協力と指導をお願いする」と締め括った。