HOME > けんぽれんの刊行物 > 健保ニュース > 健保ニュース 2024年2月下旬号

健保ニュース

健保ニュース 2024年2月下旬号

健保連第219回定時総会
宮永会長 持続可能な制度実現へ邁進
危機的状況に組織挙げ対応

健保連は15日、東京・港区のベルサール汐留で第219回定時総会を開いた。冒頭あいさつした宮永俊一会長は、高齢者拠出金が増大する見込みに加え、医療費の高い伸びが続くなど、今年は「健保組合の2025年問題」とも言える「正念場の年になる」と指摘。緊急アンケートの結果、「大変厳しい会員組合の財政状況、保険料率引き上げの見込みが出ている」として、「このままでは、健保組合の存続が危ぶまれる状況に陥るのではないか」と危機感を露わにした。皆保険制度を中心的に支える基盤である健保組合が解散する事態を防ぐために、現役世代の負担を和らげ、全世代が納得して負担し合える制度へ改善していく必要があると強調。目前に迫った危機的な状況を、政府をはじめ関係する各機関、世論に訴え、組織を挙げて対応していくとした。健保連会長として、会員組合の皆さんと力を合わせ、公平で納得できる、持続可能な社会保障制度の実現に邁進していくとの決意を表明した。(宮永会長の発言要旨は次のとおり。)




総会の開催にあたり、一言あいさつ申し上げる。
 まず、年明けの令和6年能登半島地震により、犠牲となられた方々のご冥福を改めてお祈りするとともに、被災された皆さんのために、一日も早い復旧・復興をお祈りする次第だ。

本日は来賓として、公務ご多忙のなか、大島一博厚生労働事務次官にご臨席をいただいており、後ほど、あいさつをいただくことになっている。

さて、海外では、ロシアによるウクライナに対する軍事侵攻が長期化するなか、昨年秋にはイスラエル・パレスチナ情勢が急変するなど、これまでの国際秩序が大きく揺らぎ、分断化の様相が広がっている。

一方で、本年は、パリで開催されるオリンピックイヤーであり、同時に、米大統領選挙をはじめとする世界の国々のリーダーが選ばれる世界的な「選挙イヤー」でもある。

今、不確実で混沌とした世界情勢のなかで、各国首脳が利害を超えて一致点を見出す努力を続けることで、分断を和らげ、世界をより良い方向に導くものになって欲しいと、強く願う次第だ。

次に、国内に目を転じると、新型コロナウイルス感染症の影響から脱却し、これまで低迷していたサービス産業やインバウンドなどの経済活動もコロナ前の勢いを取り戻してきている。

また、円安や原材料、エネルギー価格の上昇に伴う物価上昇も落ち着きを見せ始め、将来に対する投資活動も活発化してきている。

政府は、昨年に引き続き、物価上昇を上回る賃上げを実現し、成長と分配の好循環を定着させるべく、取り組まれている。

アフターコロナという新しい社会環境のなかで、成長力を底上げし、生産性を向上していくことが求められており、経済成長を持続していく社会・経済構造への転換を定着できるかどうかの大変重要な時期といえる。

医療費の高い伸び継続
組合財政は厳しい状況

われわれ健保組合にとっても、今年は大変重要な年となる。
 いわゆる「団塊の世代」がすべて後期高齢者となる「2025年問題」を来年に控え、全世代型の社会保障制度改革が本格的に進む年となる。

また、令和6年度の政府予算案には、今回の制度改革に伴う健保組合に対する支援策が盛り込まれている。

しかしながら、今後も「高齢者に対する拠出金」の増加が見込まれることに加えて、新型コロナ感染症が5類感染症に移行したにもかかわらず、医療費の高い伸びが続いていることから、健保組合の財政は、引き続き大変厳しい状況にあり、「健保組合の2025年問題」とも言える、 「正念場の年」になる。

これまでも、一定以上の所得のある高齢者の2割負担や後期高齢者の保険料負担の見直しなどが行われ、従来の「負担は現役世代」、「給付は高齢者」という形から「全ての世代で負担能力に応じてお互いを支え合う」全世代型の社会保障制度への改革が推し進められている。

しかしながら、今後2040年に向けて、高齢化率が確実に高まり、少子化による生産年齢人口の減少という状況のなかでは、現役世代の負担緩和には十分な内容とはいえず、まだまだ多くの課題が積み残されていることは、ご承知の通りだ。

皆さんの健保組合においても、来年度の予算編成にあたり、非常にご苦労されていることと思う。

いくつかの健保組合の方とお話しする機会をいただいたが、「来年度は大幅に保険料率を引き上げざるを得ない」との現状を伺った。

そこで、この厳しい状況を具体的に把握するため、東京、愛知、大阪の各連合会と、そこに加入される健保組合の皆さんにご協力いただき、予算編成における緊急アンケートを実施させていただいた。

そこでは、大変厳しい会員組合の財政状況、保険料率引き上げの見込みが出ている。
 すでに保険料率が10%を超えている健保組合が相当数あることも踏まえると、このままでは、健保組合の存続が危ぶまれる状況に陥るのではないかと、大変憂慮している。

常々申し上げて、皆さんと再確認しているように、わが国の生活の安心の礎である皆保険制度は、世界に類を見ない、万人に等しく温かい制度であり、確実に、将来世代に残していかなければならない。

そして、皆保険制度を中心的に支える基盤である健保組合が解散される事態だけは、何としても防がなければならない。

そのためには、制度の支え手である現役世代の負担を和らげ、全世代が納得して負担し合える制度へ、さらにより良くしていく必要がある。

目前に迫ったこの危機的な状況を、政府をはじめ関係する各機関、世論に訴え、組織を挙げて対応していかなければならないと、改めて強く感じている次第だ。

マイナ保険証の一体化へ
利用促進のフェーズに

また、今年の12月2日からは、保険証が廃止され、いよいよマイナンバーカードと保険証の一体化がスタートする。

健保組合の皆さんには、昨年来、登録データの確認に大変なご苦労とご尽力をいただき、誠にありがとうございました。

今後は、スムーズな移行に向けての準備をお願いするとともに、加入者の方々が、実際にマイナ保険証を医療機関等で利用し、そのメリットを実感していただくという 「マイナ保険証の利用促進」のフェーズに移行することになる。

オンライン資格確認等システムは、医療DXの基盤となるものであり、質の高い医療の提供、医療の効率化・重点化にもつながる大変重要なインフラだ。

そして、マイナンバーカードと保険証の一体化は、その第一歩となるものだ。
 健保連としては、まずはマイナ保険証の導入に向けて、しっかりと健保組合をサポートしていく。

皆さんとともに、事業主や加入者への働きかけを行いながら、政府や経済団体、医療関係団体とも一丸となって、自らの健康状況が常に確認でき、個々人に合った医療サービスの質の向上に繋がるという、マイナ保険証のメリットをより多くの方々に、しっかりとご理解いただき、一層の普及が進むよう周知活動を積極的に進めていく。

少子化対策への協力
徹底した歳出改革前提

また、今国会においては、「子ども・子育て支援法等改正案」が提出され審議される予定だ。

少子化対策は、将来を担う世代を育てるという国としての喫緊の課題だ。
 社会保障の一翼を担う健保組合としても、これに協力していかなくてはならないが、現役世代の負担軽減に向けて、徹底した歳出改革と既存予算の活用が前提となると考える。

併せて、医療保険者の事務負担に対する配慮や、国民への丁寧な説明も強く求めていく。
 また、来年度は、診療報酬・介護報酬の改定に加え、「第3期データヘルス計画」、「第4期特定健診・特定保健指導」などの加入者の健康増進にかかわる重要な政策も始まる。

われわれ健保組合は、加入者に近いという特性を生かし、働き方の変化や多様性に応じた保健事業を展開し、着実に成果を上げていくことで、これからも、加入者の「Well Being」の向上と、事業主の企業活動に貢献していきたい。

健保組合にとって大変厳しい状況が続く時だからこそ、原点に立ち返り、健保組合の強みである保険者機能を今まで以上に発揮し、われわれ健保組合の存在感や価値を高める取り組みが大切だ。

2025年という大きな節目の年を乗り越え、これからの日本の社会・経済を支えていくのは安心できる社会保障であり、それを守っていく健保組合はなんとしても存続させなければならない。

私も健保連会長として、会員組合の皆さんと力を合わせて、公平で納得できる、持続可能な制度の実現に邁進していく。

議員各位におかれても、引き続きのご支援・ご協力をお願い申し上げる。
 本日は、令和6年度の事業計画や予算案を中心にご審議いただく。議員各位の活発な審議をお願いして、私のあいさつとする。

けんぽれんの刊行物
KENPOREN Publication

2024年
2023年
2022年
2021年
2020年
2019年
2018年
2017年
2016年
2015年
2014年
2013年
2012年
2011年
2010年