健保ニュース
健保ニュース 2024年2月上旬号
中医協が個別改定項目を議論
感染対策賃上げへ 初再診料を引き上げ
中医協総会は1月26日、令和6年度診療報酬改定に向けて、個別改定項目を議論した。
1月12日に中医協がまとめた「これまでの議論の整理」に沿って、具体的な改定論議に着手。2月上旬の厚生労働相への答申に向け、改定内容や点数を詰めていく。
この日の会合では、「令和6年度診療報酬改定の基本方針」のⅠ現下の雇用情勢も踏まえた人材確保・働き方改革等の推進、Ⅱポスト2025を見据えた地域包括ケアシステムの深化・推進や医療DXを含めた医療機能の分化・強化、連携の推進、Ⅲ安心・安全で質の高い医療の推進、Ⅳ効率化・適正化を通じた医療保険制度の安定性・持続可能性の向上─のうち、ⅠとⅡの▽賃上げに向けた評価の新設▽急性期一般入院料1における平均在院日数の基準の見直し▽一般病棟用の重症度、医療・看護必要度の評価項目および施設基準の見直し─を除いた部分を議論した。
Ⅰは、40歳未満の勤務医師事務職員等の賃上げに資する措置として、入院基本料等の評価を見直す。
さらに、外来診療における標準的な感染防止対策を日常的に講じる必要性や、職員の賃上げを実施する観点から、初診料、再診料と外来診療料を引き上げる対応を明示した。
同様の観点から、歯科の初診料および再診料、歯冠修復および欠損補綴物の製作にかかる項目の評価を引き上げる。
地域の医薬品拠点としての役割を担い、地域医療に貢献する薬局の整備を推進、職員の賃上げを実施する観点から、調剤基本料の評価を見直す一方、地域支援体制加算の要件を強化する。
他方、より実効性を持った医師の働き方改革を推進する観点から、地域医療体制確保加算の施設基準に、医師の時間外・休日労働時間にかかる基準を追加することとした。
健保連の松本真人理事は、若手勤務医、歯科医師、薬局薬剤師や事務職員に関する基本料の見直しについて、賃上げや医療の質にかかる取り組みの実態把握と効果の検証を行い、対応が不十分な場合には見直すことを前提に了承した。
今後の議論として、「病院と診療所のコスト構造の違いを踏まえ、初再診料等のあり方について踏み込んだ検討を行うことも必要」との考えを示す一方、「感染防止対策を理由とした歯科初診料のこれ以上の引き上げは容認できない」と指摘した。
地域医療体制確保加算については、6年4月から適用される年1860時間の法定水準より厳しい実績要件を設定するなど、基準を段階的に厳格化することで、確実に医師の超過勤務を改善することを条件に了承した。
診療側の長島公之委員(日本医師会常任理事)は、「働き方改革は各医療機関の実態、実情に応じ適切に進めていく必要がある」と主張し、厳格な要件化は適切でないとの見解を示した。
生活習慣病管理料
月1回治療の要件廃止
Ⅱは、オンライン資格確認等システムの導入が原則義務化されたことを踏まえ、現行の医療情報・システム基盤整備体制充実加算を体制整備にかかる評価から、初診時等の診療情報・薬剤情報の取得・活用にかかる評価へあり方を見直すとともに、名称を「医療情報取得加算」に改める。
また、電子処方箋および電子カルテ情報共有サービスを導入し、質の高い医療を提供するために医療DXに対応する体制を確保している場合の評価として、「医療DX推進体制整備加算」を一定期間の経過措置を設けたうえで新設する。
他方、高齢者の救急患者をはじめとした急性疾患等の患者を受け入れる体制を整え、リハビリテーション、栄養管理、入退院支援、在宅復帰等の機能を包括的に担う病棟の評価として、「地域包括医療病棟入院料(1日につき)」を新設。
地域包括ケア病棟入院料は、入院期間に応じた評価体系に見直すとともに、訪問看護にかかる実績の基準を改める。
医療区分とADL区分にもとづく9分類から成る現行の療養病棟入院基本料について、疾患・状態にかかる3つの医療区分、処置等にかかる3つの医療区分および3つのADL区分にもとづく27分類およびスモンに関する3分類の合計30分類の評価に見直す。
生活習慣病管理料は、名称を「生活習慣病管理料(Ⅰ)」に見直し、少なくとも1月に1回以上の総合的な治療管理を行う要件を廃止する一方、診療ガイドライン等を参考として疾病管理を行うことを要件化。検査等を包括しない「生活習慣病管理料(Ⅱ)」を新設する。(Ⅰ)、(Ⅱ)とも管理料に外来管理加算の費用も含むこととした。
また、特定疾患療養管理料の対象疾患から、生活習慣病である糖尿病、脂質異常症および高血圧を除外。
処方料および処方箋料の特定疾患処方管理加算について、「特定疾患処方管理加算1」を廃止するとともに、「特定疾患処方管理加算2」の評価を見直し、リフィル処方箋を発行した場合も算定可能とした。
健保連の松本真人理事は、医療情報・システム基盤整備体制充実加算の見直しについて、「情報取得の評価という形で加算を継続するなら、点数は引き下げるべき」と要求。さらに、今年の12月2日に健康保険証が廃止され、マイナンバーカードによる受診が当たり前となることを踏まえれば、しかるべきタイミングで加算のあり方について改めて議論する必要があるとした。
地域で救急患者等を受け入れる病棟の評価については、「体制の整備だけでなく、救急搬送の受け入れや在宅復帰率等の実績基準を適切に設定することが重要」と強調。
また、新病棟の担い手として想定されている看護配置10対1の急性期一般入院料2~6は、一定の期限を設けたうえで、移行促進することも今後の課題となるとの認識を示した。
生活習慣病管理料の見直しは、「効率化、医療の質の向上に加え、患者の利便性と理解の向上といった様々な観点から非常に重要」と評価。患者の経済的な負担に配慮した点数設定も含め、事務局案通りの実現を求めた。