健保ニュース
健保ニュース 2024年2月上旬号
6年度改定へ中医協が公聴会
賃上げの検証可能な仕組みを
マツダ健保組合 朝倉常務理事が意見陳述
中央社会保険医療協議会(小塩隆士会長)は1月19日、令和6年度の次期診療報酬改定に向けた公聴会(広島市)をオンライン形式で開催した。
公聴会では、公募で選ばれた保険者、医療関係者、被保険者や患者の代表など10名が意見を発表。マツダ健保組合の朝倉進常務理事は、健保組合の現状をはじめ、保険財政の観点から次期改定に向けた基本認識や個別意見を主張した。
朝倉常務理事は、「高齢化の進展による拠出金の増加や、医療給付費の継続的な増加により財政圧迫が止まらない」と組合財政の現況を説明。財政の支え手が減少していくなか、団塊世代がすべて75歳以上となり、医療保険制度は極めて厳しい局面を迎えるとの認識を示した。
5年度の健保組合予算の早期集計では、全体の経常収支が5623億円の赤字となり、「全健保組合の約8割が赤字だ」と問題提起し、「広島県の17健保組合のうち14健保組合が赤字予算を組み、マツダ健保組合では医療給付の大幅増で赤字転落が避けられなくなった」と訴えた。
6年度の次期診療報酬改定は、団塊世代がすべて後期高齢者となる2025年の直前という重要な節目となると指摘。被保険者と事業主が負担する保険料を適切に活用し、加入者の安全・安心と効率・効果的な医療を両立するため、「メリハリの効いた医療費の配分が必要」と強調した。
診療報酬で対応する医療機関の賃上げについては、医療機関に勤務する給与所得者の賃金が確実に上がることと、その実態を検証できる仕組みの実現を求めた。
入院は、地域医療構想の実現に向けた診療報酬上の対応のほか、高齢の救急患者等の受け入れ先について、「急性期の治療とともに、リハビリや栄養管理が包括的に提供されると、早期に自宅等での生活に戻ることができ、患者にとって望ましく、医療費の適正化にもつながる」との考えを示した。
外来は、かかりつけ医機能に関し、「生活習慣病は、患者が治療の必要性を理解したうえで、計画書にもとづき質の高い管理を効率的に行うことが重要」と言及。働きながら治療を継続する現役世代の立場から、リフィル処方の活用に期待した。
医療DXの推進については、電子処方箋や電子カルテ情報の早期普及に向けた対応を要望。
後発医薬品の使用促進に向けては、後発品の信頼回復と選定療養の制度に関する丁寧な周知が求められるとして、保険者から加入者への広報等に必要な支援を要請した。
中小企業・経営者の代表者は、「社会保険料を負担しなければならない中小企業の事業主や加入者の負担は限界に達している」と現状を説明。
今後、ますます増大していく医療ニーズに対応するため、限られた財源のなかで医療DXを本格的に活用し、患者が安全・安心で効果的・効率的な医療が受けられるよう、真にメリハリの効いた大胆な配分の見直しが必要との見解を示した。
労働組合の代表者は、「医療費が増加するなかで、被保険者における保険料の負担感は、決して無視できるものではない」と提起。
医療DXを推進して、医療の効率化や適正化を推進するとともに、薬剤の多剤・重複投与の是正、データ分析の強化など、医療の質向上につなげていく必要があるとした。
一方、病院の会長は、「コロナ禍前の4年前の状況と比べると、外来患者数や病床稼働率は元の状態には戻っていない」と述べたほか、高齢者救急に看護職員を加配して対応している地方病院の厳しい現状を訴えた。
医院の理事長・院長は、「特定疾患療養管理料と生活習慣病管理料の評価の過程は全く異なるもの」との認識を示し、「疾患が同じという理由で評価を統一するのは暴論だ」と発言。
そのうえで、「医療機関の特性や患者の症状など要件に合致するもののなかから、医師が最も適切なものを選択できることが優れた仕組みだ」と主張した。
このほか、歯科クリニックの院長は、「かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所の施設基準を届け出ている診療所は全体の2割に満たない」と言及し、施設基準の緩和を要望。
また、薬局を経営する薬剤師は、「新型コロナウイルスや薬価改定、物価高騰による影響が続き、薬局経営は大変厳しい状況」と述べ、薬局の薬剤師、事務職員の生活をしっかり支えるための十分な賃上げが必要と要求した。