健保ニュース
健保ニュース 2024年1月下旬号
中医協が6年度改定へ議論を整理
医療従事者賃上げへ 基本診療料等に上乗せ
外来は管理料や加算で適正化
中央社会保険医療協議会(小塩隆士会長)は12日の総会で、令和6年度診療報酬改定の方向性を明示した「これまでの議論の整理」をまとめた。医療従事者の人材確保や賃上げに向け、初再診料、入院基本料など基本診療料や、調剤基本料の引き上げで対応する方向性を盛り込んだ。外来医療は、効率化・適正化の観点から、「生活習慣病管理料」の要件や「特定疾患療養管理料」の対象患者を見直すと明記。また、リフィル処方等の活用を推進するため、「特定疾患処方管理加算」の評価も改める。「議論の整理」をもとに中医協で2月上旬を目途に個別項目の改定論議を進め、必要な変更を加える。
2月上旬を目途に
個別項目の改定論議
中医協が12日にまとめた「令和6年度診療報酬改定にかかるこれまでの議論の整理」は、社会保障審議会の医療保険部会・医療部会が昨年12月11日に策定した「6年度診療報酬改定の基本方針」に沿って、現時点における個別項目の方向性を示した6年度改定の「骨子」の位置づけとなる。
「議論の整理」をもとに中医協で2月上旬を目途に個別項目の改定論議を進め、必要な変更を加える。
他方、同日付で中医協に対し、昨年末の予算編成過程で決定された診療報酬改定率と、「基本方針」にもとづき診療報酬点数の改定案を作成するよう武見敬三厚生労働相から諮問が行われたことを受け、医療現場や国民の意見を踏まえる観点から1月19日まで「議論の整理」に対するパブリックコメントを募集する。
「議論の整理」は、「基本方針」の①現下の雇用情勢も踏まえた人材確保・働き方改革等の推進②ポスト2025を見据えた地域包括ケアシステムの深化・推進や医療DXを含めた医療機能の分化・強化、連携の推進③安心・安全で質の高い医療の推進④効率化・適正化を通じた医療保険制度の安定性・持続可能性の向上―の項目に則し作成。
重点課題に位置づけられた①のうち、医療従事者の人材確保や賃上げに向けた取り組みは、看護職員、病院薬剤師その他の医療関係職種について、賃上げを実施していくための新たな評価を行う。
40歳未満の勤務医師、事務職員等の賃上げを実施すること等の観点から、「入院基本料等の評価を見直す」との対応を盛り込んだ。
さらに、外来診療で標準的な感染防止対策を日常的に講じることが必要となっていること、職員の賃上げを実施すること等の観点から、「初再診料等の評価を見直す」と明記。
同様に、歯科診療は初再診料や歯冠修復および欠損補綴物の製作にかかる項目、薬局は「調剤基本料」の評価を見直す。
他方、より実効性を持った医師の働き方改革を推進する観点から、「地域医療体制確保加算」の要件のほか、処置および手術にかかる「休日加算1」、「時間外加算1」、「深夜加算1」の要件を見直すとした。
急性期一般入院料1
基準や評価項目見直し
②は、オンライン資格確認等システムの活用により医療DXを推進し、質の高い医療を提供する観点から、▽「医療情報・システム基盤整備体制充実加算」の評価のあり方を見直す▽電子処方箋のさらなる普及や電子カルテ情報共有サービスの整備など医療DXを推進する体制について新たな評価を行う―とした。
診療報酬上、書面での検査結果その他の書面の作成または書面を用いた情報提供等が必要とされる項目について、「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」の遵守を前提に、電磁的方法による作成または情報提供等が可能であることを明確化する。
地域包括ケアシステムの深化・推進のための取り組みは、高齢者の救急患者等に対し、一定の体制を整えたうえでリハビリテーション、栄養管理、入退院支援、在宅復帰等の機能を包括的に提供することについて、新たな評価を行う。
入院基本料等について、人生の最終段階における適切な意思決定支援を推進する観点から、当該支援にかかる指針の作成を要件とする。
医療機関間の機能分化を推進するとともに、患者の状態に応じた医療の提供に必要な体制を評価する観点から、「急性期一般入院料1」の病棟における実態を踏まえ、「平均在院日数にかかる評価を見直す」と明記。
急性期入院医療の必要性に応じた適切な評価を行う観点から、一般病棟用の重症度、医療・看護必要度について、必要度の判定にかかる評価項目および該当患者割合の基準を見直す。
重症度、医療・看護必要度の測定にかかる負担軽減および測定の適正化をさらに推進する観点から、「急性期一般入院料1(許可病床数200床以上400床未満)」を算定する病棟および「救命救急入院料2」もしくは「同4」または「特定集中治療室管理料」を算定する治療室について、「重症度、医療・看護必要度Ⅱ」が用いられるよう要件を見直すとした。
地域包括ケア病棟入院料の評価について、入院期間に応じた評価体系に見直すとともに、地域包括ケア病棟の要件を見直す。
より質の高い回復期リハビリテーション医療を推進する観点から、回復期リハビリテーション病棟の要件および評価を見直す。
療養病棟入院基本料について、▽疾患・状態と処置等の医療区分と医療資源投入量の関係性を踏まえ、医療区分にかかる評価体系を見直す▽適切なリハビリテーションを推進する観点から要件を見直す▽医療法にもとづく医療療養病床の人員配置標準にかかる経過措置の終了を踏まえ、経過措置を廃止する―等の見直しを行う。
外来医療は昨年末の大臣折衝で決定された「生活習慣病を中心とした管理料、処方箋料等の再編等の効率化・適正化(▲0.25%)」を踏まえ、「生活習慣病管理料」の要件および評価を見直すとともに、「特定疾患療養管理料」の対象患者を見直す。
さらに、リフィル処方および長期処方の活用ならびに医療DXの活用による効率的な医薬品情報の管理を適切に推進する観点から、「特定疾患処方管理加算」について「要件および評価を見直す」と明記。
また、かかりつけ医機能の評価である「地域包括診療料」等について、「かかりつけ医と介護支援専門員との連携の強化、かかりつけ医の認知症対応力向上、リフィル処方および長期処方の活用、適切な意思決定支援および医療DXを推進する観点から、要件および評価を見直す」との対応を盛り込んだ。
他方、かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所について、名称、要件および評価を見直す。
また、かかりつけ薬剤師が算定できる評価とともに、かかりつけ薬剤師としての要件を見直すとした。
アウトカム評価推進へ
データ提出加算見直し
③は、食材料費、光熱費をはじめとする物価高騰を踏まえた対応として、入院時の食費の基準を引き上げるほか、令和6年度薬価制度改革の骨子および保険医療材料制度改革の骨子にもとづき、不採算品再算定について対応すると明記した。
不妊治療を保険診療で実施する医療機関を広げる観点から、「一般不妊治療管理料」について要件を見直すとともに、不妊治療における胚の凍結保存にかかる実態を踏まえ、「胚凍結保存管理料」の要件を見直す。
患者・利用者から見てわかりやすい医療を実現する観点から、6年6月より指定訪問看護事業者による明細書の無料発行を義務化するとともに、診療所における明細書無料発行の義務の免除規定について、すべての医療機関で発行可能な環境を整備したうえで廃止する方向性を示した。
データにもとづくアウトカム評価を推進する観点から、入院患者のデータ提出にかかる実態を踏まえ、「データ提出加算」の評価および要件を見直すとともに、届出を要件とする入院料の範囲を拡大する。
第3次救急医療機関等に救急搬送された高齢患者について連携医療機関でも対応が可能と判断する場合、連携医療機関に看護師等が同乗のうえで転院搬送する評価を新設するとともに、急性期一般入院料の在宅復帰率に関する施設基準を見直す。
また、入院時に重症であり緊急に入院を必要とする患者への入院医療を評価する趣旨を踏まえ、「救急医療管理加算」の要件および評価の見直しを行う。
薬剤師による患者の処方状況に応じた服薬指導の推進とともに、これらの業務の合理化を行うため、「服薬管理指導料」、「服薬情報提供料」等の薬学管理料について、業務実態に応じた要件および評価に見直す。
特定の医療機関からの処方箋受付が集中し、処方箋受付回数が多い薬局等における「調剤基本料」の評価を見直すとともに、「地域支援体制加算」の要件および評価の見直しを行う。
同一敷地内薬局への対応として、医薬品の備蓄等の効率性、医療経済実態調査にもとづく薬局の費用構造や損益率の状況、同一敷地内における医療機関との関係性等を踏まえ、「特別調剤基本料」を算定する薬局の体制等や、同一敷地に薬局を有し一定の基準に該当する医療機関が行う処方の評価を見直す。
医療保険財政のなかで、イノベーションを推進する観点から、長期収載品について保険給付のあり方の見直しを行い、選定療養の仕組みを導入する。
バイオ後続品加算
対象患者を拡大へ
④は、医療DX、医薬品の安定供給等に資する取り組みをさらに推進する観点から処方等にかかる評価体系を見直す。
入院医療においてバイオ後続品の有効性や安全性について十分な説明を行い、バイオ医薬品ごとの特性を踏まえた使用数量割合の基準を満たす医療機関に対し新たな評価を行うとともに、「バイオ後続品導入初期加算」の対象患者を拡大する。
再製造単回使用医療機器の使用実績を有する医療機関における手術時の再製造単回使用医療機器の使用について、新たな評価を行う。
「令和6年度費用対効果評価制度改革の骨子」にもとづく対応のほか、市場実勢価格を踏まえた適正な評価として、「6年度薬価制度改革の骨子」、「6年度保険医療材料制度改革の骨子」にもとづき対応すると明記した。
衛生検査所検査料金調査による実勢価格を踏まえた検体検査の実施料や、包括されている医薬品の実勢価格を踏まえた人工腎臓について評価を見直す。
また、外来診療の実態を踏まえ、効率的な検査、処置および麻酔の実施を図る観点から、一部の検査、処置および麻酔の評価を見直すとした。