健保ニュース
健保ニュース 2023年12月上旬号
第24回医療経済実態調査
一般診療所 個人、法人とも黒字拡大
一般病院は補助金で黒字に改善
中央社会保険医療協議会(小塩隆士会長)は11月24日、令和6年度の次期診療報酬改定の基礎資料となる第24回医療経済実態調査の報告書をまとめた。
医療機関や薬局の経営状況について、収益に対する損益差額の割合を表す損益率をみると、一般病院の4年度損益率は▲6.7%で、4年度改定前の3年度から1.2ポイント悪化。新型コロナウイルス感染症関連の補助金を含む損益率は1.4%の黒字に改善する。
一般診療所は、▽個人が前年度比0.8ポイント増の33.2%(補助金なし32.0%)▽医療法人が同1.0ポイント増の9.7%(同8.3%)─の水準で推移し、いずれも黒字が拡大した。
また、歯科診療所は、▽個人が同1.4ポイント減の26.2%(同25.9%)▽医療法人が同0.9ポイント減の8.7%(同8.4%)─、薬局は、▽個人が同0.4ポイント増の11.4%(同11.2%)▽法人が同0.5ポイント減の5.4%(同5.4%)─の損益率となり、補助金の交付に関係なく高水準の黒字を確保した。
調査は、全国から層化無作為抽出した施設を対象として改定前後の3年度と4年度の医業収益、介護収益、給与費、医薬品費、減価償却費などを把握した。
医業・介護収益に占める介護収益の割合が2%未満の施設を対象に集計した一般病院における4年度の1施設あたり損益状況をみると、医業収益33億5721万円(前年度比2.1%増)、介護収益652万円(同14.6%減)に対し、医業・介護費用は前年度比3.2%増の35億8797万円で、差し引き2億2424万円の赤字となった。
損益率は同1.2ポイント減の▲6.7%だったが、新型コロナ関連の補助金を含めると、1.4%まで改善する。
支出面では医業・介護費用の56.9%を占める給与費のほか、委託費(紹介手数料)や経費(水道光熱費)も増えた。
設置主体別の損益率をみると、医療法人は同0.8ポイント減の3.3%(補助金なし▲1.3%)、国立は同6.3ポイント減の3.9%(同▲8.7%)、 公的は同3.8ポイント減の4.4%(同▲5.7%)の黒字となる一方、公立は同3.0ポイント減の▲7.1%(同▲19.9%)の赤字となった。国公立を除いた一般病院の損益率は同1.8ポイント減の3.8%(同▲2.7%)となっている。
一般病院に常勤する職員の賞与を含めた1人当たり年間給与額は、病院長2633万円(前年度比0.5%増)、医師1461万円(同0.1%減)、歯科医師1249万円(同0.8%減)、薬剤師568万円(同1.1%増)、看護職員520万円(同1.6%増)、看護補助職員324万円(同1.8%増)、医療技術員467万円(同0.4%増)だった。
他方、精神科病院は、損益差額が5450万円の赤字で、損益率は同増減なしの▲1.6%(補助金なし▲4.0%)だった。
このほか、病院機能別の損益率をみると、特定機能病院が同2.3ポイント減の▲4.0%(同▲9.2%)、DPC対象病院が同3.1ポイント減の2.3%(同▲7.1%)、こども病院が同2.5ポイント減の▲10.0%(同▲18.9%)だった。
入院基本料別の損益率をみると、旧7対1入院基本料に相当する「急性期一般入院料1」の算定施設は同3.2ポイント減の2.5%(同▲6.6%)、「同2~3」の算定施設は同3.0ポイント減の▲0.4%(同▲8.6%)、「同4~6」の算定施設は同0.9ポイント減の▲0.8%(同▲9.3%)。
療養病棟入院基本料別の損益率は、「基本料1」の算定施設が同0.4ポイント減の4.2%(同▲0.6%)の一方、「基本料2」は同1.8ポイント増の▲4.5%(同▲9.8%)で、補助金を含めても赤字となっている。
一般病院における病床規模別の損益率をみると、「100~199床」が同1.8ポイント減の1.8%(同▲6.2%)、「200~299床」が同3.5ポイント減の2.6%(同▲7.2%)、「300~499床」が同2.5ポイント減の2.3%(同▲7.4%)、「500床以上」が同2.4ポイント減の1.1%(同▲5.8%)だった。
一般診療所の診療科別損益
小児科は20%超の黒字
一般診療所の令和4年度損益率をみると、「個人」は前年度比0.8ポイント増の33.2%(補助金なし32.0%)、医療法人は同1.0ポイント増の9.7%(同8.3%)の水準で推移し、いずれも黒字が拡大した。
入院収益のない診療所は、個人が同1.1ポイント増の34.0%(同32.7%)、医療法人は同1.7ポイント増の10.7%(同9.2%)。入院収益のある診療所は、個人が同4.8ポイント減の20.5%(同20.1%)、医療法人は同1.7ポイント減の5.7%(同4.7%)で、特に個人の黒字水準が高い。
主たる診療科別の損益率をみると、▽小児科:同6.8%増の23.7%(同21.8%)▽精神科:同1.5ポイント減の18.3%(同17.9%)▽耳鼻咽喉科:同1.0ポイント増の17.7%(同15.5%)▽内科:同1.4ポイント増の16.5%(同14.6%)▽皮膚科:同2.2ポイント減の16.4%(同16.2%)▽眼科:同0.7ポイント増の16.2%(同16.0%)─で高水準の黒字を維持。コロナ禍で受診控えの影響が大きかった小児科は前年度から黒字幅が拡大した。
医科診療所の常勤職員1人当たり年間給与額をみると、個人は▽医師984万円(前年度比9.3%増)▽看護職員366万円(同0.5%増)▽看護補助職員264万円(同0.8%減)▽医療技術員387万円(同0.4%減)─で、医師は大きく上昇。
医療法人は、▽院長2652万円(同2.4%増)▽医師1118万円(同2.2%増)▽看護職員409万円(同2.0%増)▽看護補助職員260万円(同2.3%増)▽医療技術員421万円(同3.0%増)─といずれも上昇した。
歯科診療所、薬局も黒字
医療機関等の資本は増加
歯科診療所の令和4年度損益率をみると、「個人」が前年度比1.4ポイント減の26.2%(補助金なし25.9%)、「医療法人」は同0.9ポイント減の8.7%(同8.4%)で、いずれも増益となった。
歯科診療所の常勤職員1人当たり年間給与額をみると、個人は、▽歯科医師556万円(前年度比1.4%増)▽歯科衛生士283万円(同0.9%増)▽歯科技工士464万円(同6.3%増)─といずれも上昇。
医療法人は、▽院長1527万円(同2.1%増)▽歯科医師703万円(同4.8%増)▽歯科衛生士288万円(同0.3%増)▽歯科技工士399万円(同1.1%減)─で、歯科技工士を除き上昇している。
薬局の4年度損益率をみると、「個人」が前年度比0.4ポイント増の11.4%(補助金なし11.2%)、「法人」は同0.5ポイント減の5.4%(同5.4%)で、いずれも黒字を確保した。
「法人」について同一グループ店舗数別の損益率をみると、▽1店舗が同0.8ポイント減の1.8%(同1.3%)▽2~5店舗が同増減なしの2.9%(同2.7%)▽6~19店舗が同0.7ポイント減の6.6%(同6.5%)▽20~49店舗が同0.2ポイント増の7.4%(同7.3%)▽50~99店舗が同0.5ポイント減の7.2%(同7.1%)▽100~199店舗が同0.7ポイント減の5.9%(同5.8%)▽200~299店舗が同0.5ポイント減の6.4%(同6.2%)▽300店舗以上が同0.6ポイント減の5.8%(同5.8%)─で、大規模グループの黒字は比較的に高い。
薬局の常勤職員1人当たり年間給与額をみると、「個人」は▽薬剤師400万円(前年度比10.5%増)、「法人」は▽管理薬剤師736万円(同1.5%増)▽薬剤師487万円(同0.1%増)─で、個人で10%を超える伸び率となった。
他方、医療機関と薬局の4年度1施設当たり資本(資産─負債)の状況をみると、▽一般病院19億3727万円(前年度比7.7%増)▽一般診療所1億3312万円(同7.9%増)▽歯科診療所3858万円(同1.4%増)▽薬局6438万円(同4.3%増)─で、いずれも増加している。
このほか、厚生労働省は、3年度から4年度の収入や費用の伸びを前提に、コロナ類型見直しや物価高騰、賃金上昇の影響などを踏まえ推計した第24回医療経済実態調査の補足資料を提出した。
5年度の「医業利益率」は、一般病院(全体)▲10.2%、一般診療所(医療法人)7.6%。「コロナ報酬特例等を除いた医業利益率」は同▲10.3%、同7.0%となる見込みを示した。