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健保ニュース 2023年12月上旬号

財政審が6年度予算編成等へ建議
診療所報酬単価 5.5%程度引き下げ
診療報酬本体マイナス改定を

財政制度等審議会(十倉雅和会長)は11月20日、政府の財政運営に向けた「令和6年度予算の編成等に関する建議」を鈴木俊一財務相に提出した。次期診療報酬改定に向けては、診療所の極めて良好な経営状況を踏まえ、診療所の報酬単価を5.5%程度引き下げることにより、診療報酬本体をマイナス改定とするよう提言。保険料負担は年間2400億円程度、軽減されるとした。「建議」提出後に記者会見した財政制度分科会の増田寛也分科会長代理は、「6年度予算編成に向け、診療所の収益を守るのか、一方で、勤労者の手取りを守るのか、国民的な議論をお願いしたい」と強く訴えた。

処方箋料の引き下げなど
リフィルに適正化措置

財政制度等審議会が11月20日に取りまとめた「令和6年度予算の編成等に関する建議」は、「物価・金利動向など日本経済の現況に鑑みれば、今がまさに財政健全化に軸足を移すべき時であり、この機会を逃してはならない」との基本認識を示した。

社会保障分野では、「目指すべきは、将来世代も含むすべての世代が相互に支え合う全世代型社会保障である」と明記。世代間・世代内の公平性を取り戻し、医療・介護の過剰な給付を抑制していくことで、給付と負担のバランスを確保し、将来不安を取り除く必要があるとした。

6年度の次期診療報酬改定に向けては、「診療報酬本体、薬価等、保険償還の対象となるサービスの価格について、国民負担を軽減する観点から、できる限り効率的に提供するよう、診療報酬の合理化・適正化等を進めていく必要がある」と指摘。

診療所の報酬単価については、財務省の機動的調査から、診療所の経常利益率(8.8%)が全産業やサービス産業平均の経常利益率(3.1~3.4%)と同程度となるよう、初診料・再診料を中心に5.5%程度引き下げるべきと訴えた。

これにより、保険料負担は年間2400億円程度(現役世代の保険料率では▲0.1%相当。年収500万円の者の場合、年間5千円相当)軽減されると強調した。

他方、過去20年間、診療所における1受診あたり医療費(報酬単価)は、物価上昇率が低迷するなかでも、ほぼ一貫して増加してきたとして、「公定価格を引き上げないと医療機関は物価上昇分を価格に転嫁することができないとの議論は、診療所における診察実態にもとづくものとは言えない」と主張した。

診療所に関連し、4年度診療報酬改定で導入したリフィル処方箋について、積極的な取り組みを行う保険者を各種インセンティブ措置で評価するほか、薬剤師がリフィル処方箋への切り替えを処方医に提案することを評価する仕組みや、薬剤師の判断でOTC類似薬をリフィルに切り替えることを認めるよう明記。

さらに、リフィル処方箋による適正化効果(改定率換算で▲0.1%)が未達成であることを踏まえ、処方箋料の時限的引き下げなど、「年末の診療報酬改定で未達成分を差し引く調整措置を講じるべき」との考えを示した。

病院については、病床の役割分担を適切に進めるため、「7対1」の看護配置に依存した報酬体系から、患者の重症度、救急受入れ、手術といった「実績」をより反映した体系に転換していくべきと提言。

そのうえで、「10対1」といった看護配置を要件とする急性期入院料は廃止し、回復期への転換を促す対応を訴えた。

改革工程のとりまとめへ
保険給付範囲見直し提言

政府が年末に決定する「改革工程のとりまとめに向けた取り組み」としては、①保険給付の効率的な提供②保険給付範囲のあり方の見直し③高齢化・人口減少下での負担の公平化─について提言した。

このうち、①は、かかりつけ医機能が発揮される制度整備に当たって、医療サービスの質の向上につながるようにすることが重要と強調。生活習慣病は医療機関によって診療密度等が大きく異なる等の指摘があることも踏まえ、診療実績に関する情報提供の強化を検討していく必要があるとした。

また、地域医療構想の実現の必要性、進捗の遅さを踏まえれば、2025年以降の確実な目標を見据えて、各医療機関で地域医療構想と整合的な対応を行うよう求めるなど、知事の権限強化に向けた法制的対応が必要と訴えた。

②は、▽高額な医薬品について費用対効果を見て保険対象とするか判断▽医薬品の有用性が低いものは自己負担を増やす、あるいは、薬剤費の一定額までは自己負担─するといった対応を採るべきとの考えを示した。

さらに、市販品と医療用医薬品とのバランス、リスクに応じた自己負担の観点等を踏まえ、OTC類似薬に関する薬剤の自己負担のあり方も検討すべきと明記。その際、保険外併用療養費制度の柔軟な活用・拡大を検討する対応も盛り込んだ。

③は、後期高齢者の患者負担は「現役並み」の所得水準を基準に、現役と同様、3割負担を求めているが、実際の判定基準は、一定の仮定を置いた世帯収入要件もあわせて設けていることから、「現役並み」以上の課税所得があっても必ずしも「現役並み」と評価されない仕組みとなっていると問題提起。

「現役並み所得者」の割合が実効負担率に影響することも踏まえ、「現役並み所得」の判定基準について、現役世代との公平性を図り、世帯収入要件の見直しを行うべきとした。

他方、年齢ではなく能力に応じた負担という考え方にもとづき、昨年10月に導入された一定所得以上の後期高齢者に対する2割負担をさらに進め、原則2割負担に見直すことを今後の課題に位置づけた。

このほか、高齢者の負担能力の判断に際し、金融資産の保有状況も勘案して、負担能力を判定するための具体的な制度設計の検討を進めていくべきとの方向性を示した。

増田財政制度分科会長
次期改定へ国民的議論を

財政制度等審議会・財政制度分科会の増田寛也分科会長は、鈴木俊一財務相に「令和6年度予算の編成等に関する建議」を提出した後、記者会見した。

そのなかで、「診療報酬は、国民医療費そのものであり、その財源の半分は国民が納める保険料となる」と指摘。

岸田文雄首相が国民の実質賃金の上昇を政策課題に据えるなか、「必要な水準以上に診療報酬を維持すれば、その分保険料は引き上がることとなる」と問題提起した。

6年度の予算編成に向けては、「足下で収益状況、経営状況が良い診療所の収益を守るのか、一方で、勤労者の手取りを守るのかといった形での国民的な議論をお願いしたい」と発言。「建議」の内容を国民が理解できるよう、継続して発信していく必要があるとの認識を示した。

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