健保ニュース
健保ニュース 2023年11月下旬号
関係3大臣に「要望書」を手交
自民党皆保険議連 予算、制度改正に反映求む
少子化対策、改定など4事項
自民党の「国民皆保険を守る国会議員連盟」(鈴木俊一会長)は、「令和6年度予算編成および制度改正に対する要望」をまとめ、13日に鈴木財務相、武見敬三厚生労働相、加藤鮎子内閣府特命担当相へ手交した。「要望書」は10月24日の同議連の第7回総会における議論を踏まえたもので、①少子化対策②令和6年度診療報酬、介護報酬等の同時改定に向けて③マイナンバーカード・保険証を基盤とした医療DXの推進④健康保険組合が保険者機能を発揮するための更なる財政支援拡大─の4点が柱。来年度の予算編成作業が本格化するなか、健保組合の健全かつ安定した運営体制を確保するための対応を求めている。来年度予算と制度改正への反映をめざした内容で、少子化対策では、徹底した歳出改革を前提に、現役世代の実質的な負担増とならない仕組みの創設を要請。また、健保組合が真に保険者機能を発揮するために、現役世代の負担軽減を図る改革に継続して取り組むよう要望した。(国民皆保険を守る国会議員連盟の「要望書」は次のとおり)
令和6年度予算編成および制度改正に対する要望
令和5年11月13日 国民皆保険を守る国会議員連盟
現在、政府が推し進めている少子化対策をはじめとする諸施策は、いずれも国民の将来の安心・安全を確保するため欠かせない。社会保障制度の分野においては、とりわけ医療保険・介護保険制度の持続可能性に向けて、2025年および2040年に迎える2つの大きな高齢化の波と相まって、改革の歩みを停滞させることは許されない状況にある。
国民皆保険制度の一翼を担う健康保険組合も、こうした時代の要請に応えていく覚悟が求められるが、そのためには健全かつ安定した運営体制が確保されなければならない。令和5年度も厳しい決算となることが予想される中で、令和4年末の大臣折衝で合意された医療保険制度改革に伴う健康保険組合への令和6年度の追加支援430億円の確実な実行を前提に、政府に対し以下の4点を要望する。
1.少子化対策
少子化対策は、わが国が最優先で取り組むべき国策であることを踏まえ、その財源は国民すべての世代で支え合うべきである。「支援金制度(仮称)」の創設にあたっては、徹底した歳出改革を前提に、現役世代の実質的な負担増とならない仕組みを講じること。あわせて、介護保険の保険者ではない健康保険組合が徴収している介護保険料(介護納付金)の位置づけも見直すこと。
2.令和6年度診療報酬、介護報酬等の同時改定に向けて
骨太の方針2023が示した「物価高騰・賃金上昇、患者・利用者負担、保険料負担への影響等を踏まえた必要な対応」「持続可能な社会保障制度の構築」等の観点にたち、限りある財源の中で医療・介護等の役割分担と連携、かかりつけ医機能の強化、病床機能の分化・強化と連携の推進等に取り組むとともに、国民、患者・利用者、事業主の負担を考慮した改定とすること。
3.マイナンバーカード・保険証を基盤とした医療DXの推進
国民にとって、安心・安全で効率的・効果的な質の高い医療を実現するため、患者・医療機関における、診療・薬剤情報、特定健診情報等の活用拡大、電子処方箋の普及促進等、医療DXを推進すべきである。そのため、基盤となるマイナンバー制度への理解醸成とマイナ保険証の利用促進は欠かせない。マイナ保険証の利用にあたっては、データの正確性が前提となるが、健康保険組合は正確性の確保のためこれまでも努力してきた。一方、来年秋の保険証廃止にあたっては種々の課題があることから、マイナ保険証利用のメリット等の周知広報が重要となるとともに、継続的な登録情報のチェック、資格確認書の交付等、健康保険組合の新たな事務負担に必要な支援・配慮を講じること。
4.健康保険組合が保険者機能を発揮するための更なる財政支援拡大
健康保険組合が真に保険者機能を発揮するため、政府は現役世代の負担軽減を図る改革に継続して取り組むこと。併せて、医療DXの基盤となるマイナ保険証利用促進のための周知広報活動の拡大や確実かつ円滑な事務遂行、職域を通じた少子化対策の拡充など、国策の推進にもつながる健康保険組合の取り組みに対し、必要な財政支援を講じること。
鈴木財務相
健保組合の窮状に理解示す
自民党・国民皆保険を守る国会議員連盟の「令和6年度予算編成および制度改正に対する要望」は、10月24日の同議連第7回総会で健保連から聴取した「健保組合・健保連の重点要望」を踏まえ、作成した。
11月13日の鈴木俊一財務相への「要望書」の提出は、丸川珠代参院議員(議連幹事長・会長代行)、田畑裕明衆院議員(議連事務局長代行)が参加し、佐野雅宏副会長、伊藤悦郎常務理事も同席した。
鈴木財務相は、健保組合の窮状に理解を示したうえで、最近の医療費動向のほか、健保組合における保険料率の推移や解散状況に関心を寄せた。
佐野副会長は、コロナ禍を経て医療費は予想以上に高い伸びとなり、健保組合は保険料率を引き上げざるを得ない状況との懸念を表明。診療所の数が増えていることも医療費が増加する要因となっていると説明した。
鈴木財務相は、要望事項に着目し、医療保険を制度的に継続できるよう取り組む意向を示した。
武見厚生労働相
難しい同時改定になる
武見敬三厚生労働相への「要望書」の提出は、丸川氏、田畑氏、橋本岳衆院議員(議連副幹事長、幹事会メンバー)が参加し、佐野副会長、河本滋史専務理事も同席した。
武見厚労相は冒頭、「私の立場は保険者とそんなに変わらない」と発言したうえで、令和6年度の診療報酬、介護報酬等の同時改定は、「難しい改定になる」との認識を示した。
田畑氏は、「要望書」の概要を説明し、同時改定の良い形での着地のほか、マイナ保険証の普及、医療DXの推進に努力している健保組合への支援を求めた。
佐野副会長は、マイナ保険証の使用キャンペーンへの協力姿勢を示すとともに、昨年末の大臣折衝で合意された430億円の支援措置の確実な実行を要望。
武見厚労相は、マイナ保険証について、慈恵医科大学附属病院における活用事例や高額療養費の手続き簡素化に明確な効果があるなどのメリットを発信していくとした。
加藤内閣府特命担当相
「要望」踏まえ議論深める
加藤鮎子内閣府特命担当相への「要望書」の提出は、丸川氏、田畑氏、橋本氏が参加し、佐野副会長、伊藤常務理事も同席した。
丸川氏は加藤特命担当相に「要望書」を手交した後、健保組合・健保連の現状や各種の課題、事業の概況を説明。
田畑氏は、少子化対策の財源として目されている支援金制度について、「健保連の声を踏まえ、国でしっかりとしたルールを定めてほしい」と要請した。
佐野副会長は、「健保組合・健保連の重点要望」に則して、健保組合・健保連の主張を説明し、理解を求めた。
加藤特命担当相は、「医療保険者を巻き込んだ大きな取り組みとなる」と改革の動向を見通したうえで、皆さんの要望を踏まえつつ、新たな枠組みの構築に向け議論を深めていくと応じた。