健保ニュース
健保ニュース 2023年11月上旬号
健保組合の安定的な運営確保へ
自民党皆保険議連 制度改正や財政支援を要望
少子化策など政府に申し入れ確認
自民党の「国民皆保険を守る国会議員連盟」(鈴木俊一会長)は10月24日、参議院議員会館で第7回総会を開催した。議連として提言する「令和6年度予算編成および制度改正に対する要望(案)」を議論し、取り扱いを丸川珠代幹事長に一任したうえで取りまとめた。要望書は、この日の総会で健保連から聴取した「健保組合・健保連の重点要望」を踏まえた内容で、①少子化対策②令和6年度診療報酬、介護報酬等の同時改定に向けて③マイナンバーカード・保険証を基盤とした医療DXの推進④健康保険組合が保険者機能を発揮するための更なる財政支援拡大─の4点が柱。健保組合の健全かつ安定した運営体制を確保するため、▽少子化対策財源は全世代で支え合うこと▽国民、患者・利用者、事業主の負担を考慮した改定とすること─などを要望。マイナ保険証利用促進など、国策の推進にもつながる健保組合の取り組みに対して必要な財政支援を講ずるよう訴えた。要望書は、近く政府に申し入れる。
「国民皆保険を守る国会議員連盟」は、この日の会合で、当面の政策課題をテーマに健保連からヒアリングを実施し、質疑応答・意見交換を行った。
会合には議員58名、代理を含めて約140名が出席した。
開会のあいさつで鈴木会長は、「人口構成が変化するなかで、医療保険制度は様々な課題に直面している」との認識を表明。
健保組合は、令和4年度決算見込みで全体の4割が赤字を計上し、今後見込まれる高齢者医療拠出金の増大を踏まえると、組合財政は大変厳しい状況にあると述べ、保険料率の法定上限に達する組合が多くなり、解散して協会けんぽに移行するような深刻な事態への危機感を露わにした。
さらに、今日的な課題として、マイナンバーカードと保険証の統合により、健保組合に新たな事務負担が生じることを懸念した。
このため、健保連からの要望をもとに、当面の政策課題に対する議連としての考え方を整理したいとの意向を示し、出席議員に活発な議論を求めた。
続いて、佐野雅宏副会長は、提出した資料に則し、5年度の健保組合財政について、高齢者拠出金が前年度比2443億円(7.2%)と急激に増加し、保険給付費の高い伸び(6.6%)も影響して、収支は3600億円の赤字に転落すると想定。6年度以降は、毎年増加する拠出金により、さらなる財政悪化を見通した。
そのうえで、健保組合・健保連の重点要望として、(1)少子化対策関係(2)R6診療報酬・介護報酬同時改定関係(3)マイナンバーカード・健康保険証を基盤とした医療DXの推進(4)予算への要望(令和5年度補正予算・6年度政府予算)─を説明した。
このうち、(1)は、「支援金制度(仮称)の創設」と「医療保険者を通じた財源の拠出」について、▽被用者保険の加入者のみならず、国保の加入者や後期高齢者にも負担を求め、全世代で拠出する▽社会保険から拠出する主旨や理由づけを国が示し、一般・介護とは別勘定とし、拠出額を明確にする▽国が被用者保険者一律の負担割合(率)を設定する等、被保険者・事業主への説明責任を国が負う(組合会議決事項の対象外)─ことの3項目を要望。
あわせて、介護納付金についても新たな拠出金と同様に説明責任を国が負うこととし、組合会議決事項の対象外とするよう訴えた。
他方、現役世代の負担軽減の観点から、「後期高齢者現役並み所得者への公費投入」や医療・介護における「保険給付範囲や自己負担の見直し」など、「歳出改革の徹底」を要求。財政全体の見直しや税を含めた財源のあり方についての検討を求めた。
(2)は、▽医療・介護等の適切な役割分担と円滑な連携▽かかりつけ医機能の強化▽病床機能の分化・強化と連携の推進▽長期収載品等の自己負担を含む保険給付のあり方の見直し─を要望。患者・利用者、国民、事業主の負担を考慮した改定を実施するよう求め、薬価改定で生じた財源は国民に還元すべきと強調した。
(3)は、▽加入者情報の正確性を担保するための事務・費用負担▽保険者が円滑に遂行するために新たに必要となる事務やシステム改修等の負担▽正確な情報の迅速な登録のための電子申請の拡大▽マイナ保険証利用促進のための取り組み─が保険者に求められるとした。
さらに、(4)は、▽4年度経常収支は全体の4割(559組合)が依然赤字▽5年度は保険給付費の高い伸びや拠出金の反動増で大幅赤字の見込み▽6年度以降、毎年増加する拠出金によりさらなる財政悪化が見込まれる─などの状況を踏まえ、Ⅰ高齢者医療運営円滑化等補助金等、現役世代負担軽減措置の確実な実行Ⅱ確実かつ円滑なマイナンバーカード・保険証の一体化に向けた財政支援Ⅲ職域を通じた少子化対策推進への財政支援─を強く訴えた。
Ⅱは、国を挙げた周知広報等の施策が必要とし、保険者としても関係者と連携したさらなる周知広報を強化するための支援を国に要望。
また、Ⅲは、健保組合として「少子化対策」を進めるために必要な財政支援を求めた。
質疑応答では、出席した議員から、「保険者サイドからの促進と同時に、厚生労働省から医療現場にマイナンバーカードの運用が進むよう後押ししてほしい」などの意見が多数あがった。その後、議連としての要望書の取りまとめが提案された。
要望書は、「令和6年度予算編成および制度改正に対する要望」と題し、①少子化対策②令和6年度診療報酬、介護報酬等の同時改定に向けて③マイナンバーカード・保険証を基盤とした医療DXの推進④健康保険組合が保険者機能を発揮するための更なる財政支援拡大─を柱とする。
①は、少子化対策の財源は国民すべての世代で支え合うことや、「支援金制度(仮称)」の創設にあたって徹底した歳出改革を前提に現役世代の実質的な負担増とならない仕組みを講じることを要望。介護保険の保険者ではない健保組合が徴収している介護保険料(介護納付金)の位置づけ見直しも盛り込んだ。
②は、限りある財源のなかで医療・介護等の役割分担と連携、かかりつけ医機能の強化、病床機能の分化・強化と連携の推進等に取り組むとともに、国民、患者・利用者、事業主の負担を考慮した改定とすることと明記した。
③は、安心・安全で効率的・効果的な質の高い医療を実現する医療DX推進の基盤となるマイナンバー制度への理解醸成とマイナ保険証の利用促進は不可欠と強調。
一方、来年秋の保険証廃止にあたっては種々の課題があるとし、マイナ保険証利用のメリット等の周知広報を重要視したほか、継続的な登録情報のチェック、資格確認書の交付等、健保組合の新たな事務負担に必要な支援・配慮を講じるよう求めた。
④は、医療DXの基盤となるマイナ保険証利用促進のための周知広報活動の拡大や確実かつ円滑な事務遂行、職域を通じた少子化対策の拡充など、国策の推進にもつながる健保組合の取り組みに対して、必要な財政支援を講ずるべきとした。
要望書に対し、出席議員から反対意見はなく、丸川幹事長に取り扱いを一任したうえで了承した。
厚生労働省や財務省、こども家庭庁など、関係省庁に近く申し入れる予定だ。