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健保ニュース 2023年10月下旬号

全世代型へ改革の方向性を提言
経団連 税と社会保障を一体改革
グランドデザインの提示を

日本経済団体連合会(十倉雅和会長)は17日、「中長期視点での全世代型社会保障の議論を求める」と題する提言をまとめ、公表した。提言では、税・社会保障の一体改革を通じた全世代型社会保障の実現に向け、負担については社会保険料だけでなく消費税や所得税などの税を組み合わせて検討するよう求めた。

2020年から2045年にかけて、日本の総人口は1億2600万人から、約1700万人減少し、1億900万人となることが見込まれている。15歳から64歳までの生産年齢人口が大きく減少する一方で、65歳以上の割合は、2020年の28.6%から、2045年には36.3%まで増加し、高齢化が大きく進展。それに伴って政府の推計では、医療・介護のニーズが増加し、医療や介護などの社会保障給付費が、経済成長を大きく上回って増えると見込んでいる。

さらに、高齢者の負担に関しては、年金と後期高齢者医療、介護保険を合計した高齢者の社会保障給付(自己負担を除く)は82兆円にのぼり、このうち約6割(49.4兆円)を現役世代と企業の保険料で、約3割(26.5兆円)を公費でそれぞれ賄っているのに対し、高齢者の保険料は給付の約5%を賄うにとどまっていると問題提起。

こうした状況を踏まえ、提言では、成長と分配の好循環を実現する観点から、給付費の伸びを抑えつつ、どのように負担して給付費を賄っていくか、国民的な議論が必要との前提に立ち、「全世代型社会保障が実現し、成長と分配の好循環が実現すれば、わが国の懸案である少子化トレンドの反転にもつながる」とする改革の方向性を示した。

具体的な改革の内容としては、①医療②介護③社会の担い手を増やす④負担のあり方─をあげ、①では「入院医療・外来医療、それぞれの機能分化の徹底」、「国民皆保険の持続可能性の確保とイノベーションの推進の両立」などを提言。②では「介護DXによる生産性の向上」など、③では「被用者保険の適用拡大の推進、中長期的には第3号被保険者制度の見直し」、「企業における健康増進の取り組みを通じて生活習慣病の予防を促す」などを求めた。

④の負担のあり方では、これまで増税に対する国民の拒否感が強いことなどから、社会保障制度の財源をめぐる、税制を含めた総合的な議論が避けられてきたと指摘。今後、現役世代が急速に減少していくなか、現役世代や企業の社会保険料に依存していては、賃金引き上げの効果が減殺され、成長と分配の足かせになると訴えた。

このため、消費税や所得税、固定資産税といった様々な税と社会保険料の組み合わせによる税と社会保障の一体改革を通じて、全世代が負担能力に応じて負担するという、よりバランスの取れた負担の仕組みをめざすことが望ましいと強調。さらに中長期的な視点から、消費税率の引き上げは「有力な選択肢の1つ」との考えを明らかにした。

しかし、具体的な数値を伴った社会保障全般にわたる給付と負担のあり方については、将来の見通しを含めて示されていないことから、「コロナ禍を終え、30年にわたる経済低迷からの脱却のチャンスを迎えている今こそ、次の段階の議論を開始すべき時」と指摘し、「骨太方針2024」の議論が本格化する前までに、新たな将来見通しを提示するとともに、2025年度中に、税も含めた中長期の全世代型社会保障改革のグランドデザインを描くよう要望。

あるべき社会保障の将来像、給付と負担のあり方について国民的な議論を喚起するとともに、意識改革に取り組むよう政府に求めている。

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