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健保ニュース 2023年10月上旬号

財政審が6年度予算編成へ議論
建議へ社会保障など重点課題
現役世代 保険料負担上昇に歯止め

財務省の財政制度等審議会財政制度分科会(十倉雅和分科会長)は9月27日、令和6年度予算編成と今後の財政運営への考えを提言する「建議」の取りまとめに向けて、財政総論をテーマに議論した。今後、6年度予算編成への反映を視野に、11月を目途に取りまとめる「建議」を見据え、社会保障などを中心に各論の議論を進めていく。

この日の会合では、財政総論として、財務省から社会保障など6年度予算編成に向けた重点分野について説明があり、それにもとづき議論した。

財務省は、社会保障にかかる負担を現役世代の社会保険料負担でみると、現役世代の医療、介護、年金を合計した保険料率は報酬の3割を超える水準にあり、今後も継続的に上昇する見込みと指摘。

医療・介護の保険料率上昇を抑制する取組みを強化しないと、足元の構造的賃上げ等の動きを阻害するほか、中期的にも保険制度が持続できないおそれがあると問題提起した。

現役世代が負担する医療・介護保険料の上昇に歯止めをかけるため、必要な医療・介護を提供しつつ、給付費等の伸びを抑制するとともに、構造的賃上げを通じて雇用者報酬を増加させ、給付と負担のバランスをとることが必要とした。

制度の持続可能性を確保していくための医療・介護制度改革として、①保険給付の効率的な提供②保険給付範囲のあり方の見直し③高齢化・人口減少下での負担の公平化─を提言。

①は、▽公定価格の適正化(メリハリの効いた報酬・薬価改定)▽かかりつけ医機能が発揮される制度整備▽地域医療構想の推進▽経営情報のさらなる見える化▽医療DX─を具体的な改革として掲げた。

②は、▽薬剤自己負担の引き上げ▽介護保険の制度間の公平性等を踏まえた見直し(多床室の室料負担等)▽その他の保険給付範囲の見直し─に整理。

このうち、「薬剤自己負担の引き上げ」は、長期収載品等の自己負担の見直しをはじめ、OTC医薬品と同一の有効成分を含む医療用医薬品の保険給付のあり方の見直しや薬剤費の一定額までの全額患者自己負担、医薬品の有用性に応じた保険給付率設定を具体的に例示した。

③は、年齢ではなく能力に応じた負担として、▽介護保険の1号保険料のあり方、利用者負担の一定以上所得の判断基準の見直し▽金融所得・資産を勘案した公平な負担▽後期高齢者医療制度における「現役並み所得」の判定基準の見直し▽後期高齢者の窓口負担の原則2割負担─を改革事項に位置づけた。

他方、「経済政策(構造的賃上げ・投資促進の取組み)との整合性」などを6年度の診療報酬と介護報酬の同時改定における主な課題とし、▽現役世代の消費活性化による成長と分配の好循環の実現のため、配分のメリハリ付けを通じた国民負担増(現役世代の保険料負担増等)の最大限の抑制(国民への還元)▽医療・介護の給付の伸びと国民所得(総報酬)の伸びを同水準にして、保険料率の上昇傾向に歯止め─をめざすとした。

このほか、財務省は、医療の高度化等により医科診療所(入院外)における1受診当たりの医療費はほぼ一貫して増加し、診療所の収益率は構造的に病院より高いと指摘。報酬単価や分配のあり方などの見直しが必要と問題提起した。

委員からは、▽現役世代の負担抑制へ、医療や介護にマクロスライド的な仕組みを導入すべき▽医療費の1受診当たりの単価が上昇するなかで医療従事者の賃上げは十分可能である▽改定率をプラスとすることは政府の進める物価高対策と矛盾する─などの意見があった。

財政制度等審議会財政制度分科会の終了後に記者会見した増田寛也分科会長代理(日本郵政(株)取締役兼代表執行役社長)は、「6年度予算は平時回帰をどう実現していくかが一番のポイント」と言及。

同時改定については、「それぞれに異なる現場の実態を踏まえた形で報酬を考えていくことに尽きる」との認識を示した。

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