健保ニュース
健保ニュース 2023年9月下旬号
令和4年度・高額医療交付金交付事業
1千万円以上超高額レセ 過去最多の1792件
健保連は7日、厚生労働省内で記者会見を開き、「令和4年度高額レセプト上位の概要」を発表した。
それによると、患者1人当たりの1か月の医療費が1000万円以上の「超高額レセプト」は、前年度比275件増の1792件と過去最多を更新した。最高額は1億7784万6430円だった。また、2000万円以上の件数は、対前年度比66件増(41%増)の228件となり、医療費の高額化傾向を示す結果となった。
4年度は1億円以上の件数が9件あり、これらの傷病名はすべて「脊髄性筋萎縮症」で、その治療薬の高額医薬品「ゾルゲンスマ点滴静注」の投与によるもの。
超高額レセプト上位100件を疾患別にみると、悪性腫瘍=79件(前年度比30件増)が最も多く、血液疾患=4件(同1件増)、その他=17件(同8件減)となっており、循環器系疾患と先天性疾患は0件(同22件減、同1件減)だった。悪性腫瘍が増加した理由は、白血病等がん治療薬の高額医薬品「キムリア点滴静注」が元年5月に保険収載されたこと、また「ブレヤンジ静注」が3年5月に保険収載され使用されたこと等が要因としてあげられる。
健保連の高額医療交付金交付事業は、高額医療費の発生による健保組合財政への影響を緩和するため、昭和50年度に任意事業として創設。56年度からは法定事業となり現在に至っている。
同事業は、各健保組合が拠出する「財政調整事業拠出金」(標準報酬年総額の千分の1.3相当)のうち千分の1.0(ただし、平成28年度から特例として千分の1.1)に相当する額を財源に、全健保組合の共同事業として運営されている。
令和4年度は、3年11月~4年10月診療分(過年度分を含む)のレセプトのうち、1か月の医療費が交付基準である150万円(人工腎臓を実施している慢性腎不全、血友病などの特定疾病は100万円)を超える高額レセプトを対象に事業を実施した。
その結果、1369組合から申請があった18万9850件を対象に約1047億円を交付。前年度(35万6387件、約1289億円)に比べ、件数は16万6537件、46.7%減少し、交付金額は約242億円、19%減少した。これは医療費の高額化の影響により、4年度事業で交付基準の引き上げ(一般:120万円→150万円、特定疾病:40万円→100万円、100%交付部分:400万円超→500万円超)を行ったことによるもの。
なお、4年度も拠出金収入(交付財源)を上回る申請があったため、500万円以下部分は交付率75%(前年度は400万円以下に52%)を乗じ、500万円超部分は交付率を乗じず100%交付した結果、全体では平均82%の交付率となっている。
金額階級別の交付件数は、▽40万円超200万円未満=9万4767件(前年度比64.12%減、申請全体の49.9%)▽200万円以上300万円未満=5万6338件(同1.72%増、同29.7%)▽300万円以上400万円未満=1万7884件(同5.29%増、同9.4%)▽400万円以上500万円未満=8697件(同1.23%増、同4.6%)▽500万円以上1000万円未満=1万372件(同5.64%増、同5.5%)▽1000万円以上2000万円未満=1564件(同15.42%増、同0.82%)▽2000万円以上=228件(同40.74%増、同0.12%)─で、特に1000万円以上の件数の伸びが顕著だった。