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健保ニュース 2023年9月中旬号

厚労省が4年度概算医療費を公表
前年度比4%増の46兆円
コロナ禍前比で1.8%増

厚生労働省は1日、「令和4年度医療費の動向」を公表した。医療保険と公費負担医療分の4年度概算医療費は前年度比4%増の46兆円で、3年度から1.8兆円増えた。新型コロナウイルス感染症に伴う患者の受診控えで同3.1%減少した2年度概算医療費の反動や、コロナ患者数が増えた影響で過去最大を更新した。単価に相当する1日当たり医療費と患者数に相当する受診延日数はそれぞれ同2.0%上昇。1人当たり医療費は同4.5%、1万6千円増えた。他方、コロナの影響の少なかった元年度概算医療費と比べても1年当たり換算で1.8%増加しており、今後の動向が注視される。

医療保険と公費負担医療分の医療費を集計した概算医療費は、労働災害や全額自費の診療を含まない速報値で、国民医療費の約98%に相当する。

概算医療費の動向をみると、29年度42.2兆円(前年度比2.3%増)、30年度42.6兆円(同0.8%増)、令和元年度43.6兆円(同2.4%増)、2年度42.2兆円(同3.1%減)、3年度44.2兆円(同4.6%増)と推移してきた。

診療報酬改定、薬価改定の影響を除くと、高齢化や医療の高度化により毎年2%程度、伸びる傾向となっていたが、2年度は新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴う受診控えなどにより、概算医療費は前年度比3.1%、1.4兆円減少した。

その反動や通常の医療費の増加に伴い、3年度の概算医療費は同4.6%、2.0兆円増加。
 4年度は、2年度の減少の反動や、新型コロナウイルス感染症の患者数が増えた影響等があり、概算医療費は同4.0%、1.8兆円増と3年度に引き続き高い伸び率となった。

一方、新型コロナの影響が少なかった元年度と比べると5.5%増加し、1年当たり換算では1.8%の伸び率となる。厚生労働省は、「コロナ禍前の年2%程度と比べると、そこまで高くはない状況であり、医療費の伸びが戻ったと考えるのはまだ早計」と説明した。

医療機関を受診した延患者数に相当する「受診延日数」は、人口減少に伴い平成28年度以降、マイナス1%弱の伸びで推移し、令和2年度は新型コロナの感染拡大の影響で前年度比8.5%減と大幅に低下。同3.3%増に反転した3年度に引き続き、4年度は同2.0%増となったが、元年度と比較すると3.6%減で、受診控えの影響は一定程度残る。

これに対し、医療費の単価に相当する「1日当たり医療費」は、平成28年度以降、同2~3%程度の伸びで推移し、令和2年度は重度な患者の比重が大きくなったことで同5.9%に上昇。新型コロナの影響で3年度は同1.3%増、4年度は同2.0%増(元年度比9.4%増)とさらに増え、医療費全体の伸び率は同4.0%増となった。

厚労省は、4年度概算医療費の▽人口増の影響(前年度比0.4%減)▽高齢化の影響(同0.9%増)▽診療報酬改定等(同0.94%減)─を除いた伸び率は同4.5%増、休日数等補正後の伸び率は同3.9%増になるとした。

4年度概算医療費は、対前年度比、対元年度比とも全診療種類別で増加した。
 一方、受診延日数は入院(同1.1%減)と歯科(同0.2%減)で減少する一方、入院外(同3.1%増)と調剤(同4.4%増)は増加。

1日当たり医療費は入院(同4.0%増)、入院外(同3.1%増)、歯科(同2.8%増)は3%程度増加し、調剤(同2.6%減)のみ減少した。

元年度と比較すると、受診延日数は、▽入院7.6%減▽入院外3.2%減▽歯科4.8%減▽調剤0.6%減─で、いずれの診療種類別も減少した。

他方、1日当たり医療費は、いずれの診療種類別も増加。入院外(13.0%増)の伸び率が最も大きく、歯科(12.0%増)、入院(11.0%増)、調剤(2.4%増)と続いた。

4年度の1人当たり医療費は前年度比4.5%増の36.8万円で、同1.6万円増加。年齢階層別にみると、未就学者が前年度に引き続き同10.9%(元年度比12.6%増)と10%を超える伸びを示す一方、75歳以上は受診控えが影響し、同1.8%増(同0.4%増)の伸び率にとどまった。

厚労省は、主傷病がCOVID─19であるレセプトを対象に4年度の医科医療費を集計すると、8600億円程度となることを明らかにした。新型コロナ患者数の増大で、3年度の4500億円から2倍近く増加し、医療費全体の1.9%を占めた。

被用者保険の医療費は
前年度比6.4%増に

75歳未満の医療保険適用分は、前年度比3.2%増の25.8兆円で、このうち被用者保険が同6.4%増の15.0兆円(全体の32.7%)、国民健康保険が同1.0%減の10.7兆円(同23.3%)で、国保は3年度の同3.7%増から減少に反転した。

75歳以上の医療保険適用分は、同5.3%増の18.0兆円(同39.1%)。公費負担医療は、同2.3%増の2.2兆円(同4.8%)となった。

被用者保険は、1人当たり医療費が19.4万円で同6.6%増、加入者数が同0.1%減(本人同1.2%増、家族同2.1%減)の7756万人となった。

加入者数の増減に反し、医療費の伸び率は本人の同6.6%増に対して、家族は同6.9%増と大きく増加した。

国保は1人当たり医療費が被用者保険の2倍を上回る38.9万円で、同2.7%増加。被用者保険への移行と高齢化により加入者数は同3.6%減の2759万人となり、医療費の伸び率は減少に転じた。

被用者保険と国保を合わせた未就学者は、1人当たり医療費が同10.9%増の24.5万円、加入者数は同3.9%減の579万人。医療費の伸び率は同6.5%増で、3年度の同18.4%増に引き続き増加した。

75歳以上の医療保険適用分は、加入者数が同3.4%増の1881万人に増加し、1人当たり医療費は同1.8%増の95.6万円。加入者数の増加が医療費(前年度比5.3%、0.9兆円増)を押し上げた。

医療費全体の構成割合は
医74%、歯7%、調17%

診療種類別にみると、医科は前年度比4.5%増の34.3兆円で、入院が18.1兆円(前年度比2.9%増)、入院外が16.2兆円(同6.3%増)となった。

歯科は同2.6%増の3.2兆円、調剤は同1.7%増の7.9兆円、訪問看護療養は同18.0%増の0.51兆円だった。3年度に引き続き、いずれの診療種類別もプラスの伸び率となった。

医療費の構成割合は、医科74.4%(入院39.4%、入院外35.3%)、歯科7.0%、調剤17.1%、訪問看護療養1.1%で、入院が最も多くを占めたが入院外との差は3年度から縮小した。

入院は受診延日数が同1.1%減の4.3億日、1日当たり医療費が同4.0%増の42.1千円。入院外は受診延日数が同3.1%増の15.6億日、1日当たり医療費が同3.1%増の10.4千円で、入院は受診延日数が減少し続ける反面、1日当たり医療費は2年度(前年度比2.7%増)、3年度(同3.9%増)のように、毎年伸び率が上昇している。

病院の1施設当たり医療費は同3.4%増の30億2804万円で、大学が同4.0%増の210億8051万円、公的が同3.5%増の59億5819万円、法人が同2.7%増の19億3464万円、個人が同2.2%増の7億5617万円。いずれも3年度に引き続き増加した。

診療所の1施設当たり医療費は同7.7%増の1億1143万円で、皮膚科(同2.1%減)を除き、いずれも増加。産婦人科は同41.7%増で、前年度(同5.0%増)から大幅に上昇しており、厚生労働省は、「4年度診療報酬改定で導入された不妊治療の保険適用が影響した」と説明した。

また、小児科(同30.2%増)と耳鼻咽喉科(同20.2%増)は3年度に引き続き大きな伸び率を示した。

歯科は、受診延日数が同0.2%減の4.0億日、1日当たり医療費が同2.8%増の8.1千円。1施設当たり医療費は、歯科病院が同3.5%増の1億111万円、歯科診療所が同3.0%増の4623万円だった。

調剤医療費の74%が薬剤料
後発品数量割合84%に上昇

調剤医療費の構成割合は、技術料が前年度比5.8%増の2兆1264億円(全体の27.1%)、薬剤料が同0.2%増の5兆6908億円(同72.6%)、特定保険医療材料料が同2.8%増の161億円(同0.2%)で、薬剤料が依然、7割超を占める。

薬剤料の内訳をみると、全体の8割を占める内服薬が同0.6%減の4兆4988億円に減少。注射薬は全体の9%程度にとどまるが、同9.7%増と大きな伸び率を示した。後発医薬品の薬剤料は、同1.2%減の1兆1256億円となった。

処方箋1枚当たり調剤医療費は年齢とともに高くなり、最も高い80歳以上85歳未満(1万922円)は0歳以上5歳未満(3414円)の約3.2倍となる。

内服薬の処方箋1枚当たり薬剤料は同4.9%減の5389円で、これを分解すると、▽処方箋1枚当たり薬剤種類数が同0.0%増の2.76剤▽1種類当たり投薬日数が同0.4%減の27.9日▽1種類1日当たり薬剤料が同4.5%減の70円─となり、処方箋1枚当たり薬剤種類数を除き減少した。

内服薬を薬効分類別にみると、その他の代謝性医薬品8237億円、循環器官用薬の7166億円、中枢神経系用薬の6511億円、腫瘍用薬の5775億円が高く、腫瘍用薬は伸び率が同10.6%増と大きい。

後発品の数量割合は、令和4年度末時点で83.7%となり、3年度末の82.1%から1.6ポイント上昇した。

後発品数量割合が80%以上の薬局の割合は78.4%で、3年度末に比べ4.9ポイント上昇。都道府県別にみると、沖縄県が90.4%で最も高く、東京都が80.2%で最も低かった。

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