健保ニュース
健保ニュース 2023年9月上旬号
東北ブロック共同事業Web研修会
後期支援金減算組合による事例発表
事業展開など意見交換
健保連青森・岩手・宮城・秋田・山形・福島の6連合会は8月22日、東北ブロック共同事業Web研修会を開催した。各連合会の会場をネットワークで結び、後期高齢者支援金減算にかかる事例報告として、山形銀行、山形県自動車販売、きらやかの3健保組合がそれぞれの取り組みについて、発表した。各連合会の会場には、健保組合の役職員や専門職など63名が参加。事例発表の後、オンラインでの質疑応答に加え、会場ごとに参加者同士でグループディスカッションを行い、後期高齢者支援金減算に向けた事業の展開など、活発な意見交換が行われた。
健保連では、全国にある健保連の各都道府県連合会について「1県1連合会」を基本とし、連合会の組織強化に向け検討を行うとともに、試行事業として東海、近畿、中国地区をモデルに地区における事業の共同化にも取り組んでいる。
平成15年度に全国の地区ごとに設置されていた地区協議会が廃止されたが、東北地区では、研修事業を中心に活動を継続。昨年度には、これまでの事業や運営体制を見直すとともに、東北地区の全健保組合を対象にしたアンケート結果をもとに、新たな事業の検討も行った。
その結果、令和5年度の新たな事業として、後期高齢者支援金の減算組合上位を占める山形県の取り組みの共有とDX推進を見据えたオンラインの研修体制─といった要望を取り入れ、好事例の横展開を目的としたWeb研修会を企画。6連合会連携の下で、共同事業として実施した。
県で一体的な取り組み推進
健保連山形連合会
健保連山形連合会の鈴木修事務局長は、「山形県の保健事業の状況」について発表した。令和3年度の後期高齢者支援金の減算対象保険者は、単一健保では全国1位に山形銀行健保組合(総合評価点数153点)、12位にきらやか健保組合(同132点)、総合健保では7位に山形県自動車販売健保組合(同120点)が該当し、山形県の健保組合が4年間連続ベスト10入りしている状況を説明した。
一方、鈴木事務局長は「この状況は健保組合に限ったことではない」と指摘。
保険者協議会がとりまとめた令和2年度の山形県全体の特定健診受診率は、▽健保組合では、全国平均と比べ、14.8ポイント高い92.7%▽協会けんぽでは、同21.9ポイント高い74.2%▽市町村国保では、同13.5ポイント高い47.2%─。
特定保健指導実施率は、▽健保組合では、全国平均と比べ、34.2ポイント高い61.2%▽協会けんぽでは、同7.0ポイント高い23.0%▽市町村国保では、同19.4ポイント高い47.3%─だった。
鈴木事務局長は、県内の保険者の水準が全国平均よりも高い要因のひとつに、多くの委託機関が、特定健診当日に初回面談が実施可能となる体制を構築していることをあげ、「県内4つの地区に対し、委託機関の配置が最適化されているのではないか」と考察した。
保険者協議会では、アンケートで寄せられた、▽健診当日に指導ができる県内とできない県外では、終了率に大きな差が出る▽後日指導は利便性が悪く受ける人が少ない▽健診当日に指導可能な委託先にシフトすべき─といった各保険者からの意見を踏まえ、集合契約の委託機関に体制整備を要請。
鈴木事務局長は、各保険者の課題を共有することで共通の目的を持ち、保険者全体で課題解決が図られるような保険者協議会の体制を取り組みのヒントとして紹介した。
被扶養者の受診率向上へ
山形銀行健保組合
山形銀行健保組合の安達祥子保健師は、「特定健診・特定保健指導の取り組み」を発表した。
同健保組合は、令和3年度の特定健診受診率が99.6%(被保険者100%、被扶養者98.2%)に達する。安達保健師は、「全体の受診率アップには被扶養者の受診率向上が必要」と述べる一方で、以前は被扶養者の大半が「去年受けたから」「かかりつけ医で血液検査を受けたから」など健診への意識が低かったと振り返った。
定期健診が根づく被保険者に比べ、被扶養者の受診率は特定健診制度の開始前は5割程度だった。「自身の健康のためにも、被保険者が元気に働くためにも家族が元気でいることが大事」というメッセージとともに、年1回の受診を促すアプローチを続け、受診勧奨を繰り返した結果、受診率が上昇。平成28年度以降は見直しを行った。
まず、被扶養者宛ての健診案内を被保険者の職場で回覧し、受診を募る方法から、対象の被扶養者1人1人に封書で案内を送付する方法に変更した。
次に、案内文書を見直し、健診や受け方を整理。▽主婦ドック▽個別契約▽集合契約▽パート先等の勤務先─の中から選択し、受診予定の報告を取る方法に変更した。また、令和元年度からは、受診者の多い「主婦ドック」の自己負担を上限1万円に引き下げた。
見直し効果により、さらに受診率がアップし、平成30年度には受診率は98.1%まで上昇。コロナ禍でいったんは低下したものの、現在は回復している。
安達保健師は、受診しないケースを作らないよう、報告書に受診できない理由を書いてもらうのがポイントと説明。日程変更にも快く応じ、キャンセルさせない姿勢が肝要と強調した。
他方、同健保組合の令和3年度の特定保健指導の実施率は88.4%(被保険者92.3%、被扶養者72.0%)にのぼる。
山形県のスキームを活用しつつ、被保険者には出勤扱いで継続的支援ができるよう所属長宛てに配慮願を提出する、被扶養者には特定保健指導に該当したら必ず受診することを要件に健保組合が費用負担するなどの取り組みを実施していると紹介した。
適正受診・服薬を促す試み
山形県自動車販売健保組合
山形県自動車販売健保組合の加藤稔常務理事は、「Web医療費通知の取り組み」を発表した。
同健保組合は、医療費通知を年4回、ジェネリック差額明細を年1~2回の頻度で紙媒体により通知していたが、令和3年12月からWeb化を図った。
加藤常務理事は、ID・パスワードで利用でき、データ更新時は直接、被保険者に「医療費更新のお知らせ」メールが送信されるWeb通知の利便性を説明する一方、利用者数が伸びないといった課題があったと述べ、課題解決に向け、①健診結果・重症化リスク表示②適正受診・適正服薬─にかかるお知らせ機能を追加し、8月からサービスを拡充する方針を示した。
①は、10年分の健診結果が表示可能となり、受診勧奨基準値を超える未受診者にはメッセージを表示する。②は、レセプトデータを活用し、適正受診を促すために「頻回受診」「重複受診」「時間外受診」を、適正服薬を促すために「重複投薬」「多剤服薬」「併用禁忌」を通知する。いずれも一目でわかりやすいアイコンを使った画面構成で、健保組合からの個別通知も可能。
加藤常務理事は、「より被保険者が活用できる、被保険者により沿ったポータルサイトを確立することで健康増進を図りたい」と強調した。
成果につながる健康づくり
きらやか健保組合
きらやか健保組合の高橋浩行事務長は、「加入者に向けた健康づくりの働きかけ」を発表した。
同健保組合は、5年連続で後期高齢者支援金の減算対象保険者に該当。高橋事務長は、「総合評価指標「大項目6」では、①運動習慣②食生活の改善点③こころの健康づくり④喫煙対策事業⑤インセンティブを活用した事業の実施─を全項目で実施している」と述べ、具体的な内容と成果を説明した。
①では、スマートフォンアプリによるウオーキング大会や山形連合会との野外ウオーキング大会の共同実施に加え、母体企業とのコラボヘルス事業として事業所の階段への健康標語の表示を展開。②では、健診項目への「推定食塩摂取量」の追加や自動販売機への糖分量表示等を実施する。こうした取り組みにより、健康スコアリングレポートでは、「歩行または同等の身体活動を1日1時間以上実施している者の割合」は平成31年から2.1ポイント改善、「脂質異常症のリスク保有者の割合」は同2.4ポイント減少。糖尿病リスク保有者の割合はヨコバイだが、上昇を抑制している。
④では、事業所敷地内禁煙を実施し喫煙率は平成21年度から17.2ポイント減の11.4%。健康スコアリングレポートの「喫煙習慣リスク」では良好な状態であることを示す「最上位」と評価されるなど、成果につながる健康づくりを推進している。