健保ニュース
健保ニュース 2023年9月上旬号
保険資格データ未登録で厚労省
保険者に11月中の作業要請
佐野副会長 さらなる取り組み推進
社会保障審議会医療保険部会(田辺国昭部会長)は8月24日、マイナンバーカードと健康保険証の一体化をテーマに議論した。厚生労働省は、保険資格データが未登録である被用者保険と国保組合の加入者が、全体の約1%弱に相当する約77万人存在する状況を公表。11月末を目途に保険資格データの登録作業を行うよう、被用者保険と国保組合の保険者に要請した。健保連の佐野雅宏副会長は、「健保組合にもマイナンバーの未登録者が相当数いる状況については、真摯に受け止めている」と言及。今後、事業主、管理者に対する働きかけを強化し、さらなる取り組みを進めていく意向を示した。
社保審医療保険部会は8月24日、「マイナンバーカードと健康保険証の一体化」をテーマに議論した。
この日の会合では、厚生労働省が、①「マイナンバーカードと健康保険証の一体化に関する検討会」最終とりまとめ等②マイナンバー制度およびマイナンバーカードに関する政策パッケージ③オンライン資格確認における登録データの正確性の確保─について説明した。
このなかで、①は、マイナ保険証の利用シーンの拡大として、オンライン資格確認の義務化対象外の医療機関等を受診する際などに、▽マイナ保険証と合わせてスマートフォンを携行し、受診時にマイナポータルの被保険者資格情報を提示▽マイナ保険証と「資格情報のお知らせ」や、このお知らせを容易に携帯して利用しやすくする工夫をしたものを一緒に提示─することで、受診可能とする取り組みを提案した。
③は、保険者資格データが未登録である医療保険加入者について、被用者保険および国保組合では、6月の登録事務強化前からの未登録者が8月段階で、加入者全体の0・8%となる約64万人、登録事務強化後の未登録者約13万人と合わせて約77万人(加入者全体の0.96%)となることを明らかにした。
厚労省は、未登録者が生じる主な要因を、▽資格取得時にマイナンバーの提出がなく、届出情報(漢字・カナ氏名、生年月日、性別、住所)も住民基本台帳情報と一致しないため、保険者でJ-LIS照会を行ってもマイナンバーが取得できない▽就職・転職による健康保険の資格取得時に保険者でのデータ登録の手続き中である▽海外在住者や入国直後でマイナンバーが付番されていない─場合に整理。
今後の対応として、被用者保険、国保組合の全保険者に対し、9月から順次、未登録者にデータが未登録であることを周知し、11月末を目途に未登録者から提出されたマイナンバー等の登録作業を行うよう要請した。
このほか、厚労省は、一部負担金割合の表示が本来の負担割合と異なる事案を、オンライン資格確認結果と(1)保険証の負担割合相違(2)レセプトコンピュータの表示の相違─と整理し、(1)はシステム仕様の問題や正しい事務処理手順が踏まれていなかったことが原因と指摘した。
このため、保険者等に対し、負担割合の相違が判明して中間サーバー等の負担割合を修正した事象について調査を実施。9月上旬に調査結果がまとまり次第、公表する予定とした。
健保連の佐野雅宏副会長は、「最終的にはマイナンバーカードの保険証利用の一本化をめざしていることを基本に据えて、取り組みを進めていく」と強調し、3点についてコメントした。
1点目は、「マイナ保険証利用のメリットを実感してもらえる仕組みづくり」で、佐野副会長は、「マイナンバーカードの保険証利用のメリットを国民、医療関係者、保険者等に広く理解してもらうことが極めて重要」と指摘。その1例として健診結果を踏まえた診療の推進を挙げ、「標準的な診療というようなめざし方もあるのではないか」との考えを示した。
2点目は、「資格情報のお知らせ」で、「加入者にマイナ保険証を安心して利用してもらうためにも大変重要」と発言。また、「資格情報のお知らせに記載されている記号番号は、健保組合の管理者にとって、あらゆる保健事業等で必要なものである」と評価し、マイナ保険証との携行など各保険者の裁量により活用の様式を認める方向で検討を進めるべきとした。
3点目は、「全件のJ-LISチェック」で、今秋に予定されている登録済みデータ全体を対象としたJ-LIS照会の進め方や「資格確認書」の運用を早急に明示するなど、保険者の事務負担を少しでも軽減できる形での検討を要請。全件J-LISチェックの費用等は基本的に国でカバーするよう要望するとともに、「資格確認書」の発行に関するシステム対応への財政支援を求めた。