健保ニュース
健保ニュース 2023年7月下旬号
フォーミュラリの作成・運用へ
厚労省 基本的な考え方を通知
対象に生習病治療薬など想定
厚生労働省は、令和4年度厚生労働科学特別研究事業が取りまとめた「フォーミュラリの運用について」を、地方厚生局や都道府県に7日付で通知した。管内の地域や医療機関・薬局で「フォーミュラリ」を作成する際の参考となるよう、関係者に対する周知を求めた。
医療機関等で医学的妥当性や経済性等を踏まえて作成された医薬品の使用方針を意味する「フォーミュラリ」については、政府の「骨太方針2021」で活用が盛り込まれたことを受け、後発医薬品も含む医薬品の適正使用に資する「フォーミュラリガイドライン」を策定することとしていた。
これまで、医療機関単位の「病院フォーミュラリ」といわれる採用医薬品リストとその関連情報が活用されている事例があったが、近年では地域の関係者が協働することで、地域レベルで「フォーミュラリ」を作成・運用している事例も見られるようになってきている。
他方、令和6年度から11年度の6年間を期間とする「第4期医療費適正化計画」の「基本方針」に、後発品の使用促進に向けた都道府県の施策として、「フォーミュラリに関する医療関係者への周知をはじめとした必要な取り組みを行うこと」が追記された。
今般、厚労省が通知した「フォーミュラリの運用について」は、地域でより良質な薬物療法を提供するために関係者が協働したうえで「フォーミュラリ」を作成・運用する際に参考となる基本的な考え方を提示することが目的。各医療機関で「病院フォーミュラリ」を作成・運用する際の参考として、本文書を活用することも可能とした。
地域の医師、薬剤師などの医療従事者とその関係団体の協働により、総合的な観点から最適と判断された医薬品が収載されている地域の医薬品集とその使用方針である「地域フォーミュラリ(以下フォーミュラリ)」の作成にあたっては、「行政機関や保険者などの関与も可能な限り検討すること」と明記。
また、「フォーミュラリ」の対象は、後発品(バイオ後続品含む)を有することも含め同種同効薬が多く存在する疾患領域の医薬品で、具体的な薬効群として「降圧薬」や「糖尿病薬」、「高コレステロール血症治療薬」といった生活習慣病治療薬、「抗ヒスタミン薬」などの抗アレルギー薬を想定した。
「フォーミュラリ」に採用する医薬品の選定に当たっては、薬効群ごとに列挙することとし、可能であれば推奨される順位を参考として示すことも求めた。
作成された「フォーミュラリ」は、地域の医療機関、薬局のほか、医師会、薬剤師会等の関係団体、行政等の関係機関に周知するとともに、地域の医療機関や薬局がその内容を理解して活用できるよう、丁寧に地域の関係者に対して説明を行う。
「フォーミュラリ」は、作成した後も最新の情報にもとづき適時適切に更新する必要があるとし、年4回の新薬、年2回の後発品における薬価収載などの時期に合わせて定期的に更新することや、診療ガイドラインの改訂など作成している疾患領域の薬物療法に変化が生じた際に更新することなどを想定した。
他方、「フォーミュラリ」の導入で薬物療法の質に与える効果や影響を定量的に評価することが望ましいとの観点から、「フォーミュラリ」を作成・更新する際は、評価のための指標と、それらの情報の収集・分析のための計画も合わせて設定することを求める。
さらに、「フォーミュラリの導入による薬剤費の適正化も重要な視点である」と指摘し、後発品の使用による適正化効果額の試算など、医療経済的な分析により具体的にどの程度の効果があったかを評価。
地域の行政機関や保険者、大学・研究機関の協力が得られれば、地域保健の情報やレセプト情報等を活用したより具体的な評価・分析が期待できるとした。