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健保ニュース 2023年7月下旬号

健保連・第523回理事会
宮永会長 健保組合の声を制度改革に反映
マイナ保険証の取り組みを支援

健保連は14日、第523回理事会を開いた。冒頭あいさつした宮永俊一会長は、健保組合の財政状況は決して楽観できるものではないと指摘。2025年以降、現役世代を取り巻く環境は一層厳しくなり、残された課題は山積する状況のなか、健保組合の声を制度・政策に反映すべく、活動を展開していくと強調した。他方、マイナンバーカードと健康保険証の一体化について、加藤勝信厚生労働相を訪問し、意見交換を行ったことを報告。健保組合の取り組みをサポートしていくと言及したうえで、質の高い医療の実現や医療費適正化を推進するために、正確なデータ登録への協力を求めた。保険者機能を発揮し様々な保健事業に取り組みながら加入者の健康を守ってきた健保組合、先人から受け継いだ世界に誇る国民皆保険制度を守るための制度改革に、健保連会長として取り組んでいく決意を表明した。(宮永会長の発言要旨は次のとおり。)




理事会の開会にあたり、一言あいさつ申し上げる。
 さて、ここ3年以上の間、社会・経済に大きな影響を与えてきた新型コロナウイルスの感染症は、5月8日から、法令上の位置づけが2類相当から5類に移行された。

これを受けて、日本各地では、観光客の賑わいとともに国内外へのいろいろなビジネスの往来も増え、平時の日常が戻ってきていると実感される今日この頃だ。

また、今年の春闘では、およそ30年ぶりとなる、高水準の賃上げが実現した。
 世界的な物価高騰や、人手不足など様々な要因が背景にあるが、企業が適切に賃金水準を上げていくことは、持続的な成長と分配の好循環を実現するうえで、大変重要なことだ。

新型コロナからの経済活動の再開やインバウンドの回復により、日経平均株価も、いわゆる「バブル景気」後の最高値を更新し、企業の景況感も改善しつつある。

賃上げのモメンタムを維持し、構造的な賃上げをこれからも実現することができれば、個人消費の拡大とともに、企業の成長に必要な人材確保にもつながり、従業員のエンゲージメントも高まるものと期待している。

こうしたなかで、今年5月には、参議院・本会議において「全世代対応型の持続可能な社会保障制度を構築するための改正健保法」が可決、成立した。

全世代で支える観点から、出産育児一時金の一部を、後期高齢者が支援する仕組みの導入や、後期高齢者の保険料負担割合の見直しなどが盛り込まれたほか、健保組合に対する円滑化等補助金の拡充や、財政支援の枠組みが拡充されるなど、われわれ健保組合・健保連が主張してきた「現役世代の負担軽減」も踏まえた内容であり、評価できるものと考えている。

一方で、被用者保険者間における格差是正の観点から、前期高齢者納付金の一部に報酬水準に応じた調整が導入されることとなった。

調整の範囲は3分の1となるが、現役世代の負担軽減という改革の趣旨を踏まえれば、これ以上の拡大は断じてあってはならない。

この点については、法案の国会審議や参考人質疑を通じて、健保連として、特に強く訴えてきた事項であり、その結果、参議院・厚生労働委員会の附帯決議において、「過重な財政調整とならないようにすること」ということが盛り込まれることとなった。

附帯決議には法的拘束力はないと言われるが、立法府の意思を示すものとして、大変重い決議であると受け止めている。

こうしたなか、健保組合の財政状況は決して楽観できるものではない。
 令和5年度の健保組合の予算早期集計では、全体の経常収支は5600億円を超える赤字であり、赤字組合は全体の約8割に達した。

新型コロナ感染による受診控えのその後の反動が大きく、保険給付費が保険料収入を上回る伸びとなったことや、いわゆる、団塊の世代が後期高齢者となりはじめ、高齢者医療への拠出金が急増したことが大きな原因だ。

また、今年に入っても、医療費は対前年度比で高い伸びを示しており、保険給付費、拠出金ともに、2025年、さらにその先にかけて、現役世代を取り巻く環境は一層厳しくなることは間違いない。

こうした状況にあって、残された課題はまだまだ山積しており、皆さんの生の声、現場の声を制度・政策に反映すべく、健保連は活動を展開していく。
 理事各位には、引き続き、ご理解・ご協力を賜りたく、よろしくお願い申し上げる。

6月には、こども未来戦略方針、骨太方針2023など、岸田政権の重要課題となる政策方針が閣議決定された。

社会保障制度については、ワイズ・スペンディングを徹底した保険料負担の上昇抑制、かかりつけ医機能が発揮される制度整備の着実な推進、健康づくり・重症化予防の強化やエビデンスにもとづく保健事業の推進など、われわれと考え方を同じくする方向性が記された。

また、マイナンバーカードと保険証の一体化の関係では、「来年秋の保険証廃止の方針」が明記された。

足元では、異なるマイナンバーが登録された事例が複数確認され、健保組合の現場では、登録データのチェックなどに取り組んでいることと思う。

私も先般、加藤厚生労働大臣のもとを訪問し、マイナンバーカードと保険証の一体化は、国家や国民のためになるという大きな視点から育てていくことが大切であると訴えた。

また、健康福祉面の充実に欠かせない医療DXを推進するためにも、われわれ健保組合は全力で取り組んでいくので、来年秋のマイナンバーカードと保険証一体化の実現とともに、課題の整理、事業主を含む社会全体への働きかけなどの支援をお願いした。

加藤大臣からは、「本施策は国民にとって大きなメリットがあり、将来に向かって実現すべきDX施策の入口である。デジタル化に伴う問題については、今後しっかりと改善されていくことを期待する。また、課題その他について、関係者が皆で共有して進めていくことが大切である。厚労省としてもできる限り支援するので、健保組合各位にはご苦労を掛けるが、ご理解をいただき、しっかり取り組んで欲しい」との話があった。

健保連としても、皆さんの取り組みを連合会全体としてサポートしていくので、業務多忙のなか、大変な苦労かと思うが、質の高い医療の実現や医療費適正化を推進するためにも、正確なデータ登録への協力をよろしくお願いする。

そのほか、少子化対策では今後3年間の「加速化プラン」として、様々な施策が盛り込まれた。

少子化対策は、全世代で取り組むべき喫緊の課題であるが、その財源の取り扱いについては、社会保険の賦課・徴収ルートを活用する案も出されており、議論の行方を注視していかなければならない。

先日、日経ビジネスにおいて健保組合の特集記事が組まれた。
 「健保沈没」という、ややショッキングなタイトルで、ご覧になられた方も多いと思う。
 健保組合の厳しい現状から、先進的な保健事業に取り組んでいる組合や加入事業所と組んでコラボヘルスを推進している事例まで、一般の方にもわかりやすい記事になっており、全体的にはわれわれの活動をサポートしてくれる内容になっている。

私自身もインタビュー取材を受けたが、そのなかでは、このまま現役世代への過重な負担が続けば、若い世代を中心に制度に対する不信感が高まってしまうのでないか、そうならないためには、社会の構成員全体で、納得できる制度を模索し、社会的なコンセンサスを醸成していくことが重要であるという趣旨のことを話した。

日本の国民皆保険は、世界でも類を見ない、本当に心温まる仕組みの制度だ。
 私たちは、先人たちから受け継いだこの素晴らしい制度を守り、そして、より良い制度にしていく責任がある。

保険者機能を発揮して、様々な保健事業に取り組みながら加入者の健康を守ってきた健保組合、そして、世界に誇る皆保険制度を守るため、私も健保連会長として、取り組んでいく。

保険者機能を発揮して、様々な保健事業に取り組みながら加入者の健康を守ってきた健保組合、そして、世界に誇る皆保険制度を守るため、私も健保連会長として、取り組んでいく。
 引き続き、皆さんのご理解・ご協力を賜りたくお願い申し上げる。

本日は、令和4年度の事業報告、決算関係、5年度の変更予算案が審議の中心となるが、これにとらわれず、活発な意見の交換をお願いする。
 はなはだ簡単ではあるが、これにて開会のあいさつとする。

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