健保ニュース
健保ニュース 2023年7月中旬号
中医協が入院医療テーマに議論
病棟機能の分化・促進など論点
松本理事 次期改定で病床再編加速を
中央社会保険医療協議会(小塩隆士会長)は5日、令和6年度の次期診療報酬改定に向けて、入院医療をテーマに議論した。
この日の会合では、厚生労働省が、①急性期②回復期③慢性期─入院医療の課題と論点を提示した。
このうち、①は、2025年を期限とした地域医療構想に向けた取り組みとともに、急性期病棟と地域包括ケア病棟のさらなる機能分化の促進を課題に位置づけたうえで、個々の患者の状態に応じて適切な医療資源が投入される効率的かつ質の高い入院医療の提供を推進するための評価のあり方を論点として示した。
また、②は、▽急性期治療を経過した患者の受け入れ▽在宅で療養している患者等の受け入れ▽在宅復帰支援─の3つの役割を担うこととされている「地域包括ケア病棟」に求められる役割やその評価のあり方および回復期リハビリテーション病棟における質の高いリハビリテーションを推進するための評価のあり方を論点として提示。
③は、療養病棟入院基本料の経過措置(注11)を届け出ている病棟が減少しているなか、療養病床の医療法施行規則における看護師等の員数等についての経過措置が6年3月31日で終了すること等を踏まえ、長期にわたり療養が必要な患者に対する適切な入院医療の評価のあり方を論点とした。
このほか、厚労省は、在院日数に応じた3段階の定額報酬を設定しているDPC/PDPSの評価や、日帰りと4泊5日までの手術等を包括的に評価する短期滞在手術等基本料を入院医療におけるその他の取り組みとして示した。
健保連の松本真人理事は、「6年度の次期診療報酬改定は地域医療構想が想定した2025年を目前に控えた改定である」と言及したうえで、「前回改定の効果を十分に検証し、より踏み込んだ対応で病床再編を加速させるべき」と主張。
急性期入院医療は、前回改定後に急性期一般入院料1における重症度、医療・看護必要度の該当患者割合が低下していることについて、「病床過剰の可能性も含め、背景を詳細に分析する必要がある」と指摘した。
慢性期入院医療は、療養病床の人員配置標準にかかる経過措置の有効期限が6年3月31日までにも関わらず、「療養病棟入院基本料の経過措置病床が引き続き残ることはあり得ない」と強調。経過措置病床を終了したうえで、在宅病棟の役割分担を含む医療療養病棟の評価のあり方に関する議論を進めるべきとの考えを示した。
短期滞在手術等基本料については、適切に外来で手術が実施されるよう必要な対応を検討するべきとした。
診療側の長島公之委員(日本医師会常任理事)は、「急性期病棟と地域包括ケア病棟の機能分化を促進するために、診療報酬で強引に誘導していくやり方は、かえって現場の医療機関や患者に混乱を招くことになる」と主張し、促進策は実態や影響も踏まえ慎重に検討するべきとの見解を示した。
来年3月までとされている療養病棟入院基本料の経過措置については、現場や入院中の患者に混乱が生じないような形でのきめ細やかな対応を要望。
短期滞在手術等基本料は、「改定のたびに対象を拡大してきたが、今後も実態にもとづく見直しという視点が重要だ」と訴えた。