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健保ニュース 2023年6月下旬号

データヘルス、特定健診等説明会
6年度開始 次期計画へ方向性やポイント

健保連は9日に東京都文京区の文京シビックホールで、「第3期データヘルス計画及び第4期特定健診・特定保健指導に向けた説明会」を開いた。厚生労働省や有識者らが、令和6年度に次期計画がスタートするデータヘルス計画および特定健診・特定保健指導の方向性や計画策定のポイントなどを説明した。説明会はこのたびの東京会場を含め全国7会場で開催するほか、後日、動画配信も行う。

冒頭あいさつした健保連の伊藤悦郎常務理事は、「健保組合の強みは母体企業と連携し、他の保険者より先進的で卓越した保険者機能を発揮できていることだ」と主張。説明会の内容を活用し、新たな医療や健康情報基盤など、社会構造の変化を先取りした取り組みを進めることを求めた。そのうえで、「しっかりと目に見える形で実績をあげ、その成果を加入者や事業主に実感していただけることをめざしていきたい」と所信を述べた。

次期データヘルス
事業の標準化を推進

次に古井祐司氏(東京大学未来ビジョン研究センターデータヘルス研究ユニット特任教授/自治医科大学客員教授)が「保険者データヘルスが目指すこと」と題して講演した。

古井氏は、元年度の健保組合における保健事業実施率を▽喫煙対策55.1%▽生活習慣改善事業37.6%▽健康教室19.4%▽医療機関への受診勧奨63.2%─などと示し、各職場に応じて保健事業を組み立てること、その前提としてそれぞれの健保組合の特徴を見直すことを求めた。

第3期の主な改訂ポイントを、▽共通の評価指標による標準化▽共同事業および成果連動型民間委託契約方式による事業(PFS)▽データヘルス・ポータルサイトの分析結果や健保組合の取り組み事例の掲載─などと整理。第3期データヘルス計画が始まる背景には、データヘルスの標準化、人的資本投資といった大きな流れがあると指摘し、健保組合に対し▽データヘルスの標準化の先導▽保健事業の方法・体制の標準化▽事業主のコラボヘルスの意義を高める─といった役割を期待した。

第3期データヘルス計画の見直しについては、厚生労働省保険局保険課課長補佐の岩間太一郎氏が説明した。

第2期後期に、評価指標の標準化と保健事業のパターン化に関する政府方針を踏まえ、健保組合共通の評価指標を導入。事業成果の高い保健事業のパターンを抽出し、ガイドラインを作成するなどの見直しを行ってきたことを説明した。

これらに加えて、第3期は「第3期データヘルス計画に向けた方針見直しのための検討会」の取りまとめ(5年3月)を踏まえ、5年9月に公布、施行を予定する保健事業指針の改正について、▽財政上の制約や既存のエビデンスレベルなどを勘案した保健事業の優先順位づけ▽共通評価指標の概要の新規記載─などと改正方針を紹介した。

データヘルスのプラットフォームとなるポータルサイトについては、3年度から運営を担っている社会保険診療報酬支払基金から分析評価部統計情報課課長の石井淳史氏が出席し、第3期に向けて今後実装予定の変更点、機能改善などを説明した。

変更点は、健保組合の保健事業の実施計画入力時に主要事業の一部項目をプリセットしておくことで、データヘルス計画の標準化・パターン化を進めるとともに、入力負担の軽減につなげる。また、健康課題と保健事業の紐づけの選択肢を第2期計画書のデータを踏まえて見直す。

機能改善は、▽外部委託事業者の検索・閲覧機能の実装▽業種・規模などの属性が似ている健保組合の取り組みの相互閲覧機能の実装▽総合評価指標の点数確認シートの画面デザイン向上─などを行うとした。

次期特定健診等と加減算
厚労省が見直しを解説

6年度から実施される第4期特定健診・特定保健指導にかかる見直しについては、厚労省保険局医療介護連携政策課医療費適正化対策推進室長の堤雅宣氏が、厚労省の各検討会での議論を踏まえ説明した。

特定健診は、▽喫煙・飲酒・保健指導の質問項目の変更▽健診項目の中性脂肪への随時採血の追加─など、特定保健指導は、▽成果を重視した特定保健指導の評価体制▽特定保健指導の見える化の推進▽ICT活用の推進─などを見直す。

堤氏は、行動変容にかかる情報収集・目標達成要因の検討によって、対象者の特性に応じた質の高い保健指導を対象者に還元する仕組みが重要だと指摘し、「特定保健指導の見える化」を推進していく方針を示した。

また、加入者のマイナポータルでの特定健診情報の速やかな閲覧に寄与するため、保険者は健診結果を受領してから1か月以内に閲覧ファイルを随時提出することが望ましいと言及し、「健保組合にぜひ対応をお願いしたい」と締め括った。

特定健診・保健事業の実績にもとづく第4期後期高齢者支援金の加算・減算制度については、厚労省の岩間氏が概要を説明した。岩間氏は、加算対象となる実施率の基準を、過去実績を踏まえ毎年設定されるように見直すことについて、「全体の実施率の伸びに連動した基準値となり、相対的に取り組みが遅れている保険者の実施率の底上げが期待される」と述べた。

減算要件は、総合評価指標の合計点数が上位20%に該当かつ総合評価指標の必須項目4つをすべて満たす保険者とし、合計点数に応じた5段階区分を設定。保険者の取り組みが公平かつ客観的に評価されるよう、データヘルス計画の共通評価指標等を減算指標に取り入れ、定量指標にもとづくNDB集計と保険者申告を用いて評価を行う。

岩間氏は、総合評価指標「大項目4」③「加入者の適正服薬の取り組みの実施」に所定の報告様式によって保険者から申告を受けるスキームを新設したと説明し、「ぜひ事例収集に協力願いたい」と要請した。

最後に登壇した健保連組合サポート部保健事業グループの平澤勇樹グループリーダーは、「第4期特定健診・特定保健指導の見直しでは、健保連の提案を踏まえ、特定保健指導にアウトカム評価が導入された」と報告。健保連と新潟連合会のモデル実施共同研究の成果を振り返った。

他方、今後は見直しの効果検証が必要との考えを示し、厚労省に要望していくとともに、健保連でも検証や分析を行い、エビデンスを提供する考えを示した。

このほか、データヘルス計画担当者を対象とした実務研修を8月下旬から10月にかけて5連合会主催で実施すると案内した。

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