健保ニュース
健保ニュース 2023年6月下旬号
政府が「骨太方針2023」の原案
社会保障関係費 歳出改革努力を継続
6年度の同時改定で必要な対応
政府は7日の経済財政諮問会議(議長・岸田文雄首相)に、「経済財政運営と改革の基本方針2023(骨太方針2023)」の原案を示した。与党との調整を経て、16日に閣議決定する。
財政健全化の「旗」を下ろさず、これまでの財政健全化目標に取り組むとし、中長期的な経済財政の枠組みの策定に向け、経済・財政一体改革の進捗について令和6年度に点検・検証を実施するとともに、経済再生と財政健全化の両立の枠組みなどの検討を進める方針を示した。
さらに、6年度予算編成に向けては、本方針に加え、「骨太方針2022」および「骨太方針2021」にもとづき、経済・財政一体改革を着実に推進すると明記。社会保障関係費の伸びは高齢化による増加相当分におさめるなど、これまでと同様の歳出改革努力を継続する。
持続可能な社会保障制度の構築に向けては、「少子化対策・こども政策の抜本強化」にもとづく対策を着実に推進。現役世代の消費活性化による成長と分配の好循環を実現していくためには、医療・介護等の不断の改革によりワイズスペンディングを徹底し、保険料負担の上昇を抑制することが極めて重要と強調した。
すべての世代で能力に応じて負担し支え合い、必要な社会保障サービスが必要な者に適切に提供される全世代型社会保障の実現に向けて、改革の工程の具体化を進めていくと明記。これらにもとづき、最新の将来推計人口や働き方の変化等を踏まえたうえで、給付と負担の新たな将来見通しを示すものとした。
医療・介護サービスの提供体制は、今後の高齢者人口のさらなる増加と人口減少に対応し、限りある資源を有効に活用しながら質の高い医療介護サービスを必要に応じて受けることのできる体制を確保する観点から、医療の機能分化と連携のさらなる推進やデジタル技術の著しい進展に対応した改革などを早期に進める必要があると指摘。
このため、都道府県の責務の明確化等に関し必要な法制上の措置を含め地域医療構想を推進するとともに、かかりつけ医機能が発揮される制度の実効性を伴う着実な推進、医療法人等の経営情報に関する全国的なデータベースの構築を図る。
また、保険者、都道府県、医師、薬剤師など関係者・関係機関の必要な取り組みを検討し、リフィル処方の活用を進める対応を盛り込んだ。
医療DX推進本部が策定した「工程表」にもとづき、「診療報酬改定DX」による医療機関等の間接コスト等の軽減を進めるほか、電子処方箋の全国的な普及拡大に向けた環境整備や標準型電子カルテの整備等を着実に実施するとした。
創薬力の強化に向けたイノベーションの評価など、さらなる薬価上の措置を図る一方、長期収載品等の自己負担のあり方の見直しなどを推進。また、OTC医薬品の拡大に向けた検討によるセルフメディケーションの推進、バイオシミラーの使用促進、後発医薬品等の安定供給確保と産業構造の見直しを図る。
介護保険制度では、「介護保険料の上昇を抑えるため、利用者負担の一定以上所得の範囲の取り扱いなどについて検討を行い、年末までに結論を得る」との方針を明示した。
令和6年度の次期診療報酬・介護報酬・障害福祉サービス等報酬の同時改定に向けては、「物価高騰・賃金上昇、経営の状況、支え手が減少するなかでの人材確保、患者・利用者負担・保険料負担の抑制の必要性を踏まえ、必要な対応を行う」と明記し、効果的・効率的に対応する観点から検討を行うとした。
勤労者皆保険の実現、年齢や性別にかかわらず働き方に中立的な社会保障制度を構築するため、次期年金制度改正を視野に、企業規模要件の撤廃など短時間労働者への被用者保険の適用拡大、常時5人以上を使用する個人事業所の非適用業種の解消等を検討する。
また、いわゆる「年収の壁」への当面の対応として、被用者が新たに106万円の壁を超えても手取りの逆転を生じさせない取り組みの支援などを本年中に決定したうえで実行。制度の見直しにも取り組むとした。
6年度予算編成に向けては、4年度から6年度までの3年間について、これまでと同様の歳出改革努力を継続し、社会保障関係費の伸びは高齢化による増加相当分におさめる方針を明示した「骨太方針2021」にもとづき経済・財政一体改革を着実に推進する考えを示した。
なお、「骨太方針2023」の原案は、「少子化対策・こども政策の抜本強化」の「加速化プランの推進」の箇所の記述はペンディングとし、政府の「こども未来戦略会議」が13日に取りまとめる「こども未来戦略方針」の内容を踏まえ、追記する。