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健保ニュース 2023年6月上旬号

政府が少子化対策財源のあり方
こども未来戦略会議 新たな負担の枠組み検討
徹底した歳出の見直し前提

政府は5月22日に開催された第4回こども未来戦略会議(議長・岸田文雄首相)に、「こども・子育て支援加速化プラン」を支えるための安定財源のあり方を提示した。徹底した歳出の見直しを前提として、企業を含む社会・経済の参加者全体が連帯し、公平な立場で広く支え合っていく新たな枠組みの検討が必要と指摘。現行のこども・子育て政策が、各種保険制度や事業主拠出金、公費で支えられていること等を踏まえ、議論を進めていく方針を示した。岸田首相は、「消費税を含めた新たな税負担は考えていない」と明言したうえで、次回会議で「こども未来戦略方針」の素案を示す意向を表明した。

この日の会合では、こども・子育て政策の強化に向けて、政府が、①「総合的な制度体系」を支える給付と負担の「見える化」②「加速化プラン」を支える安定的な財源のあり方─を主な論点として提示し、議論した。

このうち、①は、こども・子育て政策を抜本的に強化するための予算や財源のあり方を検討するに当たって、将来的には現行制度全体を見直し、「総合的な制度体系」の構築をめざしていくことが必要と指摘。

令和6年度から8年度を集中期間として、▽ライフステージを通じた子育てにかかる経済的支援の強化▽すべてのこども・子育て世帯を対象とするサービスの拡充▽共働き・共育ての推進─に取り組む「こども・子育て支援加速化プラン」の実施と、それを支える安定的な財源のあり方への国民的な理解を得ることをめざす。

このため、国民が給付と負担の全体像を分かりやすいようにする新たな会計の仕組みを構築することが重要と提起。また、「加速化プラン」の実施に当たり、効果検証を行いながら、政策の内容をさらに検討することが必要との考えを示した。

さらに、②は、安定的な財源の確保に当たり、現役世代の負担軽減や、企業の賃上げ原資の確保にも資するよう、全世代型社会保障を構築する観点から、徹底した歳出の見直しを行うことで、公費財源の確保や保険料負担の抑制を最大限図る。

それを前提として、企業を含む社会・経済の参加者全体が連帯し、公平な立場で広く支え合っていく新たな枠組みを検討。

現行のこども・子育て政策が、各種保険制度や事業主拠出金、公費で支えられていることや、少子化対策は将来の労働力確保や社会保障制度の持続性に関わるものであることを踏まえ、「どのような新たな枠組みが適当と考えられるか」と問題提起した。

また、恒久的な施策には恒久的な財源が必要との観点から、こどもの世代につけを回さないよう、「加速化プラン」の実施が完了するまでの間、安定財源を確保すべきとの方向性を示した。

児童手当や育児休業給付など、こども・子育て予算の充実のための財源は、これまで、消費税率引き上げの増収分や事業主の子ども・子育て拠出金の増額のほか、社会保障関係費の歳出目安の下での歳出改革により確保してきた。

これに対し、「加速化プラン」に盛り込まれた▽所得制限の撤廃▽支給期間延長▽多子世帯への増額─を柱とする「児童手当の拡充」などの事業費として、新たに年間で約3兆円程度の財源が必要と見込まれている。

政府の全世代型社会保障構築会議が昨年12月16日に取りまとめた「報告書」は、「今後の改革の工程」について、「医療保険および介護保険における負担能力に応じた負担と給付の内容の不断の見直し」を2025年度までに取り組むべき改革項目として示しており、今後の歳出改革の動向が注視される。

構成員からは、▽安定的な財源確保のため、医療・介護分野など社会保障費の適正化・効率化を進めるべき▽企業の賃上げ努力に水を差すことがないよう、財源確保は加速化プラン実施完了までの範囲で柔軟に考えるべき▽高齢者も含めた全世代で財源を負担していくべき▽中期的な観点から全世代型社会保障のグランドデザインを示すことが先決で、税制を含めた財源のベストミックスを考えるべき▽新たな枠組みによる負担増は慎重なタイミングとすべき▽中長期的には税制も含めたあらゆる財源を検討すべき─などの意見があった。

岸田首相は、「大前提として、少子化対策財源確保のための消費税を含めた新たな税負担について考えていない」と言及し、財源について、▽何よりも徹底した歳出改革による財源確保を図るほか、既定予算を最大限活用する▽歳出改革の徹底等で国民の実質的な負担を最大限抑制する▽経済活性化、経済成長への取組を先行させる▽2030年までの少子化対策のラストチャンスを逃さず、強化された少子化対策は前倒しで速やかに実効に移す─の4つの方向性を示した。

また、次回の会議では、これまでの議論も踏まえ、次元の異なる少子化対策を実行に移していくための「こども未来戦略方針」の素案を示し、取りまとめに向け検討を進めていく意向を表明した。

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