健保ニュース
健保ニュース 2023年5月合併号
令和5年度健保組合予算早期集計
過去最大経常収支5623億円の赤字
後期支援金は前年度比10%増
健保連は4月20日、厚生労働省内で記者会見を開き、令和5年度健保組合予算早期集計の結果を発表した。5年度の健保組合全体の経常収支差引額は、保険給付費や拠出金の増大に伴い、過去最大の5623億円の赤字となる見通し。赤字額は前年度予算の2805億円から倍増し、赤字組合は全組合の約8割に達する。平均保険料率は前年度予算比0.01ポイント増の9.27%で、協会けんぽの平均保険料率(10%)以上の組合は全組合の23%を占める。収支均衡に必要な実質保険料率は10.1%に上昇し、初めて10%を超えた。保険料収入の3%弱の伸びに対し、保険給付費は新型コロナの影響等で5%強に高止まる見込み。さらに、団塊の世代が75歳に到達し始め、後期高齢者支援金が10%近く急増し、赤字額倍増の最大要因となった。佐野雅宏副会長は、「現役世代の負担軽減が最大の課題」との認識を示し、高齢者医療費の負担構造改革を強く訴えた。
保険給付費が高い伸び
全組合の8割が赤字に
令和5年4月1日現在の健保組合数は、前年比7組合減の1380組合で、5年度予算早期集計は、報告のあった1367組合の財政状況を推計したもの。
被保険者数は1668万4713人で前年度に比べ9万2643人(0.6%)増加。被扶養者数は1183万1552人で同22万8984人(1.9%)減少した。
保険料の基礎となる被保険者1人当たり平均標準報酬月額は38万4018円で、同6111円(1.6%)増加。平均標準賞与額は同4万3295円(3.9%)増の116万3361円だった。
平均標準報酬月額と平均標準賞与額は前年度から回復基調だが、新型コロナウイルス感染拡大前の元年度決算と比較すると、月額1.5%増、賞与額1.4%減となり、賞与は依然として低い水準のままとなっている。
経常収入の99%を占める保険料収入が8兆5038億円と、同2317億円、2.8%増加。経常収入は8兆6161億円で、同2295億円、2.7%の増加となった。
支出面をみると、保険給付費は同2475億円、5.5%増の4兆7820億円で、4年度予算の伸び率(前年度比5.5%増)に引き続き、依然、高い伸びとなっている。
4年4月~5年1月の健保組合における医療費は新型コロナ感染拡大等の影響で、前年同期比で医科7.3%増(入院外13.0%増、入院2.4%減)、調剤5.0%増と高い水準で推移。5年度以降も、新型コロナの感染拡大等の影響が不透明であり、変動が著しい医療費の動向に注視する必要がある。
他方、高齢者等拠出金は前年度に比べ2523億円、7.3%増の3兆7067億円で、4年度予算の一時的な減少(前年度比5.7%減)による反動から大幅に増加した。
特に、後期高齢者支援金は同1967億円、9.9%増の2兆1930億円へ急増。前期高齢者納付金は1兆5135億円(同557億円、3.8%増)だった。
団塊の世代が75歳に到達し始めることにより、6年度以降、後期高齢者支援金が毎年増加するなか、賃金引き上げによる保険料収入への効果が予測し難く、今後の財政影響が懸念される。
このほかの支出では、データヘルス計画等の健康維持・増進のための保健事業費に4580億円(同91億円、2.0%増)を計上し、経常支出全体では同5113億円、5.9%増の9兆1784億円。この結果、5年度予算の経常収支差引額は5623億円の赤字となった。
赤字組合は同130組合増の1093組合(全組合の79.2%)の一方、黒字組合は同137組合減の287組合(同20.8%)で、組合全体の約8割が赤字となった。
平均保険料率は過去最高
23%が協会けんぽ以上に
令和5年度予算における平均保険料率(調整保険料率を含む)は9.27%で、前年度に比べ0.01ポイント上昇し、過去最高を更新した。
被保険者1人当たり保険料負担額は同1万1101円増の50万9657円だった。
保険料率を引き上げた組合は135組合、引き下げた組合は98組合。協会けんぽの平均保険料率(10%)以上の組合は309組合で、全組合の22.6%を占める。
また、収支均衡に必要な財源を賄うための実質保険料率は、平均保険料率を0.83ポイント上回る10.10%(前年度比0.25ポイント増)となる見通しとなった。
義務的経費に占める拠出金
負担割合は44%超に上昇
法定給付費と拠出金を合わせた義務的経費に占める拠出金の負担割合は44.2%(後期高齢者支援金26.1%、前期高齢者納付金等18.0%)で、前年度の43.8%から0.4ポイント上昇した。
拠出金の負担割合が50%以上の組合は180組合となり、全体の13.2%を占めた。
介護保険料率1.78%
1人当たり年11.6万円
5年度予算の平均介護保険料率は、前年度に比べほぼ同率の1.78%で、1人当たり保険料負担年額は同1421円、1.2%増の11万6006円となった。
介護保険料率を引き上げた組合は130組合(全組合の9.5%)。また、設定保険料率が1.9%以上(告示による概算負担率)の組合は293組合で、全体の21.4%を占めた。