健保ニュース
健保ニュース 2023年4月下旬号
健保組合への財政支援など
健保法等改正案が衆院通過
岸田首相 保険適用も出産費負担ゼロ
健保組合への財政支援や支援金の後期高齢者負担率の見直しなどを盛り込んだ健保法等改正案が13日の衆院本会議で自民党、公明党などの賛成多数により原案どおり可決。参院に送付された。本会議で採決した前日の12日には、衆院厚生労働委員会に岸田文雄首相が出席し、締め括りの質疑を行った。その後、採決を行い、自民、公明両党などの賛成多数で原案どおり可決。立憲民主党、日本維新の会などは反対し、附帯決議は付されなかった。岸田首相は質疑のなかで、出産費用を保険適用にした場合でも出産育児一時金の考え方を踏襲し、平均的な費用をすべて賄う考えを示した。
法案の柱は、①こども・子育て支援の拡充②高齢者医療を全世代で公平に支え合うための高齢者医療制度の見直し③医療保険制度の基盤強化等④医療・介護の連携機能および提供体制等の基盤強化─の4項目。このうち①については、出産育児一時金にかかる後期高齢者医療制度からの支援金の導入を盛り込んだ。
衆院厚生労働委員会の審議終盤、政府が3月31日に「こども・子育て政策の強化について(試案)~次元の異なる少子化対策の実現に向けて~」を公表。このなかに出産費用の保険適用導入を検討する内容が盛り込まれたことをめぐり、法案との整合性を問題視する野党の委員が反発を強めていた。
12日の委員会採決にあたり、野党の委員は当日まで賛否を保留。反対するとなれば、附帯決議の採択も見送られる情勢だった。
質疑終局後の討論では、中島克仁氏(立憲民主党)、吉田とも代氏(日本維新の会)は、法案はかかりつけ医の要件が明確に定義されず、質疑を重ねても国民の不安が拭えない、出産費用の保険適用についても本法案に盛り込み議論すべきとし、法案の再提出を求め反対した。宮本徹氏(日本共産党)も高齢者へのさらなる負担増を理由に法案に反対。佐藤英道氏(公明党)は、出生数が80万人を下回る危機的な状況を脱却するためには、子育て世代を全世代で支える仕組みが必要と述べ法案に賛成した。
法案採決では自民、公明、国民の3党の賛成多数で可決した。立憲民主党、日本維新の会などは反対し、附帯決議は付されなかった。
岸田文雄首相は6月の「骨太方針」までに将来的なこども・子育て予算の倍増に向けた大枠を提示するとしている。参院の審議において、こども子育てにかかる財源論の進展に合わせた野党委員の対応や、現役世代の負担軽減に向けた見直しなどを踏まえた附帯決議の取り扱いが注目される。
なお、健保法等改正案は2月10日に閣議決定し、国会に提出。衆院における審議は、3月16日の本会議で趣旨説明と代表質疑を行い審議入りし、厚労委員会では、3月22日に趣旨説明があり、29日、4月5日の2日間の審議の後、12日に採決した。4日には健保連の佐野雅宏副会長ら5名を招致し、参考人質疑を行っている。
厚労委員会での審議時間は計19時間で、参考人質疑を加えると22時間10分だった。