健保ニュース
健保ニュース 2023年4月下旬号
こども未来戦略会議が初会合
骨太へ具体策の財源論に着手
岸田首相 全世代の理解と協力が不可欠
政府は7日、首相官邸で「こども未来戦略会議」(議長・岸田文雄首相)の初会合を開催した。3月31日に政府が取りまとめた「こども・子育て政策の強化」に関する「たたき台」を踏まえ、必要な具体策の内容や予算、財源のあり方の議論に着手。6月の「骨太の方針2023」を視野に同会議で会合を複数回開催し、税や社会保険料など将来的なこども・子育て予算を倍増するための財源も含め一定の取りまとめを行う。岸田首相は、「こども・子育て政策を強力に前進するため、世代や立場を超えた国民の理解と協力は欠かせない」と言及したうえで、迅速な議論を着実に進めていく意向を示した。
政府は3月31日、少子化傾向を反転させるために令和6年度から8年度の3年間で加速化して取り組む政策がめざす将来像を明示した「こども子育て政策の強化」に関する「たたき台」を取りまとめた。
「たたき台」は、▽若い世代の所得を増やす▽社会全体の構造・意識を変える▽すべての子育て世帯を切れ目なく支援する─の3点をこども・子育て政策の基本理念とし、いわゆる「106・130万円の壁」の見直しや児童手当の拡充、妊娠・出産・0~2歳支援を強化した伴走型支援などの施策を掲げる。
子育てにかかる経済的支援の強化をめざし、出産費用の見える化の効果を検証したうえで、8年度診療報酬改定での導入を視野に、正常分娩にかかる出産費用の保険適用を検討。児童手当は、所得制限撤廃や支給期間延長、多子世帯の手当額の見直しを図るなどの取り組みを盛り込んだ。
政府は、「たたき台」を踏まえ、今後、必要な政策強化の内容や予算、財源の議論を深めるため、全世代型社会保障構築本部の下に岸田文雄首相を議長とし、関係閣僚、有識者、子育ての当事者・関係者、関係団体が参画する「こども未来戦略会議」を立ち上げた。
被用者保険関係団体の日本経済団体連合会や日本労働組合総連合会、日本商工会議所の会長・会頭も有識者として参画する。
同会議は、少子化が深刻さを増し、静かなる有事とも言うべき状況のなか、社会経済の持続的な発展を実現し、社会保障制度や地域社会の維持を図るためにも、あらゆる政策手段を組み合わせて、従来とは次元の異なる少子化対策に取り組む。
政府が6月に策定する「骨太の方針2023」を視野に入れ、増税や社会保険料引き上げなど安定財源の確保も含む将来的なこども・子育て予算倍増の大枠を示せるよう、具体的な検討を深めていくとしている。
現時点で、児童手当の拡充など、こども・子育て政策の強化に必要な予算と特定の財源は決まっていないが、予算総額は年数兆円程度の規模が見込まれ、政府内では、その財源を労使折半の社会保険料への上乗せで確保する案の検討を求める考えも示唆されている。
その場合、現役世代の負担は相当程度、増加することとなり、こども・子育て政策の強化に向けた安定財源の確保のあり方が大きな論点となる見通しだ。
この日の初会合では、キックオフとして、こども・子育て政策に必要な政策強化の内容や予算、財源に関し、構成員から総論的な意見を聴取した。
構成員からは、▽恒久的・安定的な財源の確保が重要であり、広く社会全体で支え合うべき▽社会保障制度の持続可能性の面からは高齢者を含めた全世代で負担すること、経済的には幅広く企業負担を求めることに合理性がある─など、幅広い層に負担を求める意見があった。
一方、▽少子化対策の財源として社会保険料の負担を増やすことは現役世代の可処分所得の減少に直結する▽少子化対策に向けた財源の負担増で賃上げのモメンタムに水を差さないような形を考えるべき▽社会保障予算の適正化、効率化も進め、負担増を抑制すべき▽児童手当は真に必要な者に給付するなどメリハリや優先順位が肝要だ─など、負担増に否定的な見解も示された。
同会議は、6月の「骨太の方針2023」までに複数回の会合を開催し、安定財源の確保を含む「こども・子育て政策の強化」に関する一定の取りまとめを行う。