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健保ニュース 2023年4月中旬号

衆院厚労委が健保法改正案の参考人質疑
佐野副会長 前期報酬調整拡大抑止を要望

衆院厚生労働委員会(三ツ林裕巳委員長、自民)は4日、健保法等改正案について、健保連の佐野雅宏副会長をはじめとする5名の参考人から意見を聴取し、質疑した。

佐野副会長は、法案を①後期高齢者からの拠出を導入した出産育児一時金を全世代で支える仕組み②後期高齢者負担率の見直し③高齢者関係の保険料賦課限度額の見直し、所得割の比率の引き上げ④前期高齢者の医療給付費の財政調整(前期高齢者納付金)における被用者保険者間の報酬水準に応じた調整の部分導入─を盛り込んだパッケージと捉え、全体では健保組合に負担増になると言及。そのうえで、昨年12月の厚生労働相、財務相の大臣合意による被用者保険への財政支援の確実な実施を要請した。

法案に盛り込まれた内容のなかでも、④へ強い懸念を表明。今回の法案において3分の1とした報酬調整の範囲が拡大された場合、現役世代の負担はさらに拡大すると指摘した。特に保険料率の水準が中程度の健保組合に影響が大きく及び、財政が悪化すると訴えた。今回の法案の趣旨は現役世代の負担軽減だと指摘したうえで、報酬調整の範囲を3分の1でとどめるよう強調した。

さらに、現役世代の負担は、いわゆる団塊の世代がすべて後期高齢者に到達する令和7(2025)年にかけて増大するとして、さらなる見直しが必須だと主張した。具体的な対策として、▽後期高齢者窓口負担割合について、原則2割とするなどの、さらなる見直し▽後期高齢者医療制度における現役並み所得者の給付費への公費投入▽拠出金負担割合の上限設定─をあげた。

このほか、かかりつけ医機能が発揮される制度整備に向けて、国民がかかりつけ医を選択、活用しやすい体制づくりを構築するよう要請。法案に対する意見に加え、マイナンバーカードと健康保険証の一体化について、医療DXの基盤として「必ず通過しなければならないプロセスだ」と言及。利用促進へ向けた取り組みと政府の支援を求めた。

法案全体に対しては、少子化対策を全世代で支える仕組みや現役世代の負担増を抑制する見直しが盛り込まれ、人口減少に対応した全世代型社会保障の構築を見据えたものだとして、評価する考えを示した。

委員との質疑では、田中健氏(国民民主党)、池下卓氏(日本維新の会)、佐藤英道氏(公明党)、宮本徹氏(日本共産党)らが、佐野副会長に対し、現役世代の負担軽減など法改正による財政影響を中心に質問した。

佐野副会長は、後期高齢者支援金と介護納付金における報酬調整導入による健保組合の負担増の経緯を踏まえ、前期高齢者納付金の報酬調整が3分の1から仮に100%になった場合、負担額は単純計算で3倍程度に拡大すると指摘。そのうえで、現役世代の負担軽減につながる、後期高齢者の窓口負担割合や現役並み所得者への公費投入といった見直しの必要性を重ねて強調した。

なお、この日の参考人には、佐野副会長のほか▽草場鉄周氏(日本プライマリ・ケア連合学会理事長/北海道家庭医療学センター理事長)▽川崎真規氏(日本総合研究所リサーチ・コンサルティング部門上席主任研究員/シニアマネジャー)▽釜萢敏氏(日本医師会常任理事)▽伊藤周平氏(鹿児島大学法文学部教授)─が招致された。(佐野雅宏副会長の意見陳述要旨は次のとおり。)

今回の法案は、人口減少に対応した全世代対応型の社会保障制度の構築とそのなかで、すべての世代で公平に支え合う仕組みの強化をめざすものだと考えている。そのための法案の内容は、現役世代の負担軽減、世代間・世代内のバランス是正、負担能力に応じて全世代で支え合う仕組み、これら複数の課題をパッケージで改革するものと理解している。

この法案に対する健保連の基本的な考え方は、全世代が支える少子化対策として出産育児一時金の一部を後期高齢者が支援する仕組み、また、現役世代の負担上昇を抑制する観点で、後期高齢者負担割合の見直しといった内容が入っており、全世代型社会保障を見据えたものとして評価したい。

改革全体における健保組合の財政影響を私どもで試算した。今回の法案の内容ではないが、少子化対策として出産育児一時金の増額が決定されている。これに伴い健保組合全体で200億円の負担増となる。ただし、先般成立した令和5年度政府予算で、増額に伴う財政支援措置40億円を講じていただいている。これには感謝申し上げる。

今回の法案では、①出産育児一時金を全世代で支える仕組み②後期高齢者負担率の見直し③保険料賦課限度額の見直し、所得割の比率の引き上げ④前期高齢者にかかる財政調整の報酬水準に応じた調整─が盛り込まれている。全体でパッケージになるので、私ども現役世代から見た場合、財政影響にはプラスとマイナスのファクターがある。

世代間ということでは、①出産育児一時金を全世代で支える仕組みが、6年度に40億円のメリット。②後期高齢者負担率の見直しによって290億円のメリットがある。一方、世代内では、③保険料賦課限度額の見直し、所得割の比率の引き上げは、現役世代には影響がない。④前期高齢者にかかる財政調整の報酬水準に応じた調整は、健保組合全体で年間600億円程度の負担増になると考えている。

これらについて、プラスマイナスを評価した場合、法案だけでは、現役世代は負担増になる。負担増に対応する被用者保険への支援として、昨年12月に厚生労働相、財務相による合意を得て、430億円の財政支援を6年度から措置するとされている。これについては、現役世代に対するメリットを出すため、ぜひとも実行をお願いする。

今、申し上げたなかで、不安要素は、前期高齢者にかかる報酬調整だ。今回はその範囲を3分の1としているが、さらに進められた場合、現役世代の負担はさらに拡大する。

特に、今回の改正は、保険料率の水準が中程度の健保組合に対する影響が非常に大きく、財政悪化が懸念される。

現役世代の負担軽減という改革の趣旨を踏まえ、報酬水準の導入はあくまでも部分的なものとし、範囲は3分の1にとどめていただきたい。

さらに、今後を見据えると、いわゆる団塊の世代が後期高齢者に完全に到達する7(2025)年に、現役世代の拠出金負担はさらに増えるため、さらなる見直しが必要だ。具体的には、後期高齢者窓口負担割合のさらなる見直し、現役並み所得者の給付費に対する公費の投入、拠出金負担割合の上限設定といったことが課題となる。

いずれにせよ、国民皆保険制度の維持、確保のため、こうした取り組みが必要だと考えている。

かかりつけ医機能が発揮される制度整備は、もともとあった課題であり、それが新型コロナウイルス感染症禍により、さらに顕在化したと認識している。

高齢者だけでなく、現役世代を含め、全世代を対象とすべきだと考えている。健保組合としても、加入者の健康状態や健康に関する意識に応じて、かかりつけ医の活用を支援していきたい。

今回の改革は、まさに医療の質の向上につながる第一歩だと考えている。国民が自ら選択して、活用できる体制をつくることが重要となる。国民が選択しやすい状況、活用しやすい環境を整えていただきたい。保険者としても、加入者に対する支援強化の観点から期待している。

最後に、法案の内容ではないが、マイナンバーカードと保険証の一体化について話す。
 医療DXの推進は極めて重要で、賛成の立場だ。なかでもマイナンバーカードと保険証の一体化は、ベースとなるインフラで、必ず通過しなければならないプロセスだと考えている。

しかし、これまでの既存の健康保険証からの移行にあたり、実務面の課題が多いことも事実で、課題をいかに早く、スムーズにクリアするかがポイントだ。これを達成し、事業主の企業、保険者の業務負担軽減にもつなげていただきたい。

保険者として加入者、事業主に対し、マイナンバーを速やかに届け出るような働きかけをさらに強めていきたいが、「マイナ保険証利用促進にかかる意識変革・国を挙げての取り組み」も非常に重要だ。

政府、国民、保険者、医療関係者それぞれがメリットを理解し、利用促進に向けた取り組みを行うこと、そのための政府の支援をお願いしたい。

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