健保ニュース
健保ニュース 2023年3月上旬号
薬価収載時は複数の比較薬選定
中医協がコロナ高額薬の対応
特例再算定 年間市場規模千億円超に適用
中央社会保険医療協議会(小塩隆士会長)は2月15日の総会で、「高額医薬品(感染症治療薬)に対する対応」を決定した。
これを受け厚生労働省は、軽症~中等症Ⅰの新型コロナウイルス感染症患者の治療薬として令和4年11月22日に緊急承認された「ゾコーバ錠」の薬価収載手続きを進めていくとした。
「高額医薬品(感染症治療薬)に対する対応」は、既存のルールを基本としつつ、感染拡大等で急激に市場規模が拡大しうる「ゾコーバ錠」の特性から、①薬価収載時の対応②薬価収載後の価格調整(市場拡大再算定)③その他─の取り扱いについて、本剤に限った特例的な対応を整理した。
①は、本剤は薬価算定上の基準となる既収載品となる類似薬が存在することから、「類似薬効比較方式」により算定することとし、比較薬の算定は対象疾患の類似性(新型コロナウイルス感染症)と投与対象患者の類似性(重症化リスク因子の有無)のいずれを優先するかで算定薬価が大きく変動する特殊性に鑑みて、複数の比較薬を選定し薬価を算定。
具体的な薬価算定にあたっては、通常の手続きと同様、薬価算定組織で審議したうえで、中医協総会の了承を経て薬価収載を行うこととした。
薬価収載にあたっては、関連する学会ガイドラインである最新の「COVID-19に対する薬物治療の考え方」における本剤の取り扱いを踏まえた内容を保険適用上の取り扱いにかかる留意事項として通知。
本剤が適切な患者に限って投与されるよう、禁忌事項の確認を行うとともに、有効性・安全性に関する情報等についての文書による説明と同意取得が求められていることを明示する。
②は、年間販売額の推計は4半期ごとに直近1年間の推計データにもとづき判断することとし、薬価収載後1年間は収載からその時点までの期間の推計データをもとに年間販売額を算出して判断することとした。
推計データにもとづく再算定は、国民皆保険の持続可能性を確保する観点から、本剤の市場規模が高額になる場合に備えた措置として対応するものであることを踏まえ、既存の市場拡大再算定ルールのうち、年間販売額が極めて大きい品目の取り扱いにかかる特例(年間市場規模が1000億円超1500億円以下または1500億円超となる場合)に限り適用。
また、推計データにもとづき再算定を行う場合の引き下げ率の上限の取り扱いについては、「予測販売額によって影響が異なるものであり、引き下げへの激変緩和等も考慮したうえで、現行制度どおりにすることも含め慎重に検討する必要がある」ことから、薬価収載時に中医協総会で検討することとした。
このほか、③は、今後の感染動向や本剤の位置づけの変化などを踏まえ、本剤薬価に関してさらなる対応が必要となった場合、その取り扱いについて改めて中医協総会で検討すると明記。
パンデミックを来す感染症のような市場規模の推計が困難な疾患を対象とした薬剤における薬価算定方法等や緊急承認された医薬品の本承認時における薬価算定の方法等について、6年度の次期薬価制度改革に向けた課題として検討することとした。
健保連の松本真人理事は、「新型コロナの先行きは依然、楽観視できず、急激な財政インパクトも否定できない」と言及。
コロナ患者の発生状況と医療現場におけるゾコーバ錠の投与割合にもとづき市場動向を適宜適切に把握し、1000億円を超えた段階で速やかに特例再算定を適用することは不可欠との考えを示した。
再算定の引き下げ率や下げ止めについては、「医療保険制度は極めて厳しい状況にあり、まさに財政負担のあり方について国をあげた議論が行われているということもおさえておくべき」と指摘した。
特定保険医療材料
保険償還価格の訂正を
厚労省が中医協に報告
厚生労働省は、2月15日の中医協総会に、特定保険医療材料の保険償還価格の訂正を報告した。
保険償還価格に誤りがあったのは、①Niti-S EUS-BD②メディカーボ・ヒップネイルネイル③メディカーボ・ヒップネイルラグスクリュー─の2製品3品目で、厚労省は今後、官報正誤により、①は「29万円」を「28万9000円」②は「16万2000円」を「15万9000円」③は「3万6600円」を「3万8100円」─に告示価格を訂正する。
2製品3品目は、令和4年12月1日に保険適用を行ったが、類似機能区分比較方式による補正計算を行う過程で、償還価格に誤りが発生した。
厚労省は、再発防止に向けて、計算過程で複数の独立したチェック体制を整備するとした。
健保連の松本真人理事は、「実際に患者が使用した後で間違いが発覚したことは大変遺憾」と述べ、「チェック体制に問題があったと言わざるを得ない」と指摘。
そのうえで、同じことを繰り返さないよう、今回の事案を真摯に受け止め対応するよう厚労省に要請した。