健保ニュース
健保ニュース 2023年2月下旬号
中医協がコロナ高額薬で意見聴取
製薬業界 イノベーションの評価を主張
両側が再算定対象は千億円超
中医協の薬価専門部会は8日、高額医薬品(感染症治療薬)への対応について、日本製薬団体連合会、米国研究製薬工業協会(PhRMA)、欧州製薬団体連合会(efpia)から意見聴取を行った。
日薬連は、高額医薬品への対応は、国民皆保険の持続可能性の観点から現行の仕組みでの対応が困難な品目について、極めて限定的に行われるものとの認識を示し、「イノベーションの適切な評価」、「患者の早期アクセスの確保」、「企業の予見性の確保」を大前提として検討を進めるよう強く要望。
そのうえで、▽感染症治療薬の特殊性や当該企業の意見を踏まえ薬価を算定する▽再算定の対象は年間市場規模が1500億円超の場合に限る▽引き下げ率の上限など現行の市場拡大再算定の特例より厳しくなる方向で見直さない─などの薬価上の対応を主張した。
PhRMAは、市場規模の大きな品目への対応全般について、「保険財政への影響のみならず、感染症治療薬の特殊性やイノベーション推進を踏まえたバランスのとれた対応を行うべき」と指摘。
また、市場拡大再算定の適用に対し、「直近3か月の市場規模を4倍にして年間販売額を推計する方法は、過大推計となる可能性があるため、実際の年間販売額合計で再算定の適用を判断するべき」との考えを示した。
efpiaは、今回の方針は当該薬剤の対象疾患の特性等を踏まえ、本剤に限った対応とすべきとし、今後における同様の方針の適用は、グローバルにおける日本市場の位置づけや、イノベーションの評価の観点などから、「極めて慎重に判断すべき」と訴えた。
健保連の松本真人理事は、製薬業界のイノベーションの評価にかかる主張について、「新型コロナのように患者数が急激に拡大する疾病の場合、保険財政に短期間で極めて大きな影響がある」と言及。
そのうえで、「再算定で迅速かつ厳正な対応ができないならば、収載時の薬価でイノベーションを評価することも難しくなる」との考えを示し、保険財政が深刻な状況にあるなか、イノベーションの評価に一定の制約があることへの理解を求めた。
診療側の長島公之委員(日本医師会常任理事)は、「感染症治療薬は、その時々の状況を踏まえた柔軟な対応が必要であり、再算定も柔軟かつ迅速に行う対応に尽きる」と述べたうえで、「推計値で判断する本剤への特例再算定の対象は、年間市場規模が1000億円を超える場合に、ルールへの適用が必要」と強調した。
松本理事も、「特例再算定の適用は1000億円超を基準とし、引き下げ率と下げ止めは新型コロナが急拡大した場合の保険財政への影響を踏まえれば、特に厳しく対処すべき」との見解を示した。