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健保ニュース 2023年2月中旬号

複数の比較薬による薬価算定等
厚労省 コロナ高額薬対応の方向性
再算定引き下げ率・上限も論点

厚生労働省は、高額医薬品(感染症治療薬)に関する対応の方向性を整理し、1日に開催された中央社会保険医療協議会(小塩隆士会長)の薬価専門部会に提案した。

1月25日の薬価専門部会における委員の意見を踏まえ、軽症~中等症Ⅰの新型コロナウイルス感染症患者の治療薬として4年11月22日に緊急承認された「ゾコーバ錠」の①薬価収載時の算定方法②薬価収載後の価格調整─を論点として示した。

①は、類似薬効比較方式により対応する一方、比較薬の選定にあたっては、対象疾患と投与患者の類似性のいずれを優先するかで薬価算定が大きく変動する特殊性も鑑み、複数の比較薬にもとづき薬価を算定するなどの柔軟な運用を可能とする対応を提案。

具体的な薬価算定にあたっては、通常の手続きと同様に、薬価算定組織で審議したうえで、中医協総会で確認する。中医協総会では、算定方法のほか、「投与に当たっての留意事項」、「薬価収載後の価格調整(市場拡大再算定)」の取り扱いを示したうえで議論を行うこととした。

また、「ゾコーバ錠」の投与が必要・適切な患者に限って投与されるよう、留意事項通知で明示する対応も提案した。

②は、市場拡大再算定について、薬価調査やNDBに加え、COVID-19の感染状況、「ゾコーバ錠」の投与割合、出荷量等の情報により市場規模(販売額)を推計したデータにもとづき、市場拡大再算定、4半期再算定の適用を判断する対応を提案。

再算定を行う際は、通常の手続きと同様、薬価算定組織を経て中医協総会で了承を得る。医療機関等における薬価改定への対応に要する期間を勘案し、改定薬価の告示から適用までの期間は従来と同様、2~3か月程度の猶予期間を設けるとした。

さらに、▽薬価収載時の市場規模予測の設定▽収載後は4半期ごとに直近3か月間の市場規模を基本に年間販売額を推計▽年間販売額の推計が1000億円超、1500億円超になる場合は既存の特例にもとづく算定式で薬価の引き下げ額を計算▽3か月間のデータからの推計等を踏まえ、引き下げ率やその上限─のあり方を論点とした。

このほか、「ゾコーバ錠」は1年間の期限を付して緊急承認され、期限内に改めて承認申請が行われることから、承認後、速やかに中医協総会に報告し、審査結果等を踏まえ、改めて薬価を検討する対応を提案。

また、今後の感染状況や「ゾコーバ錠」の位置づけなどを踏まえ、さらなる対応が必要となった場合、その取り扱いについて中医協総会で改めて検討を行うこととした。

健保連の松本真人理事は、「ゾコーバ錠は、患者に有効性や安全性に関する情報を文書で説明し、文書で同意を得てから投与することが承認条件として推奨されている」と指摘し、全患者から文書による説明と同意を得る対応をルール化するよう要請した。

さらに、市場規模が1000億円や1500億円を超えた場合の特例再算定について、「保険財政は極めて厳しい状況にあり、迅速かつ適切に薬価を見直す観点から、下げ止めを適用しない対応も含め、引き下げ率の上限に厳しく対応すべき」との考えを示した。

診療側の長島公之委員(日本医師会常任理事)も、「3か月間のデータからの推計を超えて市場拡大する可能性や、市場拡大再算定を受けた品目は再々算定を受けるまで一定期間を要することも踏まえれば、引き下げ率の上限を引き上げる特例的な対応を検討してもよい」と言及した。

他方、厚労省に対し、緊急承認された医薬品の本承認における薬価の算定方法やパンデミックをきたす感染症のような患者数推計が困難な疾患に関する薬価算定方法について、6年度の次期薬価制度改革に向けた検討課題として対応するよう求めた。

薬価専門部会は、次回会合で、関係業界から高額医薬品(感染症治療薬)対応への意見を聴取する。

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