健保ニュース
健保ニュース 2023年2月中旬号
前期への1/3報酬調整の導入等
自民党厚労部会 健保法等改正案を了承
一部を除き6年4月1日に施行
自民党の厚生労働部会(田畑裕明部会長)は6日、前期高齢者給付費への1/3報酬調整の導入や、かかりつけ医機能が発揮される制度整備などを盛り込んだ「全世代対応型の持続可能な社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律案」の法案審査を行い、部会長一任で了承した。法案は、▽こども・子育て支援の拡充▽高齢者医療を全世代で公平に支え合うための高齢者医療制度の見直し▽医療保険制度の基盤強化等▽医療・介護の連携機能および提供体制等の基盤強化─を柱とし、関連する健保法、医療法等を一括改正。一部を除き令和6年4月1日から施行する。2月10日の国会提出をめざし、与党内の法案審査を進めていく。
出産育児一時金の支給費用
後期高齢者医療制度も支援
予算関連法案として2月上旬に国会へ提出する予定の「全世代対応型の持続可能な社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律案」は、①こども・子育て支援の拡充(健保法、船員保険法、国民健康保険法、高齢者の医療の確保に関する法律等)②高齢者医療を全世代で公平に支え合うための高齢者医療制度の見直し(健保法、高確法)③医療保険制度の基盤強化等(健保法、船保法、国保法、高確法等)④医療・介護の連携機能および提供体制等の基盤強化(地域における医療および介護の総合的な確保の促進に関する法律、医療法、介護保険法、高確法等)─を柱とし、一部を除き令和6年4月1日に施行する。
このうち、①は、出産育児一時金の支給費用の7%を後期高齢者医療制度も支援する仕組みへと見直す。高齢者負担の激変緩和の観点から、6・7年度の負担額は1/2とし、健保組合への財政影響は▲40億円となる。
また、6年1月1日から産前産後期間(4か月間)における国民健康保険料(税)を免除することとした(5年度予算関連)。
高齢者医療制度見直し等で
組合財政は▲120億円
②は、後期高齢者の医療給付費を後期高齢者と現役世代で公平に支え合うため、「後期高齢者1人当たりの保険料」と「現役世代1人当たりの後期高齢者支援金」の伸び率が同じとなるよう高齢者負担率の設定方法を見直す。
他方、前期高齢者給付費の財政調整について、被用者保険間では、現行の「加入者数に応じた調整」に加え、1/3の部分に「報酬水準に応じた調整」を導入。
合わせて、健保組合の負担をできる限り抑制するため、企業の賃上げ努力を促進する形で既存の支援を見直すとともに、さらなる支援を行う
具体的には、▽拠出金負担に対する特別負担調整(高齢者医療確保法第38条等)の拡充(100億円)▽健保組合の交付金交付事業(健康保険法附則第2条)への財政支援(100億円)▽高齢者医療運営円滑化等補助金の拡充(230億円)─の合計430億円の国費による支援を令和6年度から追加。
「拠出金負担に対する特別負担調整の拡充」は、後期支援金、前期納付金の負担が過大となる保険者の負担を全保険者と国費で軽減する現行の「特別負担調整(100億円)」への国費充当を200億円に倍増し、負担軽減の対象範囲を拡大する。
「健保組合の交付金交付事業への財政支援」は、高額レセプトの発生した健保組合を支援する高額医療交付金事業について、国費による財政支援を制度化。
「高齢者医療運営円滑化等補助金の拡充」は、前期納付金負担の割合・伸びに着目し、納付金負担が過大な保険者に対して補助金で支援する現行の「高齢者医療運営円滑化等補助金(既存分120.4億円、新規分600億円)」を拡充して支援を見直すほか、賃上げ等で一定以上報酬水準が引き上がった健保組合に対する補助を創設する。
高齢者負担率の見直し(▲290億円)、前期への1/3報酬調整の導入(600億円)、国費による追加支援(▲430億円)による健保組合全体の財政影響は▲120億円となる。
かかりつけ医機能報告
令和7年4月1日に施行
③は、令和6年度からの「第4期医療費適正化計画」について、計画に記載すべき事項を充実させるとともに、都道府県ごとに保険者協議会を必置として計画の策定・評価に関与する仕組みを導入。医療費適正化に向けた都道府県の役割および責務の明確化も行うとした。
計画の目標設定に際しては、医療・介護サービスを効果的・効率的に組み合わせた提供や、かかりつけ医機能の確保の重要性に留意することとした。
一部は、法案の公布日や7年4月1日に施行する。
このほか、経過措置として存続する退職被保険者の医療給付費等を被用者保険者間で調整する仕組みについて、対象者の減少や保険者の負担を踏まえ前倒しで廃止する。
④は、地域で必要な「かかりつけ医機能」を確保するため、▽医療機能情報提供制度の刷新(6年4月1日施行)▽かかりつけ医機能報告の創設(7年4月1日施行)▽患者に対する説明(7年4月1日施行)─などの制度整備を行う。
「医療機能情報提供制度の刷新」は、「かかりつけ医機能」を「身近な地域における日常的な診療、疾病の予防のための措置その他の医療の提供を行う機能」と定義し、国民・患者への情報提供の充実・強化を図る。
「かかりつけ医機能報告の創設」は、日常的な診療の総合的・継続的実施などの「かかりつけ医機能」について、医療機関から都道府県知事に報告を求める。
都道府県知事は、報告をした医療機関が「かかりつけ医機能」の確保にかかる体制を有することを「確認」し、外来医療に関する地域の関係者との協議の場に報告するとともに公表。合わせて、外来医療に関する地域の関係者との協議の場で、必要な「かかりつけ医」機能を確保する具体的方策を検討・公表する。
「患者に対する説明」は、都道府県知事による「確認」を受けた医療機関は、慢性疾患を有する高齢者に在宅医療を提供する場合など外来医療で説明が特に必要で患者が希望する場合に、「かかりつけ医機能」として提供する医療の内容について電磁的方法または書面交付により説明するよう努めることとした。
なお、医療機関が「かかりつけ医機能」の確保にかかる体制を有することの都道府県知事による「確認」について、厚生労働省は「処分が科される行政行為ではなく、事実行為である」ことをこの日の自民党・厚労部会で明示した。
2月3日の自民党・厚労部会では、「全世代対応型の持続可能な社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律案」の法案審査を行ったが、厚労省が都道府県知事による「確認」を「行政行為」と説明したため、了承に至らず、6日に再セットされていた。