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健保ニュース 2023年新年号

全社会議が「報告書」取りまとめ
医療制度など改革工程明示
介護 給付と負担見直しは先送り

政府の全世代型社会保障構築会議(清家篤座長)は12月16日、「報告書」を取りまとめ、同本部(本部長・岸田文雄首相)に報告した。「報告書」は、▽こども・子育て支援の充実▽働き方に中立的な社会保障制度等の構築▽医療・介護制度の改革▽「地域共生社会」の実現─の改革工程を明示。医療制度改革は、「被用者保険者間の格差是正」や「かかりつけ医機能を発揮するための制度整備」の内容を年内に固め、来年の次期通常国会に改正法案を提出する。他方、利用者負担のあり方など、介護制度の給付と負担の見直しは先送りする方針を決定。岸田首相は、人口減少・超高齢社会の課題を克服するための取り組みを着実に進めるよう各大臣に指示した。

全世代型社会保障構築会議は、令和3年11月に初会合を開催、12回にわたる議論を積み重ね、「報告書~全世代で支え合い、人口減少・超高齢社会の課題を克服する~」を取りまとめた。

「報告書」は、①こども・子育て支援の充実②働き方に中立的な社会保障制度等の構築③医療・介護制度の改革④「地域共生社会」の実現─の4分野における改革の方向性を示した。

2040年頃までを視野に入れつつ、足元の短期的課題とともに、当面の2025年や2030年をめざした中長期的な課題について、「時間軸」を持って取り組みを進めていくことを重要視。分野ごとに具体的な「今後の改革の工程」を提示した。

出産育児一時金を50万円
後期医療も一部費用を支援

①は、増加する出産費用の負担を軽減する観点から、出産育児一時金について、「来年4月から50万円に引き上げるとともに、出産費用の見える化およびその効果検証を実施すべき」と明記したうえで、「現役世代・後期高齢者の保険料負担額にもとづき、後期高齢者医療制度が出産育児一時金にかかる費用の一部を支援する仕組みを導入すべき」と提言した。

今後の改革の工程では、出産育児一時金の引き上げと出産費用の見える化等について、年内に内容を固め、5年度政府予算への反映や来年の次期通常国会への改正法案提出などを視野に入れる「足元の課題」に据えた。

また、「来年、早急に具体化を進めるべき項目」には、こども・子育て支援の充実を支える安定的な財源について企業を含め社会全体で連帯し公平な立場で広く負担し支える仕組みの検討や、児童手当の拡充など恒久的な財源の検討を盛り込んだ。

次期年金制度改正に向け
被用者保険の適用拡大検討

②は、勤労者が、その働き方や勤め先の企業規模・業種にかかわらず、ふさわしい社会保障を享受できるようにするとともに、雇用のあり方に対して中立的な社会保障制度としていく必要があるとした。

今後の改革の工程では、勤労者皆保険の実現に向けた取り組みとして、▽短時間労働者への被用者保険の適用拡大(企業要件の撤廃など)▽常時5人以上を使用する個人事業所の非適用業種の解消▽週所定労働時間20時間未満の労働者、常時5人未満を使用する個人事業所への被用者保険の適用拡大▽フリーランス・ギグワーカーの社会保険の適用のあり方の整理─を令和6年の次期年金制度改正に向けて検討・実施すべき項目に位置づけた。

健保全体で負担抑制へ
既存支援の拡充など明記

③は、▽医療保険制度▽医療提供体制▽介護─の3点を取り組むべき課題に位置づけた。
 医療保険制度は、今後も「全世代での支え合い」、「世代間・世代内における公平性の確保」、「保険者間の格差是正」といった基本的な考え方に沿って、給付のあり方、給付と負担のバランスを含めた不断の見直しを図るべきとの方向性を示した。

具体的な施策として、▽後期高齢者医療制度の保険料負担のあり方の見直し▽被用者保険者間の格差是正─を掲げた。

被用者保険者間の格差是正では、「健保組合全体として負担上昇が抑制されるよう、健保組合を対象として実施されている既存の支援を見直すとともに、さらなる支援を行う」と明記した。

医療提供体制は、「かかりつけ医機能が発揮される制度整備」の早急な実現に向けて、「かかりつけ医機能」の定義など、必要な措置を講ずるべきと提言。

「かかりつけ医機能」の活用については、患者が「かかりつけ医機能」を担う医療機関を選択できる「手挙げ方式」とし、医療機能情報提供制度を拡充することで、医療機関は「かかりつけ医機能」に関する情報を住民に分かりやすく提供するとともに、医療機関が有する「かかりつけ医機能」を都道府県に報告する制度を創設する。

医師により継続的な管理が必要と判断される患者に対し、医療機関が「かかりつけ医機能」として提供する医療の内容を書面交付などにより説明することも重視。今回の制度整備を国民1人ひとりのニーズを満たす「かかりつけ医機能」の実現に向けた第一歩と捉えた。

介護は、介護保険制度の持続可能性を確保する観点から、「骨太の方針2022」や社会保障審議会介護保険部会等で指摘された保険料負担や利用者負担のあり方などの課題について、来年度の「骨太の方針」に向けて検討を進めるべきと明記。2024年度からの次期計画に向けた給付と負担の見直しは今夏に先送りする方針を決めた。

今後の改革の工程では、▽後期高齢者医療制度の保険料負担のあり方の見直し▽被用者保険者間の格差是正▽かかりつけ医機能が発揮される制度整備─などを「足元の課題」に掲げた。

また、「来年、早急に検討を進めるべき項目」に、▽かかりつけ医機能の制度整備の実施に向けた具体化▽地域医療構想の実現に向けたさらなる取り組み▽診療報酬・薬価改定に向けた検討▽次期介護保険事業計画に向けた具体的な改革─などを列記。

このほか、▽医療保険および介護保険における負担能力に応じた負担と給付の内容の不断の見直し▽本格的な人口減少期に向けた地域医療構想の見直し、実効性の確保─などは、「2025年度までに取り組むべき項目」に据えた。

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