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健保ニュース 2022年12月中旬号

介護保険部会で給付と負担の議論
所得基準 高所得者負担 具体的な論点提示

社会保障審議会介護保険部会(菊池馨実部会長)は11月28日、令和6年度からの次期介護保険制度への改正に向け、「給付と負担」について3巡目の議論を行った。

この日の議論では、厚生労働省が前回と同じく、①被保険者範囲・受給権者範囲②補足給付に関する給付のあり方③多床室の室料負担④ケアマネジメントに関する給付のあり方⑤軽度者への生活援助サービス等に関する給付のあり方⑥「現役並み所得」「一定以上所得」の判断基準⑦高所得者の1号保険料の負担のあり方─の7点の検討事項ごとに現状と論点を提示。さらにこれまでの議論を整理した。

論点のうち、①、②では多様な意見があったことを示したうえで、「引き続き検討を行うことが適当」と明記。次回以降の改正へ先送りする事項に位置づけた。⑥は「一定以上所得」の対象拡大、⑦は高所得者への傾斜強化の方向性を示した。

2割負担の対象拡大
後期医療を参考に提起

⑥では、「現役並み所得」と「一定以上所得」の判断基準とともに第1号被保険者の所得分布を示した。3割負担となる「現役並み所得」の水準は、「合計所得金額220万円以上」かつ「年金収入+その他合計所得金額340万円以上(単身世帯)」。2割負担となる「一定以上所得」の水準は、「合計所得金額160万円以上」かつ「年金収入+その他合計所得金額280万円以上(単身世帯)」とされている。

後期高齢者医療制度においては、3割負担の「現役並み所得」の水準は、「課税所得が145万円以上」かつ「年金収入+その他合計所得金額383万円以上(単身世帯)」。2割負担の「一定以上所得」の水準は、「課税所得が28万円以上」かつ「年金収入+その他合計所得金額200万円以上(単身世帯)」。

論点では▽今年10月に施行された後期高齢者医療制度の「一定以上所得」の判断基準は所得上位30%とされているのに対し、介護保険の「一定以上所得」は令和2年4月現在で8.2%と開きがあること▽介護サービスは医療サービスに比べ長期間利用すること▽介護保険では2割負担が医療保険に先行して導入された経緯─などを踏まえ、検討することが提起された。

保険料設定の論点
高所得者への傾斜強化

⑦の論点では、具体的な施策案として▽国の定める標準段階の多段階化▽高所得者の標準乗率の引き上げ▽低所得者の標準乗率の引き下げ─がメニューにあがった。各保険者が負担能力に応じた保険料負担の配分を定める基準となるもので、負担の増額と減額は相殺される構造だが、高所得者の比重を高めることで、負担能力に応じた傾斜を強化し、制度の持続性を高める。

この日厚労省が示した調査結果によると、最上位の段階における乗率は、国が定める標準どおりの「1.7」が744保険者で最も多いが、全1571保険者のうち過半数が「1.7」を超える乗率を採用している。

健保連の河本滋史専務理事は、▽制度の安定性、持続可能性の確保▽現役世代の負担軽減─の観点から、早急な見直しを検討するよう求めた。そのうえで、②については、不動産も含めたより精緻で、効率的な資産把握の検討を要請。⑥については、「一定以上所得」だけでなく「現役並み所得」の両者の対象範囲を拡大するよう要請するとともに、公的年金控除などの年金税制の仕組みが負担能力の評価を歪めている面があることにも留意が必要と指摘した。

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