健保ニュース
健保ニュース 2022年12月中旬号
財政審が5年度予算編成等へ建議
医療提供体制改革を最重要課題
かかりつけ医 機能発揮へ法制化
財政制度等審議会(榊原定征会長)は11月29日、政府の今後の財政運営に向けた「令和5年度予算の編成等に関する建議」を取りまとめ、鈴木俊一財務相に提出した。社会保障は、「ウィズコロナへの移行と全世代型への制度改革」を副題に、改革の方向性を明示。効果的・効率的な医療提供体制の実現を改革の最重要課題に位置づけたうえで、「かかりつけ医機能」を有する医療機関の機能を明確化、法制化し、機能発揮を促す必要があると提言した。一方、かかりつけ医の機能強化に向けた診療報酬上の評価である「機能強化加算」の算定の実態を改めて問題視し、前回改定からの継続課題に据えた。
社会保障は全世代型に
ウィズコロナへ移行も
財政制度等審議会が11月29日に取りまとめた「令和5年度予算の編成等に関する建議」は、社会保障について、「ウィズコロナへの移行と全世代型への制度改革」を副題とした。
「全世代型」の社会保障は、「能力に応じて負担し、必要に応じて給付し、持続可能な制度を次世代に伝える枠組み」との観点から、「健保組合の保険料負担をはじめ、負担が負担能力の多寡に対応していない」と問題提起し、こうした改革に取り組むことが急務と主張。
ウィズコロナに移行するなか、改めて給付は高齢者中心、負担は現役世代中心というこれまでの社会保障の構造を見直し、全世代型で持続可能な制度を構築するための取り組みを加速すべき時であると訴えた。
新型コロナについては、医療提供体制のために主なもので17兆円程度の国費による支援が措置されてきたと振り返り、「これだけの規模の支出が目的に比して必要なのか、適切なのか、十分な検証が必要」と指摘。
4年度の発熱外来に関する診療報酬上の特例は0.3兆円程度と推計されるとし、「この措置に伴い、患者の窓口負担も多く負担させられていることも忘れてはならない」と明記した。
前期納付金に報酬調整
5年度薬価改定は完全実施
医療は、医療保険における喫緊の課題の1つとして、現役世代の負担上昇の抑制を図りつつ、負担能力に応じた負担を実現することと提起した。
現役世代1人当たり後期高齢者支援金を1人当たり後期高齢者保険料の伸びの水準まで抑える制度改正が早急に必要としたほか、被用者保険者間の格差是正に向け、前期高齢者納付金は報酬水準に応じた調整に移行すべきとの考えを示した。
医療費のあり方については、直近の診療報酬点数の集計をみると、医療機関は前年度と比べ堅調な伸び率を確保しているとして、「特例的な補助金や診療報酬を継続する理由の説明が困難な状況にあり、個々の項目ごとに早急に縮小、廃止を検討すべき」と強く訴えた。
令和4年度の診療報酬改定で導入した「リフィル処方箋」は、改定率換算で▲0.1%(医療費470億円程度)と見込んだ医療費効率化効果について早急な検証が必要と問題提起。積極的な取り組みを行う保険者を各種インセンティブ措置で評価していくべきとした。
薬剤費総額は経済成長を上回って増加傾向が続いているとし、5年度の毎年薬価改定は、物価高における国民負担を軽減する観点から、対象品目を広げ、完全実施を実現すべきと強調。
合わせて、「2年に1度しか適用されないルールがあるのは説明が困難である」と問題視し、新薬創出・適用外薬解消等促進加算の控除など、実勢価改定と連動しない算定ルールもすべて適用すべきと訴えた。
価格の高低を問わず全医薬品について一律に2%の水準が約20年間固定されている「調整幅」は、「可及的速やかに、廃止を含めて制度のあり方を見直し、少なくとも段階的縮小を実現すべき」との見解を示した。
このほか、▽OTC類似医薬品等の保険給付範囲からの除外▽医薬品を保険収載したまま、患者負担を含めた薬剤費等に応じた保険給付範囲の縮小─の早期導入に向け幅広く検討すべきとした。
かかりつけ医機能の強化
診療報酬上の評価を課題
患者の高齢化が進んで疾病を持つ者が増える一方、人口減少により医療資源となる人材が先細るなか、効果的・効率的な医療提供体制の実現を医療制度改革の最重要課題に位置づけ、地域医療構想を早急に実現する必要があるとの考えを示した。
地域医療構想を機能させるには、診療所等の外来の機能分化も不可避として、「かかりつけ医機能」を有する医療機関の機能を明確化、法制化し、機能発揮を促す必要があると提言した。
身近な地域で休日、夜間を問わず、一般的な健康問題をはじめとする日常的な相談に応じて、継続的、診療科横断的に患者を診るとともに、適切な他の医療機関を紹介する機能は国民に強いニーズ・関心があると指摘。
新型コロナを契機に必要な医療が必要な時に受けられる重要性が国民に認識されており、医療資源が限られるなか、地域における役割分担を機能させるためにも、「かかりつけ医機能を強化するための制度整備」は不可避と訴えた。
他方、かかりつけ医の機能強化に向け、平成26年度診療報酬改定で創設された「地域包括診療加算」、「地域包括診療料」のように、診療報酬上の評価が先行する一方、その後の改定で算定要件が緩和され、果たすべき政策目的と診療報酬上の評価がますますかけ離れることとなったと問題提起。
特に、30年度改定で創設された「機能強化加算」は、「本来は初診患者の中でもより継続的な管理が必要な疾患を有する患者への算定が期待されながらも、算定の実態がまったく異なっており、外来機能の分化につながっていないことが指摘されている」と改めて明記し、前回改定からの引き続く課題に据えた。
介護保険の利用者負担
後期に合わせ対象拡大
介護は、令和6年度からの第9期介護保険事業計画に向けて、給付の効率化、負担能力に応じた負担の観点から、制度改正を国民に見える形で前に進める必要があるとした。
利用者負担の見直しについては、制度間のバランス、負担能力に応じた負担の観点から、後期高齢者医療制度の2割負担に合わせて対象範囲を拡大する必要があると指摘。
さらに、介護保険サービスの利用者負担を原則2割とすることや現役世代との均衡の観点から、現役世代並み所得等の判断基準を見直すことについて、次期計画に向け早急に結論を得るべきと提言した。
このほか、こども・子育ては、「5年度予算で出産育児一時金の大幅な増額を図ることとしている」と明記し、安定的な財源の確保に向けて、国民各層の理解を得ながら、社会全体での費用負担のあり方を含め幅広く検討を進める必要があるとした。