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健保ニュース 2022年10月中旬号

全世代型社保会議が検討の方向性
出産一時金増額に全世代で支援
医療保険制度改革 厚労省の関係審議会で議論

政府の全世代型社会保障構築会議(清家篤座長)は9月28日、▽子ども・子育て支援の充実▽医療・介護制度の改革▽働き方に中立的な社会保障制度等の構築─の各チーム主査から検討状況を聴取した。このなかで、「医療・介護制度の改革」は、出産育児一時金の大幅な増額について後期高齢者を含む医療保険全体で支え合う仕組みをはじめ、高齢者医療制度への支援金のあり方や被用者保険者間の格差是正の方策などを検討する方向性を決めた。医療保険関係と介護分野については、厚生労働省の関係審議会で具体的な議論を早急に進め、年内に全世代型社会保障構築会議に報告することとした。

この日の会合では、9月7日の前回会合で新設した3つの検討チームの各主査から検討状況を聴取した。

このうち、「医療・介護制度の改革」の増田寛也主査は、2025年までにすべての団塊世代が後期高齢者となるなか、制度的な対応が急務と問題提起。

負担能力に応じて、すべての世代で増加する医療費を公平に支え合う仕組みを強化するとともに、社会経済の変化に対応した医療・介護の提供体制を構築するための改革を実現する必要があるとした。

「医療保険関係」では、▽出産育児一時金の大幅な増額を医療保険全体で支え合うこと▽後期高齢者の保険料賦課限度額や高齢者医療制度への支援金のあり方▽被用者保険者間の格差是正の方策▽医療費の伸びを適正化するため、給付の効率化を含めたより実効的な取り組み─について検討する。

「出産育児一時金」は、平成6年10月に創設され、支給額を30万円と設定。18年10月から35万円に引き上げた。

20年4月の後期高齢者医療制度の創設に伴い、全世代が負担する仕組みから75歳未満の者のみで負担する仕組みへと転換。21年1月から原則38万円、21年10月から原則42万円にそれぞれ引き上げ、現在の支給水準に至る。

令和元年度における出産育児一時金の支給件数・支給額をみると、▽健保組合(支給件数30万件、支給額1247億円)▽協会けんぽ(同39万件、同1630億円)▽共済組合(同12万件、同501億円)▽市町村国保(同9万件、同359億円)▽国保組合(同2万件、同91億円)─。

被用者保険は全額保険料、市町村国保は保険料(1/3)と地方交付税(2/3)、国保組合は保険料(3/4相当)と国庫補助(1/4相当)を財源構成とする。

平成24年以降、出生数は年間平均2.5%減少しているなか、出産費用は年間平均1%前後で増加し、令和2年度の室料差額、産科医療補償制度掛金、その他の費目を除いた平均出産費用は公的病院45.2万円、全施設46.7万円となっている。

厚生労働省の社会保障審議会医療保険部会では、岸田文雄首相の発言を踏まえた出産育児一時金の大幅な増額に対し、それを後期高齢者も含む医療保険全体で支え合う仕組みについて検討する。

「後期高齢者の保険料賦課限度額」は、平成20年度の50万円から令和4年度の66万円へ16万円上昇する一方、国保の85万円とは19万円の差が生じている。負担能力に応じた保険料負担のあり方について引き上げも含め総合的な検討を進めていく。

「高齢者医療制度の支援金のあり方」については、「後期高齢者1人当たり保険料」と「現役世代1人当たり支援金」の負担額の差に着目した。

「後期高齢者1人当たり保険料」は平成20年度の5332円から令和4年度(見込)の6472円と21%上昇。一方、「現役世代1人当たり支援金」は平成20年度の2980円から令和4年度の5456円と68%上昇し、伸び率は後期高齢者の3倍を超えている。

後期高齢者の増加と現役世代の減少に伴う人口割合の変化が最大の要因で、現役世代の負担上昇の抑制を図るための対応を検討する。

「被用者保険者間の格差是正の方策」は、協会けんぽの財政について、▽医療費が賃金の伸び率を上回って伸びている▽報酬水準が低く、健保組合と1.4倍の格差がある─と問題提起した。

一方、健保組合の平均保険料率は、平成22年度の7.7%から令和2年度の9.2%と全体的に上昇し、協会けんぽの平均保険料率以上の健保組合は平成22年度の69組合(全体の5%)から令和2年度の308組合(全体の22%)に増加している状況のほか、5.0%未満~11.0%以上の保険料率を設定している分布を明示。

義務的経費に占める高齢者医療への拠出負担割合は、協会けんぽが37.4%(4年度概算賦課ベース)、健保組合は47.6%(同)となっている現状も示した。

そのうえで、保険者間で高齢者が偏在することによる負担の不均衡を是正するため、国保・被用者保険の各保険者が前期高齢者加入率に応じて費用を負担するよう調整を行っている前期高齢者にかかる財政調整の仕組みについて説明。医療保険部会で、現行の前期高齢者納付金の負担のあり方について検討を進める。

他方、「医療提供体制関係」は、▽かかりつけ医機能のあり方と、その機能が発揮される制度整備のあり方▽都道府県の責務明確化等による地域医療構想の推進─など。このほか、データヘルス、オンライン診療、AI・ロボット・ICTの活用など、医療分野におけるデジタルトランスフォーメーションの確実な推進について検討。

また、「介護分野」は、利用者負担、多床室の室料負担、ケアマネジメントに関する給付、軽度者への生活援助サービス、高所得者の保険料負担など、高齢者の負担能力に応じた負担、公平性等を踏まえた給付内容のあり方について検討することとした。

介護保険制度の利用者負担割合については、平成27年8月に一定以上の所得を有する利用者の負担割合を2割、30年8月に特に所得の高い利用者の負担割合を3割に引き上げており、さらなる見直しについて社会保障審議会介護保険部会で議論を早急に進める。

このほか、「子ども・子育て支援の充実」は、清家主査が妊娠・出産・育児を通じた切れ目ない包括的支援が提供される体制や制度の構築に向けて、各ステージで優先的に強化すべき課題を明らかにし、具体策の検討を進めていく考えを示した。

また、「働き方に中立的な社会保障制度等の構築」の権丈善一主査は、被用者保険の適用拡大やフリーランスが安心して働ける環境整備などを進めていく必要があるとした。

なお、「医療・介護制度の改革」検討チームは、増田主査のほか、落合陽一構成員、香取照幸構成員、菊池馨実構成員、権丈善一構成員、國土典宏構成員、高久玲音構成員、武田洋子構成員、田辺国昭構成員をメンバーとする。

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