健保ニュース
健保ニュース 2022年10月中旬号
健保連・第519回理事会
全世代型社会保障に転換へ前進
宮永会長 全国大会で決意と改革を訴求
健保連の宮永俊一会長は9月28日の第519回理事会の冒頭にあいさつし、団塊の世代が後期高齢者となる2025年度にかけて、健保組合の拠出金負担が急増する「急激な上り坂」が待ち構えていると指摘し、「全世代型社会保障制度への転換をさらに前進させる必要がある」と強調した。他方、診療報酬と介護報酬の同時改定や、多くの計画が更新となる2024年度を「焦点の年」と位置づけ、それらへ向け今年後半が正念場となる「秋の陣」が始まると言及。全世代型社会保障改革の実現、「かかりつけ医」などの医療提供体制改革の課題とスケジュールを踏まえ、10月の全国大会を健保組合、健保連の決意と改革を訴える重要な機会と捉えた。さらに、健康保険法制定から100年を迎え、健保組合が国民の安心を支える基盤として「なくてはならない存在」となるよう努めていく決意を表明した。(宮永会長の発言要旨は次のとおり。)
まず、先週の台風の影響により、九州を中心に被害が拡大した。被害に遭われた方々に、心よりお見舞い申し上げる。
また先日、参議院選挙中に凶弾に倒れた安倍晋三元総理大臣の国葬儀が日本武道館で執り行われた。国内外から多くの要人が参列され、安倍元総理の功績と人柄が偲ばれる国葬儀だった。
日本国民と国益を守るという強い信念のもと、トップリーダーとしてわが国をけん引し、特に社会保障に関しては、2度にわたる消費税率引き上げと社会保障目的税化を成し遂げ、全世代型社会保障への転換を提唱するなど、今後の制度改革と制度の安定化への道筋をつけた。亡くなられたことは誠に残念だ。あらためて、ご冥福をお祈りする。
さて、世界中の社会経済に大きな影響を与えた新型コロナウイルス感染症は、先進国ではほぼ定常化に向かいつつあると感じている。
日本でも、感染者数はピーク時から減少傾向にあり、入国制限の緩和、イベントや会食にかかる規制撤廃など、政府方針も徐々に「ウイズコロナ」への移行が進んでいる。
今後は、コロナ禍で傷ついたわが国の社会経済を盛り返し、再び成長軌道に乗せていくことが求められる。
また、このパンデミックで得られた教訓を、次の有事に活かせるよう、官民の英知を集めていく必要がある。
社会保障分野では、2020年度の社会保障給付費が過去最高の132.2兆円を計上したことが公表された。前年度比6.7%増となり、はじめて130兆円を超えた。政府のコロナウイルス感染症対策費の増加がひとつの要因ではあるが、その財源を赤字国債に頼っていること、社会保障財源が現役世代の保険料に偏っていることは大変憂慮すべき問題だ。
一方、今年の出生数は、はじめて「80万人割れ」と予測されており、「支える側」である現役世代の減少はさらに加速化することが確実だ。
超少子高齢化社会は否応なく迫り、日本全体の大きな課題である。
私たち健保組合にとっても、団塊の世代が後期高齢者となる2025年度にかけて、拠出金負担が急増する「急激な上り坂」が待ち構えている。
今年10月からは、一定所得以上の後期高齢者の窓口負担2割が実施されるが、現役世代の負担軽減には十分とは言えない。
さらに、「短時間労働者のさらなる適用拡大」も10月から実施される。良い面もある一方、特定の業種・業態の健保組合にとっては負担増となることも考慮しなければならない。
こうした一連の改革は、制度改善を一歩ずつ進めてきた関係者の努力の結果ではあるが、「給付は高齢者中心、負担は現役世代中心」という、これまでの構造を見直し、負担能力に応じて皆が支え合う「全世代型の社会保障制度」への転換に向けて、さらに前に進める必要がある。
2024年度は、6年に一度の診療報酬と介護報酬の同時改定の年だ。また、医療計画や医療費適正化計画、介護保険計画など、医療・介護にかかる多くの国の計画が更新となる、「焦点の年」である。特に法改正が必要な項目は、今年中の成案化、来年の通常国会での審議・成立という流れを想定すれば、今年の後半が正念場となる。まさにこれから「秋の陣」が始まるといえる。
われわれが提唱する持続可能な医療保険制度に向けた全世代型社会保障改革の実現、そして「かかりつけ医」などの医療提供体制改革、来年度政府予算における必要な財政支援確保などの課題とスケジュールを踏まえると、10月の全国大会は、われわれの決意と改革を訴える重要な機会だ。
折りしも、今年は健康保険法制定から100年の節目の年だ。この間、健保組合は、労使との協力のもと、加入者の健康づくりや疾病予防対策を進め、皆保険制度を守りつつ、世界一の長寿社会の実現に寄与してきた。
人生100年時代と言われるなかで、これからも加入者の健康と安心を支えていくことが私たちの使命でもある。
健保組合が国民の安心を支える基盤として「なくてはならない存在である」と思っていただけるよう、私たちも努力していかなければならない。こうした決意を全国大会でも共有し、内外に伝えていきたい。
理事各位のさらなる支援・協力をお願いする。