健保ニュース
健保ニュース 2022年10月上旬号
令和4年版厚生労働白書
医療・福祉人材確保 社会保障の最重要課題
2040年就業者96万人不足
厚生労働省は9月16日の閣議に、「令和4年版厚生労働白書」を報告した。
将来の医療・福祉就業者不足を補うため、「人材確保を社会保障における最重要課題のひとつ」と位置づけ、「社会保障を支える人材の確保」をテーマに選定。医療・福祉サービスの提供のあり方、人材確保に関する今後の方向性を明示した。
医療・福祉就業者数は、2018年実績で826万人(総就業者数に占める割合は12%)。厚労省の推計では、2040年には1070万人(同18~20%)が必要とされるのに対し、確保できる就業者数は974万人(同16%)とされ、96万人不足すると見込まれている。
これには、2025年から2040年にかけて高齢者数がピークを迎え緩やかに減少する反面、現役世代が急減する日本の人口構造が背景にある。
白書は、処遇改善をはじめとした「人材確保」と労働環境の改善に直結する「医療・福祉サービス改革」の推進によって、人口減少下においても持続可能な制度体制を実現することを提言した。
国は、これまでも人材確保にかかる施策を講じてきた。
医師数は、2008年以降、医学部臨時定員を毎年増員することで、28.5万人(2008年12月)から33.8万人(2020年12月)に増加。2029年頃に需給が均衡する推計だが、依然として地域別・診療科別の偏在が課題とされる。
看護師数は、新規養成・離職防止・復職支援策などにより、80.2万人(1989年12月)から168.3万人(2019年12月)に増加。近年は、在宅医療ニーズから訪問看護の需要が高まっている。
歯科医師数の伸びは鈍化傾向にある一方で、人口10万人に対する歯科医師数は増加傾向にあり、無歯科医地区点在が課題とされる。
薬剤師数は、薬学部定員の増員により増加傾向だが、地域や業態間に偏在がある。
また、介護職種の離職率は、2019年に初めて産業計を下回り、低下傾向にある。累次の処遇改善の取り組みにより、介護職員月額7.5万円、保育士月額4.4万円の処遇改善を実施したものの、介護・保育の有効求人倍率は、依然として職業計よりも高く推移している。
こうした課題を踏まえ、白書は、安定的な医療・福祉サービスの提供のためには、▽処遇改善▽多様な人材の参入促進─による人材確保と、▽医療・福祉サービス改革─によるイノベーションの導入が不可欠と指摘。
とくに、「医療・福祉サービス改革」を重視し、イノベーションによるケアの質の確保や職員の負担軽減、労働環境の改善をめざすとした。
医療分野では、効率的な医療提供体制として「チーム医療」の実践を推奨。医師が行う業務のうち、他の職種に移管可能な業務についてタスクシフト・タスクシェアを早急に進めていく必要があるとした。
介護福祉分野では、業務分担の明確化、ロボット・AI・ICTの活用による業務効率化を提唱。労働時間の有効活用により職員自身のやりがいの向上、人材の定着が期待されるとした。
また、薬局薬剤師が病院薬剤師や看護師と連携し、残薬解消や服薬支援などを念頭に在宅療養を支援する実践例を紹介。地域ニーズに応じた重点的な人材確保の有効性も強調した。