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健保ニュース 2022年9月中旬号

医薬品の流通・薬価検討会が初会合
6年度薬価改定へ今年度内に提言まとめ
毎年改定見据えた提言も検討

厚生労働省の「医薬品の迅速かつ安定的な供給のための流通・薬価制度に関する有識者検討会」(座長・遠藤久夫学習院大学経済学部教授)は8月31日、初会合を開き、医薬品業界の現状と課題をテーマに議論した。

同会は、医療水準の維持・向上のために必要な「革新的な医薬品や医療ニーズの高い医薬品の日本への早期上市」、「医薬品の安定供給」といった観点から、▽医療用医薬品の流通・薬価に関する現状の課題▽現状の課題を踏まえた医療用医薬品のめざすべき流通や薬価制度のあり方─などを検討する。

厚労省は、令和6年度の薬価改定を視野に入れ、流通・薬価制度の課題と改善策を議論し、今年度内を目途に提言を取りまとめるスケジュールとした。

さらに、必要に応じて、5年度の毎年薬価改定も見据えた提言を別途、前倒しして行う対応も検討する意向を示した。

会合の冒頭あいさつした伊佐進一厚労副大臣は、「薬価と流通について、本当に危機感を抱いている」との認識を示し、「特許期間が切れていないのに、薬価が下がっていくのはG7のなかで日本だけだと思っている」と言及。

そのうえで、「様々な課題がある状況のなか、日本の市場の魅力をもう一度取り戻していくことも大事な観点だ」と強調し、「それがひいては、国民1人ひとりに質の高い医薬品を届けていくことにつながる」との考えを示した。

座長に選出された遠藤構成員は、「中医協や流改懇のメインテーマであるドラッグラグの解消やイノベーションの促進、医薬品の安定供給について本会で改めて議論することは、より自由で多面的で包括的な視点が求められる」と指摘。

また、「一旦立ち止まって、制度全体を鳥瞰して問題があれば大きな見直しを行うという本会の意義は大きい」と述べる一方、「それだけに、実現可能性のある有意義な提言を行うのは大変難しいミッションでもある」との見方を示した。

この日の会合では、厚労省が医薬品業界の概況を説明した後、各構成員が医薬品における流通・薬価制度の課題などについて意見表明した。

厚労省は、2020年における医療用世界売上上位300品目の日米欧上市順位をみると、3番目に日本国内に上市される医薬品の割合が65%を占めるほか、2016年から2020年にかけて、国内未承認薬は117品目から176品目、国内未承認薬の割合は56%から72%に増加していると説明。

また、薬価制度の見直しに伴う日本への投資優先度や市場規模予測確実性の変化など、日本市場の魅力低下を示唆する声も紹介した。

各構成員の意見表明のうち、菅原琢磨構成員(法政大学経済学部教授)は、イノベーションを評価する薬価制度改革の必要性とその方向性を提起。薬価収載について、新薬のイノベーションの価値を適切に反映する薬価算定方式の導入を主張した。

現行の原価計算方式に代わる新方式として導入し、欧州に比肩できる水準での新薬の薬価算定を通じて日本での開発投資を促進。薬剤費高騰への懸念に対しては、マクロ的アプローチを併用し持続可能性を担保する。

他方、薬価改定については、イノベーティブ新薬への抑制政策を緩和するため、「効能変化再算定」と「用法用量変化再算定」以外の市場拡大再算定を見直す必要があるとした。

遠藤構成員は、薬価基準制度は複雑化と改定速度が速いことから、企業の市場の予見可能性を低下させ、イノベーションにとってネガティブに働きかねないと問題提起。

また、新規収載医薬品の加算状況から、薬価基準制度のイノベーション評価は現状では外資企業の方が日本企業より多くの便益を与えていると指摘し、ベンチャー育成や産学共同、税制など公的医療保険制度以外の制度で日本企業のイノベーション促進のための政策を強化することが極めて重要と訴えた。

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