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健保ニュース 2022年9月中旬号

令和2年度社会保障費用統計
前年度比6.7%増 給付費132兆円で過去最高
受診控えもコロナ対策費で大幅増

国立社会保障・人口問題研究所(田辺国昭所長)は8月30日、令和2年度社会保障費用統計を公表した。医療、年金、介護などの公的制度から個人へ支給した現金・現物の年間総額に相当する「社会保障給付費」は前年度比6.7%増の132兆2211億円、これに施設整備費など個人が直接受け取らない費用を加えた「社会支出」は同6.6%増の136兆3600億円で、いずれも過去最高を更新。新型コロナウイルス感染症対策の雇用調整助成金や緊急包括支援交付金などを各統計の国際基準に沿って計上したもので、2年度は受診控えといったマイナス材料を織り込んでも大幅増となった。

「社会保障費用統計」は、日本の社会保障全体の規模や政策分野ごとの構成を明らかにすることを目的に、医療保険や年金、介護保険などに関する1年間の支出について、OECD(経済協力開発機構)基準による「社会支出」とILO(国際労働機関)基準による「社会保障給付費」を集計している。

令和2年度の「社会支出」は前年度比6.6%(8兆4817億円)増の136兆3600億円、「社会保障給付費」は同6.7%(8兆2967億円)増の132兆2211億円で、いずれも初めて130兆円を超えて過去最高を更新した。

国民1人当たり平均額は、「社会支出」が同6.7%(6万7400円)増の108万1000円、「社会保障給付費」は同6.7%(6万5900円)増の104万8200円にそれぞれ増加。「社会保障給付費」は今回、初めて100万円を超えた。「社会支出」が100万円を超えるのは、2年連続の2度目となる。

対GDP(国内総生産)比は「社会支出」が同2.52ポイント増の25.46%、「社会保障給付費」が同2.45ポイント増の24.69%と、いずれも増加。

「社会支出」の対GDP比を令和元年度時点で国際比較すると、日本(22.95%)はイギリス(20.51%(平成30年度))より大きいが、フランス(31.51%)、ドイツ(27.63%)、スウェーデン(25.47%)、アメリカ(24.13%(平成30年度))に比べると小さい。このうち、「高齢」はフランス(12.35%)、スウェーデン(9.09%)、日本・ドイツ(8.68%)、アメリカ(6.45%同)、イギリス(6.38%同)の順だった。

新型コロナ感染症対策
7兆円超が全体押し上げ

2年度は、国が新型コロナウイルス感染症に対し重点的に施策・事業を講じた。投入された7兆円を超える国庫負担は、「社会支出」、「社会保障給付費」を押し上げた。

主な施策・事業ごとにみると、「雇用調整助成金」(2兆9798億円)が最も高額で、それぞれの統計の基準に基づき「社会支出」では「積極的労働市場政策」、「社会保障給付費」では「福祉その他」に計上されている。次いで医療・介護関係の費用が高額で、▽「新型コロナウイルス感染症緊急包括支援交付金(医療分)」(2兆4677億円)が同「保健」、同「医療」▽「新型コロナウイルス感染症緊急包括支援交付金(介護分)」(4153億円)が同「保健」、同「福祉その他(介護対策)」▽医療機関への医療用物資の確保・配布事業(3570億円)が同「保健」、同「医療」─にそれぞれ計上された。

社会支出の4割
医療、介護等の「保健」

「社会支出」を政策分野別にみると、医療保険、公費負担医療、介護保険などの「保健」が最大の55兆9026億円で全体の41.0%を占めた。次いで老齢年金などの「高齢」が48兆7975億円(全体の35.8%)、児童(扶養)手当、育児・介護休業給付などの「家族」が10兆7536億円(同7.9%)の順。これらの3分野で全体の9割近くを占めている。

3分野の支出額は前年度に比べ、それぞれ5.4%、0.8%、11.2%の増加で、特に「保健」、「家族」の伸び率が高い。ほかに伸び率が高かった「積極的労働市場政策」(前年度比384.7%増)と「保健」は、高額な新型コロナウイルス対策費用を計上。「家族」は幼児教育・保育の無償化の満年度化に伴い「教育・保育給付交付金」が増額されており、いずれも国庫負担による支出が増加要因となっている。

社会保障給付費の「医療」
5年ぶりに伸び率4%超

「社会保障給付費」を部門別にみると、「医療」が42兆7193億円、「福祉その他」が33兆8682億円、「年金」が55兆6336億円だった。

「医療」は前年度比4.9%(1兆9951億円)増加した。伸び率が4%を超えたのは5年ぶり。

2年度に実施された診療報酬改定は全体でマイナス0.46%(本体プラス0.55%、薬価マイナス0.99%、材料価格マイナス0.02%)だったが、厚生労働省は、新型コロナウイルス感染症が医療費に影響を与えており、改定の影響は不明確だとした。

介護を含む「福祉その他」は、前年度比22.1%(6兆1201億円)増加した。雇用調整助成金をはじめ介護、子ども・子育てなどの幅広い分野にわたる新型コロナウイルス感染症の対策費用が計上され、大幅増の要因となった。

「年金」は、前年度比0.3%(1815億円)増加した。2年度は年金額が0.2%のプラス改定で、それと近似値の伸び率だった。

社会保障財源は4割増
報酬減、猶予で保険料減収

社会保障財源は、ILO基準のみ計上されている。その総額は、184兆8160億円で、前年度比39.6%(52兆4629億円)増加した。

内訳は、▽「社会保険料」が73兆5410億円で前年度比0.6%(4672億円)減少▽「公費負担」が58兆9527億円で同13.6%(7兆590億円)増▽「資産収入」が43兆9400億円で同2658.4%(42兆3471億円)増─などとなっている。

「社会保険料」は、全体の39.8%を占め最大の財源となっているが、2年度は「資産収入」が急増したため、6年ぶりに5割を下回った。「社会保険料」のうち「被保険者拠出」は38兆7032億円、「事業主拠出」は34兆8378億円で、全体に占める割合はそれぞれ20.9%、18.9%となり、「被保険者拠出」が2ポイント上回った。

「社会保険料」の前年度比がマイナスとなったのは、リーマンショックの影響があった平成21年度まで遡る。国立社会保障・人口問題研究所は、1人当たり標準報酬の減少や、新型コロナウイルス感染症対策として実施された納付猶予が原因と分析した。

「公費負担」は構成比が31.9%で、「社会保険料」に次ぐ財源。その内訳は「国庫負担」22.2%、「他の公費負担」9.7%で、国庫負担が7割を占める。前年度比の伸び率は、「国庫負担」19.2%、「他の公費負担」2.5%。「他の公費負担」の伸び率は例年から大きな変動がなく、国庫負担の増加が著しい。

「資産収入」は、前年度の約27倍にまで膨らんだが、年金積立金の運用実績が伸びたことが要因となった。

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